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エンカウンター

昨日は、サービスマーケティングの授業の3回目だった(正式な授業名は「顧客関係管理」)。

テーマは「サービスエンカウンター」。

エンカウンターとは、サービスを提供する側と受ける側が出会う状況のこと。例えば僕たちがレストランに行くと、「待合室で待つ」「席に案内される」「メニューを見る」「注文をする」…といった、さまざまなエンカウンターが存在する。

それぞれのエンカウンターの質次第で、僕らは満足したり不満を抱いたりして、また利用するかどうかを決める。だから、企業側はエンカウンターを管理することが重要になる。

授業では、「コンビニ」を事例として、満足・不満足を決定するエンカウンターは何かについて、グループ演習をした(クリティカル・インシデント・テクニックと呼ばれる方法を用いた)。

面白かったのは、「満足させるのは品ぞろえなどだが、不満にさせるのは接客」という発表があったこと。ある学生は「ハーズバーグの2要因理論(職務満足につながる要因と不満足につながる要因は異なるとした理論)と似ている」とコメントしていたが、なかなか鋭い。

この他、人との接触が多いハイコンタクトサービスと、接触の少ないローコンタクトサービスについて学び、「ハイからローへ移行した事例」「ローからハイへ移行した事例」を考えてもらった。

コンタクトの度合をどうデザインするかは、サービスを差別化したり低コスト化する上で重要なポイントとなる。演習を通して、時代の流れは、ローコンタクト化の方へ向かっていることがわかったようだ。これも情報技術の発達によるところが大きいのだろう。
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理念で再建

小樽で有名な洋菓子店「ルタオ」を経営する寿スピリッツは、傾いた菓子メーカーをいくつも再建してきた実績を持つ。不況真っただ中の2009年3月期、同社の業績は、売上高175億円、経常利益13億円。

再建の鍵は何か?

社長の河越氏いわく「理念ですよ。そこからやるしかないんです」。実績があるだけ、次の言葉は説得力がある。

「理念を大事にすれば、長期的に見れば『得』なんです。事業を見る時間軸を長く取れば、必ず理念と損得は一致します。」

しかし、理念を浸透させることは難しい。どのような方法をとっているのか?

同社における理念浸透の方法は「朝礼」である。ポイントは二つ。まず、理念を唱和したあと、社員が自分の体験に置き換えて語ること。次に、それを他者がほめること。

似たような試みは、顧客志向の高い企業で実施されている。その代表例はリッツカールトンホテルだ。寿スピリッツの良いところは、さらに、その場にいる他者が「ほめる」ということ。

他人をほめるということは、その人の体験をよく聞き、感情移入しなければならない。自分の体験を語るだけでなく、他人の体験にコミットすることは、理念を浸透させる上で効果的だ。

もちろん、理念だけで会社が再建できるわけではない。組織構造や業務プロセスもしっかりとデザインする必要がある。しかし、その中心に理念がなければ、制度に魂が入らず、なかなか機能しないのも事実である。

理念を浸透させ、「何のために仕事をするのか」を明確にすることは、社員のモチベーションや能力を引き出す力を持っているのだろう。

出所:日経ビジネス2009年4月20日号35-36p.
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この世の取るに足りない者

『この世の取るに足りない者や見下されている者を、神は選ばれました。』
(Ⅰコリント1章28節)
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僕のうつ人生(読書メモ)

谷沢永一著『僕のうつ人生』海竜社

日本文学の研究者であり、文芸評論家でもある谷沢永一氏の自伝である。

題名にあるように、谷沢先生は「うつ病」である。しかも、14歳のときから。しかし、その人生に暗さはない。むしろ、「うつ」をきっかけとして自分を高めている。

うつになると、仕事が手につかなくなるらしい。谷沢先生は、そんなとき仕事と関係ない本を読みまくる。それが蓄積し、後年、評論家としての幅を広げることになる。

この本を読んで強く感じたことは、いわゆる「不幸な出来事」をどう受け止めるかで、人生がポジティブにもネガティブにも変わりうる、という点だ。

私たちは、いろいろな病にかかったり、事故や災難にあったりするが、それをきっかけとして、今の自分を振り返り、前向きに受け止め、新しい道を切り開くことができる。そんな勇気を与えてくれる本である。

