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ケースメソッド授業(4)

自分の知っている事例を、経営学の理論に当てはめる演習も今回が3回目。だいぶ慣れてきたようだ。8割以上の学生が「だんだん事例を思い浮かべることができようになってきた」とコメントしている(分析シートの感想欄)。今日の理論は「業界構造分析」と「アンゾフの製品・市場マトリックス」。

世の中には儲かっている業界とがんばっているのに儲からない業界がある。そうした業界の魅力度を判断するためのツールが「業界構造分析」だ。1年生にはこの分析は難しいだろう、と思っていたが、予想に反して「面白い」「わかりやすい」という反応が多かった。この分析をすると、社会の構造のようなものが見えてくるからかもしれない。

「では、この理論に事例を当てはめてみてください」という指示があると、サラサラと書き出す学生がいる中で、「うーん」と腕を組んでなかなか分析が進まない学生もいる。事例がなかなか思い浮かばないのである。コメントの中に面白いものがあった。「困ったときのコンビニ・ケータイ業界。とても助かるが、これらの業界に頼らないのが理想」という意見。普段から新聞やテレビのビジネス情報を収集することが大切になる。

ディスカッションはスムーズにできるようになったという意見が多かった一方で、二つの壁にぶつかっているようだ。一つは、「互いの意見を発表した後に、議論を深めることができない」こと。もう一つは、「とりあえず分析してみたが、なぜこうなるのか深い理由を考えるのが難しい」ということ。これら2つの問題は互いに関係しあっていて、ワンランク上の議論をする鍵となるだろう。

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罪のないものが石を投げなさい

『あなたがたのうちで罪のない者が、最初に彼女に石を投げなさい。』
(ヨハネの福音書8章7節)

ある者がイエスを陥れるために、姦淫の場で捕らえられたひとりの女性を連れてきて、「モーセの律法(旧約聖書で定められた十戒)では、姦淫を犯した者を石で撃ち殺しなさいとあるが、あなたはどう思うか?」と問うた。上記の言葉は、その場面で、イエスが口にした言葉である。

これはすごい言葉だと思う。私たちは、いろいろと他人を批判するが、結構自分も同じようなことをしている。同じような罪を犯している人間に他人を裁く権利はない。裁けるのは神様だけである。

「でも、そんなこといったら誰も批判できなくなってしまうのでは?」ということになる。少なくとも「自分も同じだよな」と思いながら「ちょっとまずいんじゃないの?」とアドバイスする姿勢が大切なような気がする。なかなか難しいけれども。


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読書メモ「仕事が人をつくる」(小関智弘著)

小関智弘著「仕事が人をつくる」(岩波新書)は、社会の中での「学び」について多くの洞察を含んだ良書である。研削、金型、望遠鏡、瓦、染色、歯科技工、大工、布団、椅子、山師(空師)など、10人の職人のこだわりや哲学が生き生きと描かれている。著者の小関さん自身が旋盤工であることも、この本の「深さ」と関係していると思う。

日本人の強さ、日本企業の強さは、粘り強く探究心の強い職人気質ではないかと常々思う。最近は、「職人気質だけではダメだ、もっと戦略的に物事を進めないと利益があがらない」と言われる。それはそのとおりなのだが、やはり日本人の核となる強みを失ってしまっては、何も残らないだろう。

この本の中で印象に残ったことが3つある。

第1に、良い職人は良い教育者であるということ。「技は盗むもので教わるものではない」という通説は間違いである、と著者は断言する。優れた職人は「自分を越えるような職人を育てられないようじゃ、半端職人だ」と言い伝えてきたという。

第2に、良い職人は、自分で考え工夫する。だから常に進化している。ある瓦職人の言葉が心に残る。「仕事する前によく考えろ。これが父親の口癖でね。考えもなしに仕事するから行き詰っちまうんだって。」ある精密測定機器のメーカーでは「最初は千分の一ミリの測定器を作ったんですよ。ずいぶん苦労したんだけど、次に一万分の一を作りました。大手さんがすぐ真似するんですね。それで頭にきて、十万分の一の精度の測定器を作って、大手さんの一万分の一のと同じ値段で幕張メッセに出品しました。びっくりしたようですよ。いま、うちでは百万分の一に挑戦しています。」

