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『仕事力:白版』(読書メモ)

朝日新聞社編『仕事力:白版』朝日文庫

大前研一、安藤忠雄、鈴木敏文、稲盛和夫、村上隆、柳井正さんら15名の著名人による、「仕事とは何か」「いかに仕事をすべきか」についての語りをまとめたもの。

それぞれの方からパワーを感じたが、最も印象に残ったのは、東京日産自動車販売・社長の林文子さんの記事だった。元BMW東京の社長でもあり、ダイエーの再建に尽力した方でもある。

林さんは、「営業は女性には無理」とされていた時代、ホンダの営業担当になって、いきなりトップ営業になる。その秘訣は、とにかく訪問を楽しみ、お客さん一人ひとりを向いて、信頼関係を作っていくことにある。

その姿勢は、社員に対しても同じだ。林さんは次のように語っている。

「言葉で思いをフィードバックしていくことが、無条件で人を元気にするのです。若い社員一人ひとりにも私は声をかけますが、年代の差もあり、中には煩わしいと感じる人もいるでしょう。しかし心を通わせることをあきらめてはならないのです。タイミングを見計らって何度でも上司から声をかける。実は若い人も本当はそれを望んでいるのですから。」
(p.205-206)

僕が一番印象に残ったのはつぎのことばである。

「私は各支店長によく「心を使っていますか」と尋ねます。どんな小さなことでも気づいたら言葉にしてコミュニケーションを図ることです。」

われわれは「心を使って」仕事をしているだろうか?
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ナラティブ

東京学芸大学の野口先生は「ナラティブ」をつぎのように説明している。

ナラティブとは「自分の経験や出来事を解釈したり、だれかに説明したりしようと試みる陳述」のこと。過去の出来事という意味では「ストーリー」と同じだが、ストーリーは出来事に「筋」を与えたものという点でナラティブとは違うらしい。

このとき大切になるのは聞き手の存在。ぼやきに近いナラティブに、問いかけたり、共感したり、揺さぶることによって、ストーリーが生まれてくるという。

確かに、友人と飲みに行って最近の出来事をブツブツと報告することがあるが、あれがナラティブなのかもしれない。そして、友人と話しているうちに、そこに「」や「意味」を見つけることがある。これがストーリーなのだろう。

経験を振り返るとき、そこに無理やりストーリーを見つけようとせず、まずはブツブツとナラティブすることが大事なのかもしれない、と思った。

出所:野口祐二『「ナラティブ」とは何か』Diamond Harvard Business Review, March, 2010, p.1.
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トラブル削減のコツ

野村総合研究所では、システム構築上のトラブルを4年間で8割以上削減することに成功したらしい。その秘けつは、「トラブルを見える化」して、「原因を徹底的に追求」したこと。

トラブルの見える化では、トラブルをS(クライアントのお客さんに迷惑がおよぶもの)、A(クリアントは困ったがお客さんには迷惑がかからなかったもの)、B(ぎりぎり社内で止められたもの)に分ける。

つぎに、一つ一つのトラブルについて原因から対策まできっちり議論し、対応策を考えるわけだ。

同社会長である藤沼氏によれば、改善活動は継続させるのが難しいという。途中で「飽きてしまう」らしい。では、どうすればいいか?

藤沼会長いわく

成果を出すこと
・社員に関心を持たせる工夫をすること

が大事になる。これら二つを実現する上でポイントになるのは、「ちょっと無理すれば実現できる目標を設定し」「結果だけではなくプロセスもみること」だという。

ほどよいストレッチ目標を立てて、プロセスを大事にしながら改善を行う、という意味では、人材育成も、改善活動も同じである。

出所:「見える化でトラブル8割減」日経ビジネス2010年4月26日号、p70-73.
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主は生きておられる

主は生きておられる
ルツ記3章13節
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国境なき医師が行く(読書メモ)

久留宮隆『国境なき医師が行く』岩波ジュニア新書

20年の経験を持つ外科医が、安定した地位を捨て、「国境なき医師団」に参加。紛争と貧困のアフリカ・リベリヤで医療活動を行う決意をする。

なぜか?

日本の大病院で管理職として働くうちに、病院の利益、業績、人事のことばかりを考え、「患者と一対一で向き合う」「患者を最初から最後まで診る」という当初の志からはずれていることに気づいたからだ。

しかし、国境なき医師団で働くと、収入は十分の一に減り、命の危険もある。自分が得意とする症例だけに集中できる日本と違い、毎日がほとんどはじめての症例となる。

十分な検査機器や設備がない中、テキストを見ながら治療し、3か月で350件という驚異的な数の手術をこなさなければならない。言葉の壁、文化の壁、他国の医師との衝突、現地での病気などなど、まさに「修羅場体験」である。

40代半ばという年齢は、経験を積み、自分なりのノウハウも確立し、地位や収入も安定してくる年代である。逆に言えば、新しいことを学べなくなり、成長が止まってしまう時期ともえいる。