ちなみに、先生の人生そのものが、エキサイティングでとても面白い。
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半減目標とキーマン

業務改善が進んでいることで定評のあるキャノン電子。99年に1.5%だった同社の売上高経常利益率は2007年に14.1%に伸び、不況まっただなかの2008年の決算でも11.1%を維持している。

酒巻社長のリーダーシップによるところが大きいが、ポイントは2つあるようだ。

ひとつは、目標値をストレッチすること。

酒巻社長は「時間や生産スペース、エネルギー使用量、不良品など、あらゆる物事を半分に減らそう」と呼びかけたという。

10%や20%のコスト削減を目標にすると今までの延長線上の改善にとどまりがちだが、「半減」を目標にすると、根本から考え直さなくてはならない。

二つ目のポイントは、部署のキーマンの理解を得ること。酒巻社長は、コスト削減で要の部門から人望のある人を選び理解を求めた。キーマンを中心にすることで、職場の改善活動に勢いがつく。

トップ経営者が、組織の中核となる人材を取り込んで、思い切った目標に取り組むとき、大きな変革が可能となるのだろう。

出所:日経産業新聞2009.4.9(18面)
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大工さんとの協働

不況にもかかわらず14期連続で増収を記録している「アキュラホーム」は、坪単価30万円台で木造新築住宅を提供している。通常の半額である。この4月には、2階建て1LDKが550万円という「新すまい55」を発売した。

その秘訣は、工事の効率化

ドアをユニット化したり、外壁の高さを統一したり、柱の間隔を揃えることで、現場における大工さんの余計な作業を削っている。こうした積み重ねによって、最新の製品の場合、工期が90日から45日へと短縮したという。いわゆる標準化である。

面白いのは、こうした効率化のアイデアが大工さんから上がってくること。現場の大工さんからの不満に耳を傾け、アキュラホームはそれを改善する仕組みを作る。宮沢社長は、次のように語っている。

「大工の『手間賃(日当)』を削るのではなく、大工の『手間』を削る。」

通常、大工の手間賃の平均は14,000円だが、アキュラホームの場合は2万円前後と高い。これは、施工面積や作業時間によって手間賃を払うのではなく、総額で払うためであるようだ。

つまり、総額150万円の手間賃であれば、工期が短くなればなるほど1日当たりの手間賃は高くなる。作業を効率化するほど手間賃は高くなるので、大工さんの改善意欲も増すわけだ。

こうした発想ができるのは、宮沢社長が大工出身であることとも関係しているような気がする。

「建築コストを現場の大工に押しつけるようでは、低価格住宅事業は長続きしない」というのが宮沢社長の持論。

この考え方は、住宅メーカーに限らず、他の業界にも当てはまる。下請けいじめによってコストを下げるのではなく、下請けとともに協働して、仕組みを改善することが「コストリーダーシップ」戦略を実現するカギとなる。

アキュラホームでは、このほかに、現場への建材の配送をスムーズにするために情報物流センターを設け、ジャストインタイム化を導入したり、工務店向けに「シャープネット」と呼ばれる会員組織をつくり共同購入を進めコストを削減している。

ただ、最近、営業拠点への投資や工務店の倒産によって利益が低下しているらしい。効率性の追求だけでなく、将来に向けての投資やリスクマネジメントの体制を構築することが同社の課題であるようだ。

出所:『アキュラホーム:大工の改善力「550万円住宅」』日経ビジネス2009.4.20 p.50-52.
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あなたを捨てない

『わたしは決してあなたを離れず、また、あなたを捨てない。』
(ヘブル人への手紙13章5節)
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『経営に終わりはない』(読書メモ)

藤沢武夫著『経営に終わりはない』文春文庫

本田宗一郎とともにホンダを築き上げた藤沢武夫の自伝である。技術の宗一郎と、経営の藤沢が両輪となり「世界のホンダ」へと進化していくプロセスが生き生きと描かれている。

