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飛び込み営業研修

飛び込み営業というのは、最もつらい営業の一つではないだろうか。楽天では、飛び込み営業の研修を新人に課しているらしい。創業時の起業家精神を伝承することが狙いである。

しかし、この研修、そんなに無茶なことをしているわけではない。新人にとって、程よい緊張感の中で学ぶことができる、よく考えられた教育方法だと思った。その理由は3つある。

第1に、短期間である。場所は楽天ゴールデンイーグルスの本拠地である仙台。期間は3日間。商店街の店主らにイーグルスのチケットを売ったり、ファンクラブ入会の勧誘をする。

第2に、7-8人のチームを作り、チーム毎に成果を競う形式となっている。担当地域の特性を調べて戦略を練ったり、役割分担を考えながらチームワークを学ぶ。これが一人だと少しつらいかもしれない。

第3に、苦しいが楽しい内容である。ノルマを達成しなければならないプレッシャーや、顧客から断られることも嫌だが、どこかゲーム感覚があるし、「創業の精神を学ぶ」という趣旨も納得のいくものである。

こうした「たのくるしい」研修で、ベンチャー精神や、飛び込み営業のエッセンスを学んだ新人は、これから訪れる本格的な修行に対する心の準備が整うのではないか、と思った。

出所:日経産業新聞2008.4.30
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腹を立てるな

『腹を立てるな。それはただ悪への道だ。』
(詩篇37章8節)

聖書には「腹を立てるな」という類の言葉が多い。エペソ人への手紙の4章26-27節にも「日が暮れるまで憤ったままでいてはいけません。悪魔に機会を与えないようにしなさい」とある。

自分を振り返ってみても、腹を立てて良い結果になったことはない。職場でも家庭でも、人間関係がこじれるだけで、どんんどん悪い方向へ行ってしまう。生きていく上で、また成長する上で、自分の感情をマネジメントすることの大切さがわかる言葉である。
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「知識の探索」から「知識の応用」へ

企業のナレッジマネジメントについての興味深い調査結果が、米国バブソン・カレッジのワーキング・ナレッジ・センターによって報告されている。

4つの組織における200人以上のナレッジ・ワーカーに10日間業務日報をつけてもらい、どのくらい知識の探索や応用に時間を費やしているかを調査した。彼らがどのような活動に自分の時間を使っているかを調べるためである。結果は、以下のとおり。

1位 知りえた知識を応用する(45.9%)
2位 知識の持ち主から知識を引き出す(37.7%)
3位 知識の所在を探す(10.2%)
4位 知識の持ち主とのミーティングを手配する(6.2%)

当初、調査者は「知識の持ち主を探したり、そこに出向いて教えもらうのに費やす時間がもっとも多いだろう」と予想していたが、そうした活動に使われるのは、たったの17%であった。つまり、知識を「探す」ことよりも、知識を持っている当人から「知識を引き出し、応用する」ことに80%以上の時間が使われていたのである。

「知識の検索」システムも大事であるが、得た知識を自分の仕事に応用する活動を支援することが企業に求められているようである。

出所:Jacobson, A. and Prusak, L.「知識の理解と活用に投資せよ」Diamond Harvard Business Review, March, 2007, 25-26.
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10年は勉強

住友商事では、若手社員に対する過度の実力主義を見直し、「10年間は勉強の期間」として位置づけるらしい。つまり、10年間は無理に差をつけず、11年目から一斉に管理職となり本格的な競争に入る。なお、新人の9割は寮に入り、先輩や同期と寝食をともにしながら濃い人間関係を築くという。

まるで職人世界における「徒弟制度」のようだ。宮大工を育てている「斑鳩工舎」の小川氏も「うちは10年は勉強」と言っている。こうした考え方は学習理論と一致するものである。認知的な学習理論では、「認知的徒弟制」という概念があり、職場コミュニティの中で知識・スキルを習得していくことが重要であるとされている。熟達論では、どんな世界でも一流になるには10年間の準備期間が必要であることがわかっており、この間に「よく考えられた」練習をつむことが大切である。

