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ウィル、マスト、キャン

先日、リクルートの方とお話していて、キャリアを考える際に役立ちそうな概念を教えてもらった。それは「ウィル、マスト、キャン」。

ウィル(will)は自分が「したい」こと
マスト(must)は自分が「やらなければいけない」こと
キャン(can)は自分が「できる」こと

イメージとしては、これら3つの輪が同じ大きさでうまく重なっているとバランスのとれた良いキャリアであるという。

例えば、マストの輪が大きすぎる人は、自分の役割を過剰に意識し「~ねばならない」という思いばかりがつよく、仕事の重圧に押しつぶされてしまうタイプ。

ウィルの輪が大きすぎる人は、自分の能力や役割を考えずに「俺は~をしたいんだ」と駄々をこねる人。このタイプは、将来大きく伸びる人か、単に勘違いしている人のどちらかのような気がする。

面白かったのが、キャンが大きい人。能力はあるのに、役割意識が弱く、意欲も低い「仕事不足」の人らしい。

このとき、ウィル、マスト、キャンの輪の大きさも大切になる。いくらバランスが良くても、3つの輪が小さくまとまっているのは「意欲不足」ということになる。

こんな具合に、「ウィル・マスト・キャン」の輪を描いてみると、自分や他人(部下)のキャリアを診断することができる。とても便利な概念だと思った。

ただ、一つ感じたことは「これら3つの輪がいつもバランスとれているのが理想なのか?」という点だ。どこか一つ、大きな輪がドライバーになって他の輪も大きくなっていくケースもあると思った。まだまだ能力(キャン)が足りないし、大きな役割(マスト)もないが「~したい」というウィルの大きさを大事にしている若い人は、キャンやマストも、そのうち大きくなるだろう。

そんなときに、この3つの輪を描いてみて「よーし、3年後にはこの輪が同じ大きさになるようにがんばろう」という気持ちになればいいのかもしれない。
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解決策が見えてきた

ピーンと張りつめた緊張感がただよっていた先週の授業とはうってかわって、和やかな雰囲気で質疑応答が行われた。中央バスの奈良さん(散策バス担当)と木村さん(天狗山担当)の人柄だろう。「その点は当社も課題としているので、是非つっこんで考えてみてください」「どんなイベントがあると魅力的だと思いますか?」といった質問に答えているうちに、問題の解決策の方向性が見えてくる。聞いていた学生からも「発表に対して会社の人のコメントが次の解決策のヒントにもなるような具体的なものだった」という感想があった。

さて、天狗山ロープウェイの最大の売り物は「景色」だ。夜景は、函館や札幌の藻岩山と並んで北海道の三大夜景の一つでもある。しかし、これを知っている人が少ないことがわかった。最大の資源である景色をいかにアピールするかが一つの課題だ。

また、紅葉が終わった11月は閑散期であるため、目玉となるイベントが少ない。シマリス公園のリスも巣に入ったまま出てこないため閉園中。ここで使えそうなのが「天狗の博物館」だ。意外と知られていないこの施設をアピールすれば、顧客満足を高めることができるかもしれない。中央バスの木村さんからも「若者うけするような天狗のキャラクターを考えてください」という具体的なお題をいただいた。

5チームの発表がおわると、次は、小樽の観光スポットをむすぶ散策バスにテーマが移る。さすがバス会社だけあって、運転手さんの接客態度は良好という調査結果が出た。レトロバス「ロマン号」も雰囲気があってよいとの声。問題は、観光バスとしての特色をいかに出すか。つまり、「普通のバス+アルファ」となる付加価値をいかにつけくわえるかが課題だ。

キーワードは「情報」。「車内で観光施設についてアナウンスする」「わかりやすいコース設定にする」「停留所の時刻表をわかりやすくする」などなど。いかに観光気分を味わってもらう工夫をするかを考えなくてはいけない。解決策にも踏み込んだ議論が行われ、何をすればよいのか、各チームも見えてきたようだ。

小樽オルゴール堂や田中酒造を担当するチームはプレゼンを聞いているだけだと思ったら大間違い(実は、各プレゼンの採点をしているのだが)。「他の企業に応用できる情報が多いので自分たちのグループにも生かしていきたい」と、しっかり今回のプレゼンから学んでいるのだ。また、「オルゴール堂、田中酒造、中央バスの発表を聞くことで、小樽の観光全体の問題点が見えてきたかなと思います」とコメントしていた学生もおり、なかなか鋭い視点を持っている。

これで中間報告が終了し、来週からは具体的な解決策を考えることになる。さあ、これからが本番だ!
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守・破・離?