第3に、良い職人はデジタル化や自動化をも使いこなす。業界によって違うかもしれないが、自分の技術を科学的・体系的に分析し、プログラム化・機械化してしまう職人がいることを知って、少し驚いた。ただ「デジタル化、標準化を進めると、職人が育たない」のも事実らしい。機械やマニュアルに使われるのではなく、道具として使っていく姿勢が大切なのだろう。

このように、超一流の職人は「常に挑戦して新しいものを生み出し、技術を見える化して、若い人を育てている」。日本を支える職人の生きざまから、学びの本質について教えられた。

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問題解決型の授業(4) 解決策を考える

企業の現場をリサーチする前に、「問題解決の手法を学んでおこう」というのが今回の授業の目的。いわば本番前の予行演習。商大の学務課(学生にサービスをする部署)が抱える問題を勝手に解決してしまうという内容だ。

先週は29のチームごとに、「重要かつ緊急な問題点」を見つけたが、今週は「どうしたら解決できるか」というアイデアを出すのが課題。まずは、個人個人で思いつく限りの解決策をノートに書く。次に、チーム内で発表して、アイデアを共有する。その後で、解決策を「効果高い⇔効果低い」「実施が難しい⇔実施が簡単」という4つのセルに入れていく。そして、「効果が高くて、簡単に実施できる解決策」について深く話し合うという手順をとる。

1時間ほどこうしたグループディスカッションをした後、3つのチームに発表してもらった。ここであるチームの発表内容を紹介しよう。このチームが取り上げたのは「聞きたいことがあっても職員の人に聞きにくい」という問題。解決策としては「職員全員にネームプレートをつけてもらう」「各担当者が必ずいる時間帯を表にして貼っておく」「いつもシーンとしていて入りづらいので、BGMを流す」など。

この発表に対して、他のチームから「こんな解決策もあるよ」という意見を出してもらった。「総合案内窓口のようなカウンターを作ったらどうか」「怖い顔のおじさんもいるので、ネームプレートにかわいい動物のシールをつけたらどうか」「カウンターに座る人の人選をしっかりして、やさしそうなお姉さんを配置したらどうか」「ファンシーな内装にして雰囲気をやわらかくしたらどうか」「呼び鈴のようなもの置いたらどうか」などなど、たくさんアイデアが出された。

全体のディスカッションで他のチームから出されたアイデアについて、発表チームからは「実はうちのチームでも話しあったのですが、発表しませんでした」というコメントがあった。どうも「実施が難しい」という理由ではずされたアイデアの中にキラリと光るものがあるようだ。「効果が高いが、実施が難しい解決策」と思い込んでいるがチョット工夫すれば「実施しやすい」アイデアに変わることがある。議論する際、この点に注意してほしい。

授業後、今回28チームが考えた問題解決策を学務課の課長に渡し、後日「どのように生かされたか」について報告してもらうことになった。

来週は、いよいよリサーチの手法を学ぶ。
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ケースメソッド授業(3)

今日の授業も「経営学の理論を事例に当てはめる」という演習をおこなった。参加している学生は、経営学をほとんど知らない1年生。個人やグループで、具体的事例を理論に当てはめて考える。扱った理論は次の3つだ。

・マーケティングミックス
・プロダクトポートフォリオ
・ポーターの基本戦略パターン

授業では、説明をして理解するだけでは面白くないので、これらの理論を道具として使ってもらうことを重視している。「そんな理論知っているよ」という人でも「じゃ、使ってみてください」というと意外に戸惑うことが多いのではないか。

まず初めはマーケティングミックス。この概念は、製品やサービスを提供する際に、いかに「製品特性、価格、立地・チャネル、宣伝、接客、施設・陳列」を組み合わせるかという考え方。セブンイレブンとローソンのマーケティング・ミックスを「良い○、普通△、悪い×」で評価してもらった。これは、皆スムーズに分析できていた。

次は、プロダクトポートフォリオ。会社はいろいろな事業を持っているが、それぞれの事業を「市場の魅力度(市場成長率)」と「事業の優位性(市場シェア)」という2つの軸で作られる4つのセルに位置づけるというもの。会社全体の戦略を考えるときに使われる。

演習では、「花形、金のなる木、問題児、負け犬という名前がついている4つのセルに当てはまる会社を考えなさい」という課題を出した。通常のビジネスだとわかりにくいので、身近な大学生協の事例を使った。小樽商大の生協には、学生食堂、文具、書籍、食品、旅行といったコーナーがあるが、これらをポートフォリオに当てはめるという演習。人によって分析が異なるが、その根拠を考えることが大事になる。