住友商事の方針転換は妥当であると思うが、最初の10年間にどのような経験を積ませるか、その基本デザインが必要になるだろう。

出所:日経産業新聞2008.4.22
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授業、開始

今年度も、経営学原理Ⅰが始まった。授業を始めるときに「みなさん、こんにちはー」と挨拶すると「こんにちはー」と答えてくれるのがうれしい。1年生が多いせいかもしれない。履修の条件である課題レポートを提出した学生数は300名以上。今年度は、履修希望者が多く、教室の容量いっぱいになってしまった(ディスカッションの仕方を工夫しなければいけない)。

授業は、昨年同様、経営学の理論を説明してから、自分たちでその理論を使ってみるという内容だ。今日は、「競争地位別戦略」「市場細分化とターゲット設定」「製品ライフサイクル」を学んだ。説明→個人分析(配布したシートに記入)→グループディスカッション(隣同士で話し合い)を3回繰り返した。

シートを回収すると、今年の学生は、例年以上に「楽しい」という感想が多かった。自分の頭で考え、ディスカッションをすることで、視野が広がるためだろう。一番多かった意見は「頭が固いので、もっと柔らかくしたい」というもの。ただ、本当に頭が固い人はこうした意見は書かない。自分を客観的に観察できるメタ認知能力を持っているからこそ、こうした感想が出てくるのだと思う。

次回以降の成長が楽しみである。
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「君たちはどう生きるか」(読書メモ)

70年にわたり読みつがれている超ベストセラー「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎著、岩波書店)を読んだ。本学のフランス語教授である高橋純先生が推奨されていたからである。

主人公のコペル君は中学二年生(コペル君はあだ名)。学校でのいじめやけんかなど、ありふれた出来事がつづられているのだが、読んでみて驚いた。「世界をどうみるか、世の中にはどのような問題が存在するか、どのような姿勢で生きていくべきか」について非常に深い洞察を含んだ内容である。読み進むにつれて、自分を取り巻く世界について、そして自分自身について考えることを迫ってくる。

コペル君が体験したことを、彼の叔父さん(といっても20代前半の人)が、こっそりとノートに解説していくという構成になっている(このノートは後でコペル君も読むことになる)。かいつまんで言えば、次の点に気づかされた。

人は自分中心の見方をしている
自分の体験から考えたことが本当の思想になる
損得抜きでつきあっている人間関係が美しい
人間らしい暮らしができない人々がたくさんいる
人は他人の過ちを制裁する資格があると思い上がっている
どんな英雄も世界の大きな流れには逆らえない
痛みや苦しさは、身体や心が正常でないことを知らせてくれる大事なサイン

などなど。「世界について、自分について」改めて考えるのに格好の本である。

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受けるより与えるほうが幸いである

「主イエスご自身が、『受けるより与えるほうが幸いである。』と言われたみことばを思い出すべきことを、私は、万事につけ、あなたがたに示して来たのです。」
(使徒の働き20章35節)

これは、パウロがエペソ教会の長老たちに別れを告げたときの言葉である。「受けるより与えるほうが幸いである」というイエスの教えは心に響く。

しかし、受ける以上に与えているかどうか、自分を振り返ったとき、圧倒的に「受けて」いる方が多いことに気づいた。無意識のうちに、どれだけのものを受けることができるかを予測しながら与えているようにも思える。

人生において、受けるよりも与えなければいけない段階というものがあるような気がする。いつまでも受けてばかりいては、成長もしないのだろうと感じた。
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進化する組織

「21世紀に進化し続ける組織を考える」というシンポジウムのレポートを読んだ。知識創造や学習する組織で有名な野中先生とピーター・センゲ氏による講演、および日産自動車やリクルートの事例報告があったようだ。