今日の経営学原理Ⅰは小テスト。授業で学んだ理論やモデルを何も見ずに説明してもらうというテストだ。問題は次のとおり。

「以下の概念を、図表・式を用いて説明しなさい。図表に、簡単な事例を書き入れると、最大20点まで得点を加算します」

戦略
・製品・市場マトリックス
・基本戦略パターン
・業界構造分析
・プロダクトポートフォリオ

組織
・組織の構成要素
・マズローの欲求階層説
・期待理論
・組織変革の方法(アプローチ)
・組織構造の変遷

マーケティング
・競争地位別戦略
・製品ライフサイクル
・マーケティングミックス

会計
・貸借対照表
・損益計算書

要は、これらの理論・モデルを丸暗記して「頭にたたきこむ」ことが求められる。ちなみに、70点未満の場合には単位がとれない(例年の平均点は90点台)。「これのどこが小テストなんだ?」という声が聞こえてきそうだが、この授業ではあくまでも「小テスト」。なぜなら、理論やモデルは「使ってなんぼ」だからだ。

なぜこんなテストをするのか?それは「正確に覚えていないと、使うことができない」からだ。だからまず丸暗記してもらう(とは言っても、授業で説明するときには理論・モデルを事例に当てはめてもらっているのだが)。今後の授業において、学生は「具体的な会社・組織の事例を見て、問題点を発見し、解決策を見つける」という課題に取り組む。その際に、覚えた理論やモデルをツール(道具)として使う。そうすると理論やモデルが「血肉化」する。

日本の伝統芸能・武芸の世界には「守・破・離」という言葉がある。まず、師匠を真似して「型」を覚え、そのあとにそれを破り、そこから離れて自分なりのスタイルを確立するという意味だ。さすがに学部生にそこまでは求めないが、少なくとも先人の考えたモデルを正確に覚えて、使いこなしてほしい。そうすると、今まで見えなかった世界が見えてくるだろう。
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現場で考える力(伊勢丹の強さ)

大学院の授業(顧客志向経営)で、伊勢丹のケース分析をした。伊勢丹の強さを一言で表すならば、「現場で考える力」にあると思う。現場で顧客を肌で感じ、論理的に考える力だ。右脳と左脳をバランスよく使う力と言い換えることができるかもしれない。同社にはスマートなイメージがあるが、実は泥臭い働き方をしている点も印象的だ。

ここでいう現場とは、人々が活動している街であり、人々が暮らしている家庭、そして人々がものを買う売り場である。伊勢丹の社員は、こうした現場において自分の目で顧客の「今と未来」を観察することを重視している。

出店する際には、責任者が徹底的に現地の街を歩き、人々の服装を観察し、ときに家庭を訪問して、どんな暮らしをしているのかを調べる。バイヤーも、できるかぎり売り場に立って接客をする。販売員は、どんなものが売れたのかをメモしてバイヤーに伝える(なお、伊勢丹では、商品を買ってもらう場という意味を込めて、「売り場」ではなく「お買い場」と呼ぶらしい)。こうした肌感覚のようなデータを重視する点が伊勢丹の特徴だろう。

もちろん伊勢丹にも、POSデータやカードデータをベースにした顧客情報システムを備えている。ただし、こうしたデータは他社も持っているし、大きな差はないと思う。大事なことは、顧客データを「どのように活用するか」という点だ。現場において身体で感じたデータを持っていてこそ、数値データの威力も増す。

では、どのように活用するのか。ここが「考える力」である。顧客が何を求めているかを解釈し、先を読み、仮説を立てる力である。商品を発注するときに「なぜそれでいいのか?」を徹底的に問う。単なる感覚では許されず、裏づけや理論が必要となる。根拠を持って意思決定することによって、失敗しても成功しても「なぜ失敗したのか、なぜ成功したのか」が明確になる。

「現場で徹底的に考える」というとトヨタを思い出すが、企業の強さは、こうした基本を「いかに愚直に繰り返すことができるか」にかかっているのだろう。「計画(P)→実行(D)→反省(C)→改善(A)」というマネジメントの基本を企業の隅々まで浸透させることができるかどうかが鍵となる。

なぜここまでできるのか。それは「顧客への責任感」と「売る執念」ではないか。「押しの強さ」でも有名な伊勢丹マンは、簡単にはあきらめない。すごい企業は「ちょっとおかしい」と言われるくらい責任感と執念を持っている。

