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道徳心を保つ

多重知能論を唱える認知心理学者ハワード・ガードナーは「ビジネスマンは道徳心を失いやすい」と述べている。

なぜか?

それは、一般的なビジネスの組織において、倫理規範が組み込まれていないからだ。

医師、法律家、建築家といったプロフェッショナル達は、長期間のトレーニングを経て免許が与えられ、道徳基準に沿って行動しないと、職業団体から追放されてしまう。しかし、通常の企業には、そうしたものはない。

では、道徳心を保つためには、どうすればいいのか?

ガードナーはいくつかのアドバイスをしている。

まずは、ときおり時間を取って、自分の使命について深く考え、自分の行動を振り返ることである。ふと立ち止まり、一人になって考えをめぐらす時間を確保することが大切になる。

次に、お手本になる人物から感化を受けたり、反面教師となる人物から教訓を引き出すこと。

そして、忌憚のない意見を述べてくれる社内のアドバイザー、ビジネスとは関係のない親友の意見に耳を傾けること。

要は、適切なアドバイスをしてくれる他者との関係を大切にしながら、振り返るための時間を確保することが、道徳心を維持するために必要となるのだろう。

逆に言うと、忙しすぎて振りかえる時間がなかったり、自分のビジネスに関連する人々とばかり付き合っている人は「危ない」といえる。

ガードナーは、知性を4つに分類している。すなわち、専門技能のような「鍛錬する知性」、多様な情報を体系的にまとめる「総合する知性」、新しいアイデアや革新を起こす「創造する知性」、他者を理解し関係を築く「尊重する知性」である。

このうち、道徳心は「尊重する知性」をより拡大したものだという。

真のプロフェッショナルとは、この尊重する知性が発達している人のことだと思った。

出所:Howard Gardner「ビジネスマンは道徳心を失いやすい」Diamond Harvard Business Review, January2008, 120-128.

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『そうか、もう君はいないのか』(読書メモ)

大学生のころ、城山三郎さんの「男子の本懐」「毎日が日曜日」を読んだが、とても面白かったのを覚えている。中学生のときは、大河ドラマの「黄金の日々」が流行っていた。

その城山さんは、2000年に奥様である容子さんを亡くした。そして、ご本人も昨年79歳で他界している。容子さんのことを綴ったメモや原稿を、編集者の方がまとめたものが本書である。

城山三郎著『そうか、もう君はいないのか』(新潮社)

まず、題名がすごい。このタイトルを見ただけで、城山さんの奥様に対する愛情が伝わってくる。

本書は、容子さんとの出会い、文壇にデビューしたときのこと、容子さんとの海外旅行の思い出、そして容子さんの発病と死について書かれたものである。淡々と思い出が綴られているのだが、「人間、城山三郎」がじわっと伝わってくる。

次女紀子さんによれば、奥さんが亡くなってからの城山さんは、抜け殻のようになってしまったという。眠れず、食べられないため、赤ワインのみで命をつないでいたらしい。

城山さんは容子さんと一体となって、小説を書いてきたのだろう。

城山さんは次のように語っている。

「容子がいなくなってしまった状態に、私はうまく慣れることができない。ふと、容子に話しかけようとして、われに返り「そうか、もう君はいないのか」と、なおも容子に話しかけようとする。」

ただし、本書に暗さはない。容子さんとの楽しい日々が、自然体で語られている。城山さんがとても幸せな人生を送ってきたことがわかる。

なお、個人的にウケたのが、ペンネームの由来。城山という所に三月に引っ越したから「城山三郎」にしたらしい。

若い頃に空手を習っていて、庭につるしたサンドバックを突きまくっていた、というのも意外だった。

容子さんと出会ったとき「天から妖精が落ちてきた感じ」と表現していたのにも驚いた。城山さんにとって容子さんは、ずっと妖精だったのだ。

どうでもいいところにばかり目がいってしまったが、夫婦関係と仕事について、とても考えさせれた一冊であった。
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わたしはぶどうの木で、あなたがたは枝です

わたしはぶどうの木で、あなたがたは枝です。人がわたしにとどまり、わたしもその中にとどまっているなら、そういう人は多くの実を結びます。』
(ヨハネの福音書15章5節)

