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富がふえても、それに心を留めるな

富がふえても、それに心を留めるな
詩篇62章10節
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『仕事力(青版)』(読書メモ)

朝日新聞社編『仕事力(青版)』(朝日文庫)

先日紹介した『仕事力(白版)』に続く第二弾が本書。

今回もそうそうたる方々が仕事論を語っている。登場した15人の中でも圧倒的なパワーを感じたのは、映画監督の新藤兼人さん。

98歳の今も現役で「半世紀以上も映画を撮り続けてきて、まだ撮りたいテーマが尽きず、次の作品に対する不安もない」という新藤さんは次のように述べている。

「私のその仕事への自信はどこからくるのかと考えると、自分で自分の根っこがどこにあるかを知っているからだと思いますね。だから何も怖くないし、周囲に振り回されることもないのです。」

「私の実家は大きな農家でしたが、父親が知人の連帯保証人になって、すべての財産をなくし家族は離散しました。本来あるべきはずだった家や、家族との暮らしが失われてしまったために、私は今日までずっと、家とは何か、家族とは何か、生きるとは何かを問い続け、答えを探し求めています。それが私の根っこであり、今も、自分の家の小さな窓から懸命に社会を見ようとしている自分を強く感じますね。」

この箇所を読んで、自分の「根っこ」は何だろうか?と思った。それを自覚したとき、自分の仕事に意味が生まれ、何をすべきかがわかるのだろう。新藤さんは続ける。

「人生をさかのぼって思い出していくと、必ず今日のあなたを生んだ自分だけの根っこがあります。あなたの感じ方、価値観を作りだしているもの。それを見つければ少々のことではグラグラしなくなります。自分とは何か、まずしっかりとつかむこと。人間はいつもどこかに属していたいのですが、私は「自分に属せ」と言いたい。」

自分の使命をはっきりと自覚するとき、人は「自分に属す」ことができるのかもしれない、と思った。
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2段ロケット理論

五輪ハンマー投げで金メダルをとった室伏広治選手のお父上である室伏重信さんは、息子の指導について次のように述べている。

「彼が若い頃に、基礎は教えました。一定レベルまでは、その方が早く到達するからです。でも、その後は広治が自分で考えて練習しました。2段ロケットみたいなもので、最初はコーチの指導でドーンと立ち上がりますが、その先は自分の力で上昇していくしかないんですね。考え抜いて、より高いレベルに到達する方法を編み出していく。コーチが口を出せば、選手はアイデアを出そうとしなくなってしまう。」

「2段ロケットみたいなもの」というたとえが絶妙だと思った。師匠について基礎を学ぶことが1段目のロケットだとしたら、2段目のロケットは「自分で自分を鍛える」ことにあたる。

重信さんは「私は教えていないんですよ」とおっしゃっているが、1段目のロケット(基礎の教え方)と、その後の「見守り方」が優れていたのではないか、と思った。

出所:「「指導を受けない」効果 鉄球が教えてくれる」日経ビジネス2010年5月24日号118ページ。
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流れを読み、流れに乗る

先週の土曜日、ひさしぶりにNHKのトップランナーを見た。ゲストは冬季オリンピック・スケートの銀メダリスト、長嶋圭一郎さん。

「レース中に何を気にしていますか?」というMCからの質問に対して、長嶋さんは

「レース中の空気や流れは感じるようにしています」と答えていた。

これを聞いて、ゴルファーの諸見里しのぶさんも、同じようにプレー中に「流れを意識している」と答えていたのを思い出した。

流れを読み、流れに乗る。自分の力を発揮するタイミングを見極めることは、成果を出す上でも大切なことだと思った。
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天から与えられなければ

天から与えられなければ、人は何も受けることができない
(ヨハネによる福音書3章27節)
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『南方熊楠』(読書メモ)

飯倉照平『南方熊楠:森羅万象を見つめた少年』岩波ジュニア新書

眼光鋭い南方熊楠の写真はインパクトがある。その顔だけでなく、彼の生き方そのものが独創性に満ちている。

大学予備門を退学後、15年間アメリカとイギリスに留学し、独自の博物学を修める。学校という枠におさまりきらないため、すぐに退学し、自己流の研究をすすめる熊楠。

生計のために働くことはせず(実家の援助で生活)、嫌いな相手は徹底的に攻撃したり、大酒を飲んで暴れたりと、ほとんど子供のような人なのだが、好奇心・探究心は人一倍強い。