さて、「現場で徹底的に考える」という強みを支えているものに気づいた。それは、「原理・原則」を守りつつ「革新」していく姿勢である。

同社では、「バイヤーズマニュアル」というMD(マーチャンダイジング)計画を立てるときのバイブルがあるという。伊勢丹マンが作り上げたのかと思いきや、全米小売業者協会が発行している『バイヤーズ・マニュアル』を3代目小菅丹治が1948年に渡米して翻訳したものだという。60年前に書かれたものを「型」として、大切にしている点に感銘を受けた。

では、マニュアル主義に陥っているかといえばNOである。伊勢丹には「55%攻撃論」という概念がある。これは、「新しいことを提案するときに、50%の成功の可能性があると思ったら上司に相談、55%の可能性があると思ったら自分で判断し、勇気を持って実行に移す。ただし、残りの45%は自分で努力して100%に持っていく」ことを意味する。挑戦することの大切さを非常にわかりやすく言語化している点がすごい。

いろいろと強みを持っている伊勢丹であるが、よく考えると同社の強みは微妙なバランスの上に成り立っていることがわかる。まず、POSやカードからの数値データと現場から得るデータのバランス。両者のバランスが崩れると先を読むマーチャンダイジング力も弱まるだろう。また、「現場で徹底的に考える」原動力となっている「伊勢丹マンとしてのプライド・危機感」を、急速に拡大する提携・統合の波の中で維持することができるだろうか。伊勢丹がさらに一皮むけてスケールアップするのか、それとも普通の百貨店になってしまうのか。今後が楽しみである。

ケース資料:「伊勢丹のつくりかた」日経ビジネス2007年10月15日号
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仕える人

『あなたがたのうちの一番偉大な者は、あなたがたに仕える人でなければなりません』(マタイの福音書23章11節)

奉仕型リーダーシップ(サーバントリーダーシップ)という概念がある。「集団や組織のリーダーは、メンバーを支配するのではく奉仕すべきである」という考え方である。上記の言葉は、この概念に近いものだ(というようりも、この聖書の言葉をベースにして、奉仕型リーダーシップの概念が作られたと思うが)。

顧客志向の経営を実践する際にも、リーダーは奉仕型でなければならない、といわれている。最前線で顧客に接する従業員を支えるために現場の管理職がおり、現場の管理職を支えるために中間管理職がおり、中間管理職を支えるのが会社の役員や社長である。こうした組織形態を「逆さまのピラミッド」と呼んだりする。

ただ、リーダーたるもの、組織が向かうべき方向性を示し、メンバーを励ますことを忘れてはいけない。「奉仕型=何でも言うことを聞く」という意味ではない。組織の理念・戦略を実行するときに、メンバーを「支援」することが「奉仕」「仕える」という意味に込められているのだろう。
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自分が成長すれば部下も成長する

11月21日(水)に、「これから現場を支えるマネジャーのあり方」というテーマで第1回OBS(小樽商科大学ビジネススクール)フォーラムが開かれ、160名を超える方にご参加いただいた。僕がコーディネーターをつとめたので、フォーラムの概要を報告したい。

今回のフォーラムは、(「ここでみなさんに考えてもらいます」という具合に)講演の途中で演習が入ったり、隣の席の方と意見交換する時間を設けるなど、「聴衆と一緒に考えるスタイル」だったのが特徴だ。

講師であるリクルート・マネジメント・ソリューションズの石井さんのメッセージは2つあったように思える。一つ目は、「現場のマネジャーに求められるものは多様なので、全部一人で抱え込んでしまうとつぶれてしまう。だから、職場のメンバーを巻き込んだ『場づくり』が大切となる」という点だ。

二つ目のメッセージは、「会社、部下、家庭の要求に応えようとする前に、まず自分が成長することが大事になる」ということ。マネジャー自身が生き生きと働いていなければ、部下や家族も苦しくなる。まず、小さなことでもよいから、「自分の学習戦略、成長戦略」を立てて、自分が成長していると実感することが大切だ。それが部下や家族に良い影響を与える。

一つ目のメッセージに関して、リクルート社が10年毎に実施した調査が紹介された。これは大企業の経営者(役員)がマネジャーに求めるものを1位から18位までランクづけしたデータだ。1985年の時点では、1位が「目標に向かって意欲的に行動する人」、2位が「与えられた仕事を確実に遂行できる人」、3位が「一生懸命に仕事をする人」だった。

