リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

90年代の作品(13)

2021年10月29日 11時27分24秒 | 音楽系
90年代の作品シリーズ、13回目の今回は1992年作曲のABC Chants です。この曲は平成4年度版のS堂の英語教科書のために作った歌の一つです。

平成4年度版のS堂教科書は、編集主幹のM先生が「教科書の音楽化」を提唱されていて、そのM先生のご推薦で私が音楽を制作することにしました。このシリーズで以前紹介した、曜日と月の名前の歌もその一環です。まだあと何曲かありますので追ってご紹介致しますが、制作にあたって次のことに留意しました。

1.必ず前奏と後奏を前後につける
2.音域は出来るだけ狭く、音の跳躍もあまり大きくない歌いやすくシンプルなメロディ
3.学年によってキー設定を考慮する
4.リズミックで明るい曲想

専任の音楽の先生が扱うのではありませんから、歌うことそのものに指導がいるようではいけません。英語の先生が指導して授業の中で2,3分だけ使う曲です。前奏や伴奏は複雑な動きをしていてもメロディはシンプルに、そして親しみやすくクオリティは高く、を目指しました。

本曲、ABC Chants の歌詞は、A for apple pie, B for bubble gum, C for ceiling light...とアルファベット順にZまで続きます。(全部は著作権の関係で出せませんが)この長い歌詞をABAの構成を持った楽曲にぴったり収めるのは結構工夫が必要です。音符が足りなくても余ってもいけません。実はこの歌詞の音節を数えると歌詞を1回だけ歌うことにすると、4小節・8小節を単位とする構成の楽曲ではメロディが余ってしまうのです。どうしたものかと思案した結果思いついたのは歌詞を2回繰り返しつつ楽節を調整することでした。こうすることでぴったりはまりましたし、授業で扱う際2回繰り返した方が指導の効果があがるでしょうから、一挙両得です。

歌入りの版は副教材としてCDが市販されていました。(現在は廃版)レコーディングはロサンゼルスで行われました。ぜひ立ち会わせてほしいとお願いしたのですが、予算の関係でできませんでした。

この版の教科書が使用されて10年近く過ぎた頃、次版の編集会議がありました。その席上で大阪の先生から、この曲が生徒の間で人気だと伺いました。何でも校内の合唱コンコンクールでこの曲を歌ったクラスがあったそうな。そういや4,5年前でしたかヤフー知恵袋で、この曲についての問い合わせを偶然見つけたこともありました。すでに回答期限が過ぎていましたので書き込みはできませんでしたが。S堂の教科書採択部数は当時80万部くらいでしたから、隠れたヒット曲ですね。このように多くの生徒に歌われている(まぁ授業ですから半ば強制的ではありますが)のは作曲者としてとても嬉しいことです。

ABC Chants