最後は、基本戦略パターン。事業レベルの戦略を考える際に重要となる。ポーターによれば、競争に勝つためには「低コスト」で運営するか、ユニークな商品・サービスを提供する「差別化」という2つの戦略がある。これに加えて、ターゲット顧客を絞った「コスト集中」「差別化集中」がある。

発表してもらったのは「アイスクリーム」と「焼肉」。ある女子学生は、「よく安売りしているスーパーカップなどは低コスト、ハーゲンダッツは差別化、秋田で売られているババヘラアイスは差別化集中」という説明をしてくれた。焼肉の事例も、小樽・札幌地域の焼肉屋さんをうまく分類していた。

今回が3回目の授業だが、「ディスカッションがスムーズにできるようになった」「難しいが、考えるのが楽しい」という意見が目立つ。「事例がなかなか思いつかないので、日経新聞やワールドビジネスサテライトを見たり、普段から経営を意識して会社や店を見るようにしたい」という声もあった。まさに、経営学は「使ってなんぼ」の理論なので、普段の生活の中でどんどん使ってほしいと思う。

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ほかの人にもそのようにしなさい

『何事でも、自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい』
(マタイの福音書7章12節)

この御言葉は、聖書の「黄金律(ゴールデン・ルール)」として知られ、キリスト教倫理の最高峰といわれているらしい。あの分厚い聖書の最高峰のことばが、「自分のことばかり考えないで、他人のことも考えなさい」ということだと知ったとき、正直なところ、意外に感じた。

ただ、プロフェッショナルの研究をしていると、真のプロフェッショナルと思える人は、自分のことばかり考えるのではなく、お客さん、友達、社会などのことを真剣に考えている人が多い。また、本当にすばらしい会社は、自社のことだけでなく、顧客や社会のことを考えている。そういう意味では、上記の御言葉は、個人や組織の学習にとって、とても大事なことを教えてくれているように思える。

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問題解決型の授業(3) 問題解決の予行演習

問題解決型授業の3回目。3つの企業から出された課題に取り組むチームが決まった。全部で29チーム。1チームはだいたい4~5名。教室では、チーム毎に席に座る。

今日のテーマは、「問題解決の方法を学ぶこと」。あたりまえのことだが、問題を解決するには、「問題を発見」して「解決策」を考えなければならない。さらに、問題を発見するには「①データを収集し→②いろいろな問題点をあきらかにして→③重要な問題を絞り込み→④問題が生じた原因を考える」ことになる。次に、「⑤解決のためのアイデアを出して→⑥効果が高い解決策を選び→⑦実行プランを策定する」というステップに沿って解決策を検討する。

説明を聞いただけでは問題解決の力が身につかないので、「小樽商科大学の学務課サービス」を題材に演習をすることになった。これは、企業から出された課題に取り組む前の「予行演習」である。このとき注意しなければならないのは、「文句大会」にならないこと。また、「自分たちが大学の職員になったつもりで考えること」が大事になる。

さっそく演習の開始。今日は問題解決の前半部分である「問題点の発見」の演習をする。演習では、「個人分析→チーム・ディスカッション」を繰り返す。大学でつねづね感じている不満がいろいろと出てくる。掲示板の見やすさ、学生課の職員の対応、ウェブ上の履修使いやすさ、休講情報などなど。

まずメンバーが考えた問題点を発表しあい、それを重要性(高・低)と緊急性(高・低)のマトリックス表に整理する。このとき、重要性と緊急性がともに高い問題の中から、チームで取り組む問題を特定する。次にやるべきことは、「なぜそうした問題が起こるのか?」を考えること。

例えば、「重要な情報が掲示板にない」という問題に対して、「学生と職員の認識にギャップがある」「情報の見せ方が悪い」「情報を受け取ってから掲示するまでのスピードが遅いのではないか」などの原因をグループ化し、フィッシュボーン(魚の骨)と呼ばれる図に落とし込む。ここまでが、今日の授業だ。来週は、こうした問題をどのように解決するかについて考えるのが課題だ。
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ケースメソッド授業(2)