ところが、バブル崩壊後の1997年には、1位が「目標に向かって意欲的に行動する人」、2位が「自らが問題形成し提案できる人」、3位が「状況の変化に柔軟に対応できる人」に変化する。驚いたことに「人間関係を大事にする人」「一生懸命仕事をする人」が17、18位に落ちてしまった。

そして2007年には、1位「広い視野でものごとをとらえられる人」、2位「上位者に対して自らの意思・戦略を明確に出せる人」、3位「自らが問題形成し提案できる人」となる。つまり、「会社から与えられた目標に向かって、一生懸命仕事をする」ことだけではマネジャーとして不十分であり、「自らが問題を考え、自分の戦略を会社に提言できる人」が求められているのだ。

講演のあとに15分ほど隣同士で議論してもらい、質問を出してもらった。いろいろと質問が出たが、ここでは2つほど紹介したい。

一つは、「部下は人間関係を大事にしてほしいと考え、経営者はあまり人間関係を重視していない。このギャップをどうするのか?」という質問。実は、経営者アンケートで1985年に4位だった「人間関係を大切にする人」は、1997年に17位に落ちてしまう。リストラや歪んだ成果主義の影響だろう。しかし、2007年の調査では、再び6位に上昇する。つまり、改めて職場の人間関係の重要性が認識されてきたのだ。だから、部下と経営者の間にはそんなにギャップはない。

2つ目は「時代によってマネジャーに求められるものが変化することはわかった。では、変わらない原理・原則のようなものはないのか?」という質問だ。これは第1の質問にも関係している。リクルート社が新入社員を対象に行った「理想の上司はどんな人か」という調査では、ベスト3の中に「人間関係を大事にする人」「明確な理念や理想を持っている人」が入っている。そして、2007年の経営者の調査でも「人間関係を大切にする人」は6位、「自らの意思・戦略を明確に出せる人」は2位である。

つまり、一見、時代とともに変化しているように思われるマネジャー像であるが、時代が変わっても、立場が変わっても重要な原理・原則がある。それが今回の石井さんの講演の中に込められていた「人間関係を築きながら、メンバーを巻き込んで、場作りをすること」と「自分の理念・理想を明確にして、自分が成長すること」だろう。

リーダーシップ研究で有名な神戸大学の金井壽宏先生は、「夢をかかげ、職場を巻き込みながら実現する人」が変革型リーダーである、と述べている。「自分の夢(目標)」と「職場の巻き込み」をつなげる鍵は、石井さんが主張するように「マネジャー自身が成長すること」だと思った。

自分が成長すれば、部下も成長するのだろう。

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ピリッとした空気

今回の授業は、田中酒造の田中社長をお迎えしての中間発表だった。田中酒造の見学施設「亀甲蔵」を観察調査、インタビュー調査してきた9組のチームが、同社の課題を発表した。

前回と違って、今回はピーンと緊張感のある発表会となった。いきなり田中社長の厳しいコメントが飛び出したからだ。田中社長は商大のOBなので、「今日は後輩がどんな発表をしてくれるか楽しみ。遠慮なしにこちらもビシビシと質問します」とおっしゃっていた。

発表に対して真剣な質問をする田中社長。授業後に学生が提出するシートの感想欄には、「田中社長の質問がスパイシーで怖かった」「こちらまで緊張するようなプレゼンばかりで時間が短く感じました」「全体的にピリッとした空気がすごかった」「田中社長がけっこう厳しい方だったので、とても深い議論ができていたと思う」「田中社長の厳しいツッコミから、この授業に対する期待感が伝わってきた」という声があった。

はじめは田中社長の迫力におされ気味だった学生たちも、徐々に盛り返していく。学生からの声を紹介しよう。「だんだん受け答えがよくなっていた」「田中社長からの厳しい質問に、堂々と答えているチームが多くてすごいなと思いました」「ただデータを残すだけでなく、自分たちの頭で考えてまとめることが大事だと感じた」。発表した学生からは「発表したかったことを出し切れなかったというのが一番の感想です。」というコメントがあった。

さて、発表の中から浮かび上がってきた課題は以下のとおり。

・お酒を飲めない人にどのように商品を買ってもらうか?
・どのようにしたら、しつこくなく、かつ満足してもらうような接客ができるか?
・駅から5分にもかかわらず「遠い」というイメージをどのように払拭するか?
・どのように商品の価値を理解してもらい、価格に納得してもらうか?
・何回来ても飽きない工夫をいかにするか?