これはイエスの言葉である。イエスの言葉に従う者は、充実した人生を送ることができる、ということだろう。
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人間関係への投資

卓越したサービス品質で有名なサウスウエスト航空は「従業員第一、顧客第二」主義として知られている。その特徴は、人間関係への投資である。

同社の役員の言葉が印象的である。

「企業は、従業員の力と同じだけしか強くはなれません。」

「我々は、ほかのどの航空会社よりも採用と訓練にお金をかけています。」

「優れた従業員がいれば、長期的にはコスト効率が高いのです。」

「サウスウエスト航空には従業員を励まし、指導し、まとめていく管理職が大勢います。それが家族的な雰囲気を生んでいるのです。」

「我々は目標を忘れませんし、従業員にも忘れさせないようにしています。従業員には四六時中、徹底的に語りかけることが必要なのです。」

優れた素質を持つ社員を採用し、徹底的に訓練し、絶えず語りかける。単純であるが大切なことを粘り強く実施し続けることが、優れたサービスを生む、といえる。

出所:Diamond Harvard Business Review November2007, 152-154.(Jody Hoffer Gittell, サウスウエスト航空:従業員に投資する経営)

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勝負は経営と同じ

女子バレーチームを五輪2大会連続5位に導いた柳本昌一監督は、「勝負は経営と同じ」という持論を持つ。以下は、監督の言葉。

「まず全日本女子の問題点を浮かび上がらせる。そして、目標を定め、目標を達成するために必要な戦略を選手と共有していく。後は愚直に実行していくだけ」

シドニー五輪に出場できなかった全日本女子チームは、すっかり負け犬根性が染み付いていたという。柳本氏は、「五輪でメダルを取る」という目標を掲げた。

そのために取り組んだのは、選手の選抜。強豪チームや実績に関係なく、潜在的能力の高い選手を選んだ。

次に、戦略。海外チームと同じ戦い方をしていては体力負けする。柳本監督が選んだのは「素早く変化に富んだ攻撃を武器にする」という戦略。そのための鍵は、正確なレシーブとトスができる選手。

ただ、女子選手の指導は難しい。東洋紡の女子チームの監督になった際、男子選手と同じ「俺について来い」式の指導をしたところ、24人中20人が辞めてしまったという。

柳本氏いわく

「女子選手は指導内容より人を見る。満遍なくコミュニケーションを取ることなどを心がけてからは、指導しやすくなった」

その後、Vリーグにて東洋紡は2度の優勝を果たす。このときに学んだ事は、五輪代表チームの指導にも生かされた。

柳本氏のすごいところは、挫折から学んでいる点。自身が代表となったモントリオール5輪でメダルを逃した悔しさ、東洋紡の突然の廃部、全日本女子監督就任当初のチーム低迷など、数々の失敗から監督としてのスキルを磨いてきた。

経験からの学習能力がずば抜けて高い、といえる。

その秘訣は、たぶん「内省」。

なぜ上手くいかないのか、なぜ失敗したのか。それを修正して、次に生かす。地道な積み重ねによって監督としての能力を高めてきたのだろう。

出所:日経ビジネス2008年8月4日・11日号、103-104ページ。
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MOYAという手法

NTTデータは、関係者が納得する情報システムを作り上げるための「MOYA(モヤ)」という手法を開発したらしい。

MOYAとは、モヤモヤしたものをはっきりさせるという意味がある、とのこと。

MOYAは3つの段階から成る。

第1に、業務や事業に関わる利害関係者に課題や不満を直接聞く。

第2に、業務や事業が本来目指すべき共通の目的や目標を洗い出す。

第3に、最初に聞き出した課題や不満をなぜ関係者が持っているのかを考えて、真の目的を検討し直す。

この手法の面白いのは、まず関係者に話を聴くことから始めるところ。通常は、共通の目的を話し合ってから、話を聴くパターンが多いように感じる。

「まず関係者の話を聴く」ことで開発者の先入観が入りにくい効果があるように思う。MOYAを使うことで「ユーザーを起点とした発想」が可能になるのではないか。

出所:日経産業新聞2008.12.19
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『ローマから日本が見える』(読書メモ)

「ローマ人の物語」でおなじみの塩野七生氏が書いた『ローマから日本が見える』(集英社文庫)を読んだ。

塩野さんは、なぜローマにこだわるのか?