本書を読み、研究者としての熊楠はつぎの点ですごいと思った。

一つ目、先人の研究をしっかりと勉強するところ。熊楠の勉強法は、図書館に行って自分の好きな文献を抜き書きすること。さまざまな分野にわたってこれを徹底的に行う。

二つ目、本を読むだけでなく、森や川に出かけて、植物等を採取しているところ。いわゆる実地にデータを集めて分析する「実証研究」である。

三つ目、博物学、人類学、粘菌学、地誌、旅行記、動物学等、さまざまな分野を研究し、それらを「統合」しているところ。また、東洋の考え方を西洋の学問の観点から分析するなど、両者を融合するのが熊楠のアプローチだったようだ。

四つ目、自分の研究成果を『ネイチャー』等の学術雑誌にどんどん投稿しているところ。独学だと自己満足に陥りがちだが、熊楠は世界の一流雑誌を通して、自分の発見したことを世の中に広めている。

先人から学びながら、自らの足でデータを集め、自分の頭で考えて、独創的な知見を生み出す熊楠の姿勢に、優れた研究者のモデルをみた。
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何を残し、何を捨てるか

学習論において「アンラーニング」という考え方がある。要は、必要のないもの、古くなって使えなくなったものを「捨てること」である。これに関し、先日紹介した『仕事力(白版)』の中で、松井証券の松井道夫社長は、次のように述べている。

「禅に「坐忘」という言葉がありますが、人間は古いものをどんどん捨てて、忘れなければ新しいものは入ってこないと教えています。「捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」は、真実だと思います。(中略)激しく変化する時代の中では、捨てる物の優先順位をつけられるかどうかが最も重要だと思います。」(p.177-178)

コストのかかる人的営業を止め、ネット証券のビジネスモデルを生み出した松井氏ならではの考えだ。

人も組織も、ある段階まで来ると成長が止まってしまうことが多い。なぜなら、過去の経験やノウハウに固執してしまうからである。何を残し、何を捨てるか。この決断が、さらなる成長を遂げられるかどうかを決めるといえる。

出所:朝日新聞社編『仕事力(白版)』朝日文庫
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「あ、こっちだ!」と思える瞬間

櫻川米七さんは、日本で4人しかいない幇間(ほうかん)の一人。幇間とは、もともと遊興の酒間を幇(たす)くる者という意味で、お座敷遊びを楽しく盛り上げるために気を配り、旦那衆を持ち上げる役目を担う人らしい。「太鼓持ち」とも呼ばれる。

ただ、米七さんは、はじめから幇間を目指したわけではない。21歳のとき、落語家の柳家小さんに弟子入りするが、3年ほどたったある日、たまたま、「最後の幇間」と言われた悠玄亭玉介の芸を見る機会があった。

「その時、あ、こっちだ!と思ったんです」

と米七さん。

都々逸、小唄、三味線をまじえて、客と同じ座敷での軽妙な踊りやコミカルなフリをするところが落語とは違う。

「踊りの型というか、動きの面白さというか、様子がいいというか・・・・・ま、とにかくカッコいい!と思ったんです。」

と米七さんは述懐している。

自分の価値観に合うキャリアの転機は突然やってくる。そのとき「あ、こっちだ!」と思える瞬間があるということは幸せなことかもしれない。僕はもともと社会心理学を専攻していたが、大学院を出た後、民間の研究所で働いていたときに経営学やマーケティングと出会い、「こっちかな」と思ったことを思い出した。

出所:「太鼓持ちという生き方:櫻川米七」『ひととき』2010. Vol. 10, No.5, p.36-41.
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神よ、沈黙しないでください

神よ、沈黙しないでください
(詩編83章2節)
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『狂人日記』(読書メモ)

色川武大『狂人日記』講談社文芸文庫

他者と一体になりきれない、人間の自己中心性を強烈な形で描いている。ひさしぶりに骨太の小説に出会った。

主人公は幻聴、幻影に悩まされる50歳の男。病院に入院していたが、そこで出会った圭子に誘われて二人で生活をするようになる。彼女と一体になりたくて、なりきれない男はつぎのようにつぶやく。

「自分は、自分だけの世界にこだわるまい。いや、密室をぶらさげて歩いていればよい。」

「自分は、両親も、弟妹も、園子も圭子も、誰をも、本当に知らずに、また彼等にも知らせずに、ぽつんと生きてきた。それが、憎い。」

やがて、健常者に戻っていく圭子に捨てられ、孤独の中で生と向き合うラストシーンは圧巻である。

はじめは精神障害という特殊な状況に目がいきがちだったが、よく考えると我々も「自分だけの密室」を持っている。それぞれ違う世界観を持った者同士は、完全に分かりあえることはない。深いテーマだな、と思った。
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