goo

『酔いがさめたらうちに帰ろう』(読書メモ)

鴨志田穣『酔いがさめたらうちに帰ろう』講談社文庫

映画にもなった、元戦場カメラマン鴨志田穣さんの私小説である。

リリー・フランキーによる表紙の似顔絵が、僕の弟にそっくりだったのでつい買ってしまった。

アルコール依存症で酒びたりの主人公は体がボロボロなのだが、それでも毎日酒を飲む。血を吐いて入院しても、退院したらまた酒を飲む。酒を止めたいと心から思っているのに、飲んでしまう蟻地獄のような毎日。

しかし、この小説に暗さはない。精神病院のアルコール病棟も、ユニークな仲間とともに明るく描かれている。アル中が原因で離婚した妻や子供たちも病院に遊びに来る。どこか客観的に自分を眺める著者の語りによって、アルコールの恐ろしさが伝わってくる。

ところで、なぜ主人公はアルコール中毒になっのか?

戦場での体験が原因らしいことが、本書の最後で明らかにされる。しかし、日本のアルコール中毒患者のほとんどは、戦場に行った経験はない。

本書を読み進むうちに、われわれの日常生活の中にも、戦場と同じ異常体験が潜んでいることがわかった。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

顧客の声を聞くための店

無添加化粧品のファンケルは、昨年11月横浜市内に、新業態「ファンケルボイス」を開いたらしい。名前のとおり、顧客の声に耳を傾け、顧客から学ぶことを主眼とする店である。

化粧品のカウンセリング販売に加えて、お肌によいドリンクを販売するカフェが併設されているが、一番の特徴は、来店客がマジックで自由に店への要望をボードに書き込める「ボイステーブル」。

ここに書き込まれた内容は、商品の改善や開発に生かすという。

この店舗の優れているところは、普通のお客さんの意見が聞けるというところ。通常の顧客相談窓口に寄せられる意見や苦情は、怒っているお客さんやファンのお客さんの声なので、少しバイアスがかかっている場合が多い。

等身大のお客さんの声が聞けるこうした店の役割は大きい、と思った。

出所:日経流通新聞2011年3月14日

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

あなたは、「自分の力の働きで、この富を築いた」などと

あなたは、「自分の力の働きで、この富を築いた」などと考えてはならない。
(申命記8章17節)


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『いかりや長介という生き方』(読書メモ)

いかりや浩一『いかりや長介という生き方』幻冬舎文庫

長さんの長男である浩一さんから見た「いかりや長介論」である。

長さんの自伝『だめだこりゃ』は、主に仕事の面から人生を振り返ったものだが、本書は、父親や夫の面に光が当てられている。

最も印象に残ったことは、「奥さんがいなければ、長さんの活躍はなかった」ということ。

長さんは三人の奥さんをもらっている。

最初の奥さんは、踊り子として、デビュー前の長さんを支えた人なのだが、長さんがデビューして立場が逆転したとたん、心の病になってしまう。子ども二人を東京に残し、故郷で静養することになった奥さんとは、その後離婚することになる。

二番目の奥さんは、コメディアンとしての絶頂期を支えた人だが、原因不明の難病にかかり、自殺してしまう。

五十代半ばを過ぎ、役者として脱皮しようと時期に、長さんは三番目の奥さんをもらう。大根役者から名脇役へと成長したのは、この奥さんのサポートがあったからだ。

まるで命を削るように長さんの働きを支えた三人の奥さんに敬意を表したい。本書を読んで、男性が社会で活躍するには奥さんの支えが不可欠になることを痛烈に感じた。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

一週間でPDCAを回す

業績好調のユニ・チャームの秘訣は「SAPS経営」といわれる経営手法。

S スケジュール
A アクション
P パフォーマンス
S スケジュール

の略のようだ。

データを積み上げて意思決定するのではなく、間違ってもいいから仮説を出して行動することを重視する。

たとえば、震災のときも、原材料が不足して使用済の紙おむつを丸めて捨てるときに使うテープが入手しにくくなり、生産が止まる恐れがでた。

ふつうであれば、テープが入手できるまで生産中止になるところだが、紙おむつの仕様を簡素化する提案が現場から出され、2週間で復旧したらしい。

SAPS経営は、前週の行動を測定して改善点を抽出し、それを踏まえて一週間の行動計画を立てて実行するもの。つまり、PDCAサイクルを一週間単位で高速回転させる手法である。