「古代ローマはなぜ千年も続いたのか?」という疑問を十代の頃に抱いたからだという。50年を越えて追求できるテーマを持てることは、とても幸せなことだ。

古代ローマが千年も続いた理由として、二つのことが印象に残った。

第1に、「敗者も同化する政策」。

戦争で負けた国も、自分たちの仲間として迎え入れ、自国民と差別しない。王様を選ぶときにも、生まれや家柄など気にしない能力主義をとる。あのカエサルも、敗者の国の出身である。

第2に、長い時間をかけて「少しずつ改革を積み上げていく」手法。

じっくりと変革を進めていくスタイルは、ローマ人がもともと農耕民族だったこととも関係しているらしい。彼らは、一つ一つの課題を優先順位にしたがってクリアし、「組織として動く国」を作っていった。

心に残ったのは、カエサルによる次の言葉。

「どんなに悪い事例とされていることでも、それが始められたそもそものきっかけは立派なものであった」

悪の根源のように言われている「官僚の天下り」や「道路公団」も、当初は、「官民一体による国際競争力強化」「日本全国の道路ネットワークの構築」という立派な目的があった、という説明に納得した。

善が時間を経るにしたがって悪に変わっていく。その原因は環境変化である。

「大切なのはまず自分たちが置かれている状況を正確に把握した上で、次に現在のシステムのどこが現状に適合しなくなっているのかを見る。そうしていく中で「捨てるべきカード」と「残すべきカード」が見えてくるのではないかと、私は考えるのです」

という塩野氏の言葉は、個人や組織の学習を考える上でも参考になる。
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人はそれに気づかない

『なぜ、あなたは神と言い争うのか。自分のことばに神がいちいち答えてくださらないといって。神はある方法で語られ、また、ほかの方法で語られるが、人はそれに気づかない。
(ヨブ記33章13-14節)

神様はいろいろな方法で私たちに語りかけてくれるけれども、私たちはその多くに気づかないのだろう。
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社員を突き放せ

トリンプジャパンの元社長、吉越浩一郎氏は、人材育成に悩む経営者からアドバイスを求められると、次のように答えるという。

社員を突き放せ。ホウレンソウ(報告、連絡、相談)なんかやっているから部下が育たないんだ」

細かいことまで上司が指示を与えていては若手が成長する機会を奪ってしまう、とのこと。メンター制度やコーチングなど、いつでも頼れる先輩がいるのはいいが、「自分以外に頼る人間はいない」という修羅場を経験しないままだと成長しない、と論じている。

その通りだと思う。経験学習の調査をしていると、人は「自分だけが頼り」という状況の中で学んでいることがわかる。ただし、突き放してばかりでも人は育たない。考えなければならないことは2つある、と思う。

一つは、キャリアの段階。独り立ちできるようになる3-5年目からは、自分で判断する機会を増やすべきだろう。

二つ目は、メンターやコーチングのあり方。よいメンターやコーチは、後輩や部下に「自分で考えること」を促す。

「社員を突き放す」ことと、「社員を気にかける」ことのバランスをとることが大事だと思う。

出所:日経ビジネス2008.12.15, p124.
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提案営業で技術を磨く

電子部品向けの微細メッキで世界シェア50%を誇る「ニシハラ理工」。その特殊なメッキ技術は提案営業から生まれるという。

まず、携帯、半導体、自動車といったさまざまな顧客から悩みを聞く。そうした問題に対する解決策を提案し、試作品を作り、認められれば受注となる。

ポイントは「後工程の削減などでトータルコストを下げること」。メッキの加工料が上がっても、全体の製造コストを下げる工法の提案ができれば受注につながるのである。

同社のノウハウの一つは、「SPS」と呼ばれる錫(すず)メッキ技術。現在、新たな技術を開発するために5件の大型開発案件が進行中であるという。

現場の問題解決を通して製品や技術を開発していくニシハラの事例は、センサーメーカーであるキーエンスの経営手法を思い出させる。

営業と技術が一体になって難易度の高い仕事に取り組み、計画的にコアコンピタンスを増強していくことが組織学習を促しているのだろう。

出所:日経産業新聞2008.12.10
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