今日のテーマは、「競争地位別戦略」「市場細分化とターゲット設定」「製品ライフサイクル」。授業は、演習が中心だ。3つのテーマについて、それぞれ「講義5分、個人演習10分、グループディスカッション10分、発表5分」という形を3回繰り返す。今日の演習は、自分でケース(事例)を思い浮かべて、グループで話し合うというもの。

まずは、競争地位別戦略。課題は、「各業界において「リーダー」「チャレンジャー」「フォロアー」「ニッチャー」に当たる企業を考えなさい」というもの。学生は、ジーンズメーカー、ブランドバッグ、パチンコ店、スーパーマーケットなど、いろいろな業界に当てはめて考える。市場シェアなどのデータがないので、イメージに基づいた分析になってしまうが、大事なことは理論を実際に使ってみること。頭だけで理解していても、身につきにくい。

市場細分化とターゲット設定で発表してもらったのは、女性雑誌について考えた女子学生。まず、「中学生、高校生、大学生、社会人(20代)、社会人(30代)」という世代の軸と、「お姉系とカジュアル系」ライフスタイルという2つの軸で細分化し、その上に「seventeen, junie, vivi, ジル, cancan, very」といった雑誌を振り分けていた。僕にはよくわからない世界だが、うまく分析されているように思った。

製品ライフサイクルも、「導入期、成長期、成熟期、衰退期」に当てはまる製品やサービスを考えてもらった。例えば、ペン関係の製品でいうと「電子ペン→特殊加工ペン→普通のシャーペン→えんぴつ」という具合に、ライフサイクルを描く。

ディスカッションが今日で2回目だった1年生は、「前回よりもスムーズに話せた」「苦手なディスカッションが少し上手くなったと思う」「意見が自然に出た」という感想もあれば、「次は負けたくない」「たまには反論したい」「もっとやわらかく考えたい」「もっと視野を広げたい」という意欲にあふれる意見もあった。これからの成長が楽しみである。
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成長の4原則

成長の4原則

私は大学院で「顧客志向経営」という授業を担当している。今日、この授業で、日本経営品質賞を受賞したネッツトヨタ南国(旧トヨタビスタ高知)のビデオケースを見た。印象的だったのは、「成長の4原則」。この会社では、社員が「自分で考え」、「発言し」、「行動し」、そして「反省する」ことを重視している。横田社長によれば、この4つのサイクルがPDCAのように回っているとき、社員は「成長している」と感じ、仕事に対する「やりがい」や「意欲」が高まるという。

ビデオの中で、もう一つ印象に残った言葉がある。「競い合うことは悪いことではない。しかし、ある一つの基準(売上)だけで競うと成長を阻害するし、バランスが狂う。いろいろな観点で競い合うことが大事です。」ネッツトヨタ南国では、いろいろなプロジェクトが立ち上げられ、社員が自主的にアイデアを出す機会がたくさんある。その中で、自分で考えて、発言し、行動し、そして反省する。その成果を競い合うのだ。

例えば、同社では、地域イベントを開催することで顧客との関係性を強化しているが、そのイベントも社員が自発的に考える。ショールームを担当しているスタッフも、常に業務改善のアイデアを出す。定期的に実施している顧客満足調査の内容や方法も、いろいろな部門の社員が集まり考える。こうした活動が積み重なって、「社員が自主的に考えて行動する組織」が作り上げられている。

「自分で考え」、「発言し」、「行動し」、そして「反省する」という成長の4原則のうち、私は「自分で考える」というところが重要だと思う。情報があふれる中、私たちは、本や他人に頼ってしまい、自分で考えることが意外に少ないのではないか。自分で考えて、それを声に出して、実行し、反省する。要は、こうした機会をたくさん提供することが、人を成長させ、顧客を満足させ、業績を高めることにつながるのだろう。



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自分の心を治める

『怒りをおそくする者は勇士にまさり、自分の心を治める者は町を攻め取る者にまさる。』 (箴言16章32節)

これは、旧約聖書の箴言にある言葉。「怒りをおそくする者」「自分の心を治める者」とあるのは、感情的にならず、自分をコントロールできる人を指しているのではないか。いわゆる、自己管理ができている人だろう。心理学的にいうと、メタ認知能力に優れている人でもある。メタ認知能力とは、自分の気持ちや行動を客観的に眺めることができる力。感情に流されることなく、冷静に自分を統制する能力は、仕事や勉強においても大切である。


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