転職が容易な医師とはいえ、当初の志を大事にするために、まったく新しい環境に身を投じて学び直した久留宮医師の姿勢に感銘を受けた。

本書を読み、成長が止まってしまいやすい中年だからこそ、「ストレッチ(挑戦)」し、「アンラーニング(学習棄却)」することが大切になる、と気づいた。
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現場を大事にするやつ

昨日紹介したフィールイメージの小林氏は、マツダ時代に品質管理を徹底的に叩き込まれた師匠がいるという。上司の机の横で直立不動で指導を受ける様子はイジメのようにも見えたらしいが、このときの指導は小林氏の基礎を作ることになる。

その師匠と最近飲む機会があったらしい。

「あの時、なんでオレのことを買ってくれたんですか」という小林氏の問いに、上司は次のように答えた。

「おまえは誰よりも真剣に工場を掃除していたから。現場を大事にするやつはモノになるんや」

仕事に対する真剣な姿勢が、成長のカギになるのだろう。

出所:日経産業新聞2010.4.16
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できない人の気持ち

マツダの生産現場で十数年の経験を積んだ小林健一氏は、2005年、動画を使った技術伝承ツールの作成を支援する会社「フィールイメージ」を設立した。

実写とアニメを組み合わせた映像マニュアルはわかりやすい。こうしたマニュアルを作るようになったのは、マツダ時代に環境認証取得マニュアルの作成を任されたことがきっかけらしい。

30枚ほどの資料を上司に提出したところ「こんな小難しい文章を現場の人間が見る気がすると思うか」と叱責された。文章がダメなら動画にしよう、と作業手順をアニメで説明したところ好評を得る。

小林氏のマニュアルがわかりやすい理由は、動画の活用だけではない。毎日のように失敗して怒られていた若手時代を振り返ると、間違える原因がよくわかるのだという。つまり、ミスする人の気持ちが理解できるのだ。

スポーツの世界でも、苦労して技術を高めてきた人は良いコーチになることが多い。下手な人の気持ちがわかるからだ。マニュアルによる技術伝承も同じなのだろう。

人を指導するとき、ついつい「なんでこんなこともできないんだ!」と思ってしまうことが多い。人材育成においては、苦労した昔を思い出して「できない人の気持ち」を理解する姿勢が大切になる、と思った。

出所:日経産業新聞2010.4.16
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私たちの国籍は天にあります

私たちの国籍は天にあります
(ピリピ人への手紙3章20節)
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『悲しき口笛』(読書メモ)

寺山修司『悲しき口笛』ハルキ文庫

歌人であり劇作家でもあった寺山修司のエッセイ集である。

青森県三沢に生まれ、戦争で父を失い、小学校のときに母と離ればなれに暮らすことになった寺山氏。本書を読んで、彼の創作の原動力がお母さんへの思いにあることがわかった。

寺山さんのエッセイの中にはお母さんがよく登場するが、その際、現実にはなかったことを書いてしまうという。

「私自身、母について書くたび「いつのまにか、勝手に筆がすすんでしまう」ということを奇異に思わぬわけにはいかなかった。(中略)私は、一人の男が自分の少年時代について語ろうとするとき、記憶を修正し、美化し、「実際に起こったこと」ではなく「実際に起こってほしかったこと」を語っている・・・・・という例をいくつか見聞してきた。」(p.225)

「未来の修正というのは出来ぬが、過去の修正ならば出来る。そして、実際に起こらなかったことも、歴史のうちであると思えば、過去の作り変えによってこそ、人は現在の呪縛から解放されるのである。」(p.225)

優れた実績を残す人の多くは、コンプレックスをエネルギー源にしている。人間は、過去の出来事に縛られながら生活しているが、そこから解放されるために仕事をしているのかもしれない、と思った。
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改善と改革

「改善もしない人に改革ができるわけがない」と主張するのは、リコー副社長の遠藤氏。

組織を変革する際によく行うのがABC分析。問題の大きさ・重要性ごとに、A(もっとも重要な問題)、B(次に重要な問題)、C(重要性の低い問題)というように、問題をランクづけする。そして通常は「A」の問題からとりかかる。

しかし、遠藤副社長は「Cランクの問題から取りかかるべき」という。

なぜなら、成果のスピードが速く、全員で取り組むことができ、少ない経費で済むからである。そして、Cランクの問題はAやBランクの問題とも絡んでいるので、Cランクの問題に取り組むことは、AやBの問題を攻めやすい状態をつくるという。

この話を聞いて、なるほどと思った。改善もできないのに改革ができるはずがない。ただ、改善と改革の間には大きな溝があるのも事実だと思う。改善をある程度進めた段階で、改革に飛躍するステップを設けることも大切だろう。

改善が個別の問題の解決だとしたら、改革は全体の整合性にかかわる問題の解決といえる。個々の改善を突き詰めていくと、改革の課題が見えてくる。そのとき、改革に取り組めるかどうかは、トップレベルのリーダーシップの問題にかかわるように思える。

出所:「リコー流の改革の極意:100円を20億円に変える」日経ビジネス2010年3月29日、p.84-87.
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