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死とわたしとの間はただの一歩です

死とわたしとの間はただの一歩です
(サムエル記上20章3節)

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『一度死んでみた』(読書メモ)

澤本嘉光・鹿目けい子『一度死んでみた』幻冬舎文庫

映画にもなった本。

チープな小説」だと思って読んでいたが、疾走感があるので読み切ってしまった。

製薬会社の社長で、研究オタクの計(はかる)は、娘の七瀬と仲が悪く、ふだんから「クソおやじ、死ね」と言われている。なぜなら、母親が亡くなったときも、仕事ばかりしていたからである。

会社で開発された「2日間だけ死ねる薬」を計が飲み、死んでいる間に本当に殺されそうになるところを助けるというストーリー。

初めに感じていたチープさが徐々に薄れ、引き込まれた。

「死んでみたら全てがわかったよ」「目に見えているものは幻想で、見えないものが真実だった」(p. 152)

名言である。

著者の澤本さんは、ソフトバンク「白戸家」シリーズを手掛けたCMプランナー。あとがきで、次のように語っている。

一度死んでみたら、きっといろんなことがわかっていくんじゃないか。そう漠然と感じたところからストーリーは動き出していきました」と語っている。

発想がすごい。

一度死んだ気持ちになって生きる」ことが大事かもしれない、と思った。








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『オーバー・フェンス』(映画メモ)

『オーバー・フェンス』(2016年、山下敦弘監督)

原作の佐藤泰志の小説が好きなので、観てみた。

東京で働いていた義男(オダギリ・ジョー)は、妻子と別れ、故郷の函館に戻ってくる。一人でアパートに住み、失業保険をもらいながら職業訓練校に通う生活は、とにかく侘しい。

たまたま訓練校の友人に連れられて行ったキャバクラで聡(蒼井優)と出会い、自分を見つめ直すようになるというストーリー。

一見、礼儀正しく、穏やかな義男の「闇」の部分が現れてくるところが見どころである。

情緒不安定な聡との会話(正確にいうと独り言)が印象的だ。

「お前は自分のこと「ぶっ壊れている」って言ってたけど。俺は「ぶっ壊す」ほうだから、お前よりひどいよな

自己理解」から新しい生き方が始まる、と思った。

ちなみに、主演の二人だけでなく、脇役の俳優陣が上手かった。




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あなたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだ。

あなたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだ。
(ヨハネによる福音書15章16節)

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『雲と鉛筆』(読書メモ)

吉田篤弘『雲と鉛筆』ちくまプリマ―新書

ちくまプリマ―新書300冊目を記念して、このシリーズの装丁デザインを手掛けている吉田さんが書いた小説。

鉛筆工場に勤める主人公の僕は、辺鄙な家の屋根裏に一人で住んでいる。

趣味は、鉛筆で雲を描くことと、遠い街に本を買いに行くこと。

「コーヒーが飲める店」で友人の「人生」(あだな)と語り、理髪店主人の「バリカン」(あだな)とも仲がいい。

外国に住むお姉さんにジューサーミキサーをプレゼントしたところ、故障していたという手紙を受け取るのだが、その内容が深い。

「台所テーブルの上に置いて右から左から眺めています。しかし、これはこれでなかなかいいものです。壊れたものには、動いているものと違う美しさがある。動けばそれは道具だけど、動かないジューサーミキサーは、その役割から解放されて、そのうち、ジューサーミキサーという名前からも自由になりました」(p. 77)

この部分を読み、人間も同じかもしれない、と思った。




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『幸せなひとりぼっち』(映画メモ)

『幸せなひとりぼっち』(2015年、ハンネス・ホルム監督)

スウェーデンの映画なのだが、感動した。

59歳のオーベ(ロルフ・ラスゴード)は、愛する妻ソーニャ(イーダ・エングボル)を亡くし、会社をクビになってしまい、自殺を図るものの、なかなか死ねない。なぜなら、隣に、イラン人の奥さんとスウェーデン人の旦那が越して来て、死のうと思ったときにやってくるからである。

ちなみに、オーベは、真っすぐ過ぎて「変人」であるがゆえに、近隣の住民から煙たがれている。

この映画の凄いところは、変人オーベの現在を描写しつつ、オーベの子ども時代、青年時代、新婚時代を描き、徐々にその時間的距離を縮めていくところ。そのプロセスを通して、オーベとソーニャの関係があぶり出される。

何ということもないストーリーなのだが、オーベの真っすぐな生き方と、それに寄り添うソーニャの愛が、心に迫ってくる。

とにかく、真っすぐな人たちの愛は美しい

ラストも良かった。















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主なる神よ、どうぞ赦してください

主なる神よ、どうぞ赦してください
(アモス書7章2節)

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『若き日の哀しみ』(読書メモ)

ダニロ・キシュ(山崎佳代子訳)『若き日の哀しみ』創元ライブラリ

旧ユーゴスラビアの作家、ダニロ・キシュの自伝的小説。

アウシュビッツに送られたユダヤ人の父を背景として、母と姉、そして犬のディンゴと暮らす日々が、いくつもの短編で綴られる。

詩のような独特の作風なのだが、なぜか読むのに時間がかかってしまった。それはたぶん、作品には直接出てこない「戦争」の雰囲気が、暗い影を落としているからだろう。

良かったのは、おねしょしたときに、姉さんに黙って処理してくれた母を描いた「顔が赤くなる話」と、飼い犬ディンゴが飼い主の少年アンディを語る「少年と犬」。

どんな酷い状況に置かれても、そこに優しい人がいるかぎり、少年時代の思い出は宝物になる。そのことが伝わってきた。







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『さらば青春の光』(映画)

『さらば青春の光』(1979年、フランク・ロッダム監督)

ジミー(フィル・ダニエルズ)は広告会社の郵便係をしながら、夜はモッズと呼ばれる暴走族(というより、中途半端な不良集団)の一員として、ドラックやダンスパーティーに明け暮れる毎日。

ロンドンには、もひとつロッカーズという不良集団があり、お互いに敵対しているのだが、ある日、暴動に発展したのがきっかけで、ジミーは逮捕され、人生の歯車が狂っていく、という物語。

いつの時代も、どこの国でも、若者は鬱屈して、エネルギーを持て余しているのが伝わってきた。

また、モッズという不良集団は皆、ネクタイにスーツを着ているのも驚きである(さすがロンドン)。

やんちゃしていた人たちも、不良を卒業して、普通の社会人になるときが来る。人生の節目をどう乗り越えるかについて考えさせられた。




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今泣いている人々は、幸いである、あなたがたは笑うようになる

今泣いている人々は、幸いである、あなたがたは笑うようになる
(ルカによる福音書6章21節)

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