人によって微妙に意見が異なっていたが、「個の思いを大切にして、対話し、組織にとって核となる価値を実現するために、試行錯誤を繰り返す組織」が、学習する組織であるように思えた。

印象に残った言葉は、以下のとおり。

「『いい仕事とは何か』『コア・バリューは何か』という議論のプロセスが大事です。企業の思想とは、対話によって生まれるもので、おしつけるものではないのです。」(野中先生)

「組織の中で個人が人間らしい成長を遂げることで、組織が成長すると考える企業が増えてきた。」(センゲ氏)

「多様な働く人の「こうありたい」を開放する場が必要になります。」(リクルート・草原氏)

「優良企業は事業戦略や経営手法を環境の変化に絶えず対応させながらも、自らの核となる価値観や目標は守り続けるものです。」(日産自動車・カーラ・ベイロ氏)

組織の価値観が強すぎると個人を殺してしまうし、個人の価値観が前面に出すぎてもばらばらの組織になってしまう。組織としての「こだわり」を共有しながら、個人の「思い」を尊重する組織こそ、進化し続けることができるのかもしれない、と思った。

出所:「21世紀に進化し続ける組織を考える」(Works, Apr-May, 2008, 64-67)。
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パワー・ツール

経営手法には流行り廃りがある。15年前からマネジメント・ツール(経営に使われる手法)に関する調査をしているペイン・アンド・カンパニーが、興味深い結果を報告している。

彼らは産業界に広く普及している25種類の経営ツールを、世界各国のビジネスリーダーに提示し、「どのくらい満足しているか」「これからも利用しつづけるか」を聞いている。

利用度も高く満足度も高いツールは「パワー・ツール」というカテゴリーに入れられている。最も評価の高かったのは「戦略的プランニング」。いろいろと批判もあるが、やはり会社の将来について計画を立てることは必要だし、ツールとしてもわかりやすいのだろう。

CRMは、以前は「使えない」とみなされていたが、ITの進歩とともに、徐々に評価をあげてきているという。この他「CRM]「ベンチマーキング」「TQM」などもパワー・ツールとみなされていた。同じ品質管理の手法でも「シックスシグマ」は、利用度も満足度も低い「半熟ツール」のカテゴリーに入っていたのは意外だった。

利用度は高いが満足度は低いツールは「鈍器」と名付けられている。ここに位置づけられていたのは「ナレッジ・マネジメント」や「バランス・スコアカード」。重要性は高いので導入してみたものの、うまく使えない、というツールだ。

ただ、気をつけなければいけないのは、経営ツールは自分で磨き、改善していく必要がある、という点。誰でも利用できる便利なツールを使っていても競争には勝てないだろう。よい職人が道具の手入れを怠らないように、よい経営者もマネジメントの道具を磨きつづけなければいけない。

出所:Rigby, D. & Bilodeau, B.「役に立つマネジメント・ツールはどれか」ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー2008(March)17-19
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自ら学ぶ、他者から学ぶ

元ヤクルト監督の古田氏の記事が日経産業新聞2008.4.15号に出ていた。若手育成について述べている箇所で印象に残ったのは次の言葉。

「まだ一軍で通用しなさそうな選手でも、できるだけ昇格させ、通用しそうな部分、足りないものを感じてもらう機会がなきゃダメだと思っていました。体験させずにアドバイスしてもいまひとつ響きません」

経験学習理論でも、ストレッチ(背伸び)することが大切だと言われている。まずチャレンジして、目標と現実のギャップを感じ、自分の現状を知る。それをどのように埋めるかを考え、アクションを起こすことで人は成長する。

熟達者が若手に何かを伝える場合にも、体験させながら伝えることが重要である。その際、古田氏は「どんなことを目指しているのか、どんな選手になりたいのかをこちらが理解してからアドバイスしなければうまくいきません」と言っている。

「(経験を通して)自ら学ぶこと」と「他者から学ぶこと」をうまくミックスさせることが大切であることに気づかされた。
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