リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

霧の会議

2020年12月01日 14時15分23秒 | 日々のこと
学生の頃は名古屋に向かう電車内でよく本を読みました。読む本は小説か言語学関連の本です。言語学といってもガチガチの専門書ではなく、一般教養的な本でしたが。

小説は圧倒的に松本清張が多かったです。当時文庫で出ていた作品の大半は読みました。たしか読んでいなかったのは時代物の「かげろう絵図」だけだったかな。でも77年発表の「渦」を最後にぱったり読むのを止めました。もう読みつくしたという感じがして飽きてしまったからでしょうか、そこはよく覚えていませんが。そうそうノンフィクションものには興味がなかったので全く読みませんでした。

少し前に「ゼロの焦点」を読み返してみましたが、内容的に古い時代のものという感じが強く残りました。女性のことば遣いとか町の描写なんかが特にそう感じましたが、昔読んだときとは印象が異なり、それはそれで興味深かったです。

ある時本屋さんで「霧の会議」という清張作品をふと見つけ手に取ってみると、比較的晩年の作でヨーロッパが舞台になっているとあったので買って読んでみました。1987年刊行の作品で、1992年に氏は没していますので最晩年の作品です。舞台となっている国はイギリス、イタリア、フランス、スイスで、ストーリーの展開も面白かったですが、それに絡む歴史的な内容、街の詳細な描写が作品に厚みを与えていました。

同作品は私が氏の作品を読まなくなった10年後に刊行された作品ですが、調べてみましたら「その後」も沢山作品を書いていました。うかつにも知りませんでした。「霧の会議」は「ゼロの焦点」のような古さは全く感じませんでした。バブルに至る日本の状況も作品に反映されていてとても興味深かったですが、今の若い世代の人が読むとそれでも古い時代の話だという感じはするのでしょうね。まだ氏の晩年の作品でいい作品がありそうなので、また読んでみようかと思います。