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リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

みんなのバッハ(1)

2023年07月06日 21時36分52秒 | 音楽系
またまたチェロ筋から頼まれてアレンジをしました。今回は三重奏でということです。

まずカンタータ第140番から有名なコラール「シオンは物見らの歌うを聞けり」です。この曲は三声でできていますのでぴったりです。以前この曲をヴァイオリン、チェロ、リュートで演奏したことがありましたので、その楽譜をベースに作ってみました。このカンタータはいわゆりコラールカンタータで、当時の皆さんが知っている有名なコラールを「軸」に作られています。コラールはとても素朴なメロディで恐らく誰でも演奏できることを主眼に置いたのではないかと思います。それに対してオブリガートの旋律は結構複雑な動きをして、バスと相まって味わい深いハーモニーを形成します。

シオンは物見らの歌うの聞けり for Cello Trio

実際に三重奏にアレンジしてみてひとつのことに気がつきました。この三重奏は上級、中級、初級の全員で曲を作り上げることができるのです。1stパートはオブリガートです。チェロとしてはかなり高いポジションを使うので上級向き。2ndパートはコラールの旋律。こちらはまだチェロを始めて間もない人でも演奏可能です。3rdはバスで中級くらいの子ならなんなく演奏できるはずです。

楽器を始めて間もない子が直接バッハの演奏に参加できるのはとても素晴らしいことです。バッハと言えば目の前にそびえ立つ巨峰だと思っている人も多いかと思いますが、実際には彼は教育用の作品もいくつか残していますし、コラールカンタータのようによく知られているコラールを軸にして複雑な音楽を構成して技量の高い人も低い人も参加したり聴きやすくしたりする道を用意しています。

バッハにはヒマラヤの山々みたいな難攻不落の山もありますが、彼はちゃんと「バッハ低山」も用意してくれているということです。難関登山で遭難するより低山を味わった方が人生豊かになるというものです。