ホンダという会社を築くにあたり藤沢さんは次のように語っている。

「本田宗一郎は特別な人間です。だから、彼のような人物を育て上げようとしても無理です。それならば、何人かの人間が集まれば本田宗一郎以上になる、という仕組みをつくりあげなければならないということです。そうしなければ、この企業はひと様に迷惑をかけることになるでしょう。」(p104)

彼の経営哲学は奇をてらったものではない。当たり前のことをしっかり実行している点に特徴がある。

第1に、社会的な責任を重視する。藤沢さんは、困難に直面したときに、顧客、地域の人々、代理店との信頼を大事にする形で意思決定をしている。

例えば、爆発的に売れたN360に苦情が殺到したとき、その年の決算が赤字になることは覚悟で、全ての車をホンダの責任で修理している。

第2に、自分で考え、創ることを大切にしている。藤沢さんの信条は「たいまつは自分で持て」「人のふんどしで相撲をとるな」である。製品開発や販売店網を構築する際に独自の仕組みをつくった。

第3に、シンプルであること。藤沢さんいわく「私の経営信条は、すべてシンプルにするということです。シンプルにすれば、経営者も忙しくしないですむ。」(p150)

最後に、長期的な視点を持つこと。昭和38年、ホンダは四輪に進出したが、不景気の中、車が売れない状況が続いた。藤沢さんは当時を次のように振り返っている。

「せっかくつくり始めた四輪なのに、生産を中止しようかどうかというような状況だったから、みんな元気がない。私はあまり工場には顔を出さないものだから、かえって、たまに行くと、工場の空気がわかるんですね。」(p199)

藤沢さんは、この時期、将来のために設備投資をしている。「どうせ四輪をやるからには、設備がもっと必要だろう。好きなものを買ってくれ、金はなんとでもするから」と宗一郎に伝えたという。

藤沢さんが工場に行くときには、日は当たらないが将来のためにいろいろと試作をしている部門に行く。

「『どうだい、やってる?』というようなことで、一時間でも二時間でも、私は話しこんでくる。いま仕事のある華やかな職場には行きません。私がそんなとこに行ったってしょうがないんですよ。」(p93)

本田宗一郎と出会って25年目の昭和48年正月、藤沢さんは引退を告げる。そのとき、宗一郎は次のように語ったという。

二人いっしょだよ、おれもだよ」

会社のトップに立ち、最後までコンビでいられるケースは少ないように思う。多くの場合、ケンカ別れをしてしまうのではないか。

本書を読むと、藤沢さんの目を通して「本田宗一郎の凄さ」も見えてくる。
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シゴトダイエットで家族サービス

パナソニック電工は、重要度が低い仕事を廃止したり効率化することで労働時間を短縮する活動を開始しているという。その名も「シゴトダイエット」。

一人当たり年間50時間を短縮し、浮いた時間を家族サービスや新しい仕事に使うのが目的である。

各企業で実施されている業務改善であるが、その目的は「企業のため」というケースが多い。パナソニック電工の事例で興味深いのは、「家族のため」という位置づけがなされている点である。

仕事のベースは家族である。家族が不満を抱えていては、仕事に集中することもできない。仕事を効率化して、家族を大切にすることが、さらに仕事の生産性を上げる。こうした好循環があると業務改善も進むのかもしれない。

出所:日経産業新聞2009.4.9(18面)
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イメージしている自分の役割

俳優の本木雅弘さんのインタビュー記事を読んだ。その中で、アカデミー賞受賞後の騒ぎについて、次のように語っていた。

自分でイメージしている自分の役割をはみ出している

今の課題は「喜びと重みをいかに忘れていくか」であるという。過度の成功は自分を見失わせる危険をはらんでいる。過去の栄光にすがっている限り成長できない。

ただ、そのように自分を律することは、なかなかできることではない。本木さんは、自分を客観的に見つめるメタ認知能力が発達している人だと思った。

出所:DIGNIO p.25
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