そよ風つうしん

小さな自然の発見をご紹介してきましたが、転居で環境が激変。内容を一部変更し日々の雑感を綴ったりもしています

花の季節、心に浮かぶ一枚の絵

2019年04月14日 | どんぐり屋のつぶやき
寒さのお陰で長く楽しませてもらえた今年の桜ですが、さすがに朝からの雨に打たれて元気が無くなってしましました。

それでもまだ花を残しているサクラ・・・

昔、在原業平は詠みましたね。
>月やあらぬ春は昔の春ならぬ 我が身一つは元の身にして

これは、昔の恋人を想って詠まれた歌だと学校で習い、そのときはモテモテだった業平さんらしい歌だと感じました。
でもいま、自分自身老いの年代に入っての感想は、少しちがってきました。

我が身もまた、決して「元の身」ではないということに気がついたのです。

昔、愛しく想い合った人も年老いて、若い頃とはちがう姿や心になりました。
そして私とて同じこと。
在原業平も私たちのような歳になれば、またちがった歌を詠んだことでしょう。

以前このブログにも書いたことがあるのですが
漢詩人の杜甫が、玄宗皇帝や楊貴妃や詩人の李白等と共に過していた雅やかな世から、突然起きた安禄山の戦いに巻き込まれて流浪の旅をしているときのこと。

ある街で、ふと聞き覚えのある歌声を耳にします。
近くへ寄って見れば、共に同じ時代を過した、李亀年という歌手でした。
街角で歌を歌い、客からお金をもらう暮らしをしているようです。

唄い終えたのを見て、そばへ寄って名乗り、近くの店に入ってひととき語り合いました。
折しも、花吹雪となって散り落ちた花が、行き交う人々に無残に踏まれています。

お互いの変わり果てた姿を嘆く二人。

橋本関雪が描いた「失意」という絵です。

まさに、我が身も元の身ではなく、わびしさに耐えるしかない旧友との語らい。
この絵はあまり展覧会には出ないようで、私もたった一度見たきりです。
このときは、画面からあふれ出ている悲しい雰囲気に胸をうたれました。

この後どれくらい経ってからなのでしょうか、杜甫は旅を続ける船の中で、持病が悪くなって亡くなりました。
李亀年はどうなったのでしょう・・・

いまもなを、漢詩の愛好家に愛されている杜甫ですが、都で高い位に着いて世の中を変えたいという夢は果たせず、ご本人は時代の変化も相まって、寂しい思いのままに旅立たれたのでしょうか・・・

花を見、業平の歌を思い出す度に心に浮かぶ一枚の絵です。




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コメント (6)    この記事についてブログを書く
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6 コメント

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コメントに (小坊主)
2019-04-15 12:31:14
辿り着く前に、行き倒れになるかと思いました。。。

詩歌管弦もまた、需要があっての商売ですから、世の激変で失業するのもまた、止むを得ないことなのでしょう。

年年歳歳我同じからず。
一朝にして世同じからず。
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小坊主さんへ (森のどんぐり屋より)
2019-04-15 14:09:46
そうでしょう・・・申し訳ありません。
なぜか、もうだいぶん前からこのブログ、何かと不調なのです。
パソコン自体もおかしいので、ウイルスチェックしていらないものを削除したり色々しているのですが、いっこうに良くなりません。
春のせいでしょうか?
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そういうことでしたか; (あおぞら)
2019-04-16 11:17:15
確かにコメント欄まで長~い空白があり;これってこの絵で言われているお二人の心境を表したもの?と考えてみたり;。

けれど原因はそこでしたか、なるほどですね;。

ま、それはさておき。

この絵画、出来るなら本物をじっくりと目の前で飽くことなく眺めていたい思いです。

確かに人生の悲哀を感じられるのでしょうけれど、それをこの画面に凝縮して描かれているのは素晴らしいと感じます。

絵の中のストーリーを考えるのが好きなだけ、とも言えそうですが。(笑)
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あおぞらさんへ (森のどんぐり屋より)
2019-04-16 14:33:44
コメント欄までの長~い旅路を、はるばるたどって下さってありがとうございます。

この絵の実物はほんとうに感動しました。
二人の人物のため息が伝わってくるような心地さえして。
これを描かれた頃は、関雪ご自身もなにか\辛いことがおありになったようです。
それでなおいっそう、哀しみのにじむ絵となっているのでしょうか・・・
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失礼しました。 (マナティ)
2019-04-17 16:36:16
コメント欄見つけました。ごめんなさい。
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マナティさんへ (森のどんぐり屋より)
2019-04-18 18:37:33
パソコン不調で、コメント欄へたどり着くのが大変でしたでしょう?  ごめんなさい
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