調査の結果、商品力と接客力の高さは証明されたが、さらにパワーアップするためにも上記の課題を解決しなければならない。田中社長は「解決策は期待していますよ。へんにまとまった解決策よりも、規格外・予想外の提案をしてください。『そんなの無理だよ』というようなヤツを考えてくださいね」という言葉を残して帰られた。

学生だけでなく教員も、いろいろと刺激を受けた授業だった。
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数字から診る

授業のテーマは、会計分析。

財務諸表(貸借対照表と損益計算書)について簡単に説明した後、電卓をはじいて「トヨタvs日産」の経営分析を行った。ほとんどの学生が「貸借対照表と損益計算書」を知っていたので少し驚いた。よく考えたら今は後期なので、前期に会計関係の授業を履修している学生が多いのだろう。

計算したのは
・自己資本比率
・売上高経常利益率
・ROA(総資産利益率)
の三つ。これらは、会社の「安全性」「収益性」「総合力」を診るための指標だ。

トヨタ自動車と日産自動車の最近3年分の数字をもとに比率を計算し、推移を折れ線グラフで描く。分析すると「トヨタの財務状況は安定しているのに対して、日産の収益性やROAが低下している」という結果になる。ここまでは個人分析。

会計分析のよいところは、経営状態が数字でつかめるところ。学生からのコメントには「数字で企業の経営がわかるところがおもしろい」「会社の社風や戦略が数字にあらわるので驚いた」という意見が多かった。

つぎに、「なぜそうした結果になったのか?」をグループで議論してもらった。授業では、あえて何も情報を与えず、学生が今もっている知識を活用し、推測をしてもらった。多くの学生は情報不足に悩まされたようだが、やはり中にはいろいろ知っている学生もいて、知らない学生は「すごい」「やばい」ということになる。

前に出て発表してもらった女子学生は「日産のゴーンさんは、建て直しの腕はすごかったけど、戦略が短期的だったと思う。それが今になって業績に現れているのではないか。今後は、長期的戦略が必要になるだろう」とコメントしていた。

回収した分析シートの感想欄には「新聞を読まないといけない」「ヤフーファイナンスでいろいろと調べてみます」「私もワールドビジネスサテライトを見ようと思う」「毎日、学校の図書館で日経を読みます」などなど、危機感あふれるコメントが書かれていた。

来週は、小テストだ。
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腹落ちする

先日、ある会社の人材開発部長さんとお話しをする機会があった。そのとき、「何か新しいことをするときには、腹落ちすることが大事なんです」とおっしゃっていたのが印象に残った。

その会社では、部長さんを対象としたアクションラーニング型の研修をしている。半年間で3回ほど研修を行い「職場力」を高めるのが狙いである。部長さんは、自分の職場の問題を考え、それを解決するアクションを起こさなくてはならず、毎回の研修で発表してディスカッションする。

初回の研修は、それなりに盛り上がったのだが、どうも参加した部長さんたちは「職場力」とは何かについて「腹落ちしていなかった」らしい。つまり、頭ではわかっているのだけれど、「実際のところどういうこと?」という疑問が残っていたとのこと。「腹落ちする」とは、腹にストンと落ちるということで、「心のそこから理解する」、「重要性を実感する、という意味だそうだ。

なかなか良い言葉だなあ、と思った。その研修では、予定を変更して、2回目の研修では、とことん「なぜこんなことをやらなければいけないのか?」「職場力とは何か?」について話し合い、本音を出した。そのことで、研修のテーマが「腹に落ちて」、部長さんたちのモチベーションも向上したという。

こうした研修に限らず、組織で何か新しいことを試みる場合、メンバーが「腹落ちする」ことが大切だと思った。そのためには、まず、やろうとしていることについて、本音で議論することが大切なのだろう。
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患難さえも喜んでいます

『そればかりか、患難さえも喜んでいます。それは、患難が忍耐を生み出し、忍耐が練られた品性を生み出し、練られた品性が希望を生み出すと知っているからです。』(ローマ人への手紙5章3-4節)

これは、伝道者パウロがローマ教会に宛てた手紙の一部である。経験学習においても「苦難(hardship)」という経験は学習の源泉となるといわれている。しかし、すべての人が苦難から学べるわけではない。

パウロによると、苦難から学べる人というのは、「忍耐と品性」を備えている人だ。ここでいう品性とは、苦難を前向きに受け取る姿勢かもしれない。苦難を前向きにとらえて耐えることで、希望が見えてくる、ということだろう。苦難を学びのチャンスとしてとらえることができる人は強い。
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