よく考えると、1週間というサイクルは人間の活動にとって適切な長さであるように思う。このサイクルを充実させるために「仮説」と「アクション」を重視することがSAPS経営の神髄であるように感じた。

出所:日経流通新聞2011年4月13日
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

聞くのに早く、話すのに遅く

聞くのに早く、話すのに遅く、また怒るのに遅いようにしなさい。
(ヤコブの手紙1章19節)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

うまくいったことを書き残す

先日紹介した大村はまさんは、教師向けの講演で「若いときにしておいてよかったと思うこと」について次のように述べている。

「みなさんも何かうまくいったこと、うまい発言ができたり、うまい指導ができたりすることがあるでしょう、教室の中で、ぱっと。それをすばやく書きとめておいて、自分の宝になさるとよいと思います。それはびっくりするような自分の栄養になるものです。」(p.224-225)

失敗はよく振り返るが、成功はなかなか振り返らない人が多いのではないだろうか。北島康介選手のコーチだった平井氏も「うまく泳げたときのイメージを覚えておくことが大事。なぜなら必ずスランプが訪れるから」とおっしゃっていたのを思い出した。

自分の成功パターンを覚えておいて後々振り返ることは、自分のノウハウを確立する上でも、また、落ち込んだときに自分を元気づけるためにも重要になる、と思った。

出所:大村はま『新編 教えるということ』ちくま学芸文庫
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『新編 教えるということ』(読書メモ)

大村はま『新編 教えるということ』ちくま学芸文庫

伝説の国語教師、大村はまさんの「教師論」である。僕も教師のはしくれなので、本書を読んで大いに反省するところが多かった(大学の教員は、自分が教師だと自覚していない場合が多いが、自分もその一人である)。

とにかく、はまさんは厳しい。本書には「教師はプロたれ!」という信念がみなぎっている。

では、プロの教師とはどのような人なのか?本書を読んで感じたことは以下の三点である。

第一に、子どもを尊敬すること。

「「この子は自分なんかの及ばない、自分を遠く乗り越えて日本の建設をする人なんだ」ということを、授業の中で見つけて、幼いことを教えながらも、そこにひらめいてくるその子の力を信頼して、子どもを大事にしていきたいと思います」(p.68-69)

第二に、子どもが生きていく力を身につけさせること。

「教師としての子どもへの愛情というものは、とにかく子どもが私の手から離れて、一本立ちになった時に、どういうふうに人間として生きていけるかという、その一人で生きていく力をたくさん身につけられさえすれば、それが幸せにしたことであると思いますし、つけさせられなかったら、子どもを愛したとは言えないと思います」(p.108-109)

第三に、教師自身が伸びたいと思っていること。

「伸びたいと切に思っていない人、伸びようと努力しない人は、子どもからは無縁の人だと思います。子どもとは、もはや、たいへん違った世界にいる人という気がします。」(p.153)

これらの条件は、教師だけでなく、、管理者、コーチ、親など、人を指導する立場にいる人すべてに当てはまるような気がした。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

心を尽くし、魂を尽くして求めるならば

心を尽くし、魂を尽くして求めるならば、あなたは神に出会うであろう
(申命記4章28節)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『山の郵便配達』(映画メモ)

先日、東北に津波が襲ってきたとき、ある郵便配達の方がとっさに手紙類を抱えて庁舎の屋上に避難した、というニュースをやっていた。これを見て思い出したのが、映画『山の郵便配達』(フォ・ジェンチイ 監督)。

観たのは10年くらい前。しかし、「プロフェッショナルとは何か」ということを考えるとき、必ずこの映画を思い出す。

舞台は、中国の山間地帯。車が使えないこの地域では、徒歩で郵便を配達しなければならない。足が悪くなったため、配達人である主人公は、息子に仕事を引き継ぐことになる。山を歩き、家族や知人からの便りを待ちわびている人に手紙を届ける主人公と息子。

この映画のなかで強烈に印象に残っているのは、ある一通の手紙が風に飛ばされそうになる場面。痛む足をかえりみず、目を見開き、手紙を追いかける主人公。スローモーションで撮られたそのシーンが忘れられない。

一つ一つの手紙に込められた思いを大事にする配達員の姿勢に、真のプロフェッショナルを感じた。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 前ページ