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『パリ左岸のピアノ工房』(読書メモ)

T.E.カーハート『パリ左岸のピアノ工房』新潮社

パリの小さなピアノ工房で中古のピアノを手に入れた著者。それをきっかけに、彼の人生が輝きだす。工房の職人と交わるなかで、ピアノの奥深さと魅力にとりつかれていき、少年時代に習っていたピアノのレッスンを再開する。

僕は楽器を弾けないが、この本から「学ぶ喜び、表現する楽しさ」が伝わってきた。

心に残ったのは、著者がピアノの先生から送られた『弓と禅』という本のメッセージ。

「重要なのは集中力であり、学んでいく過程にこそ価値があるという。たとえどんなにささやかなものでも、新しい技術にはそれに固有の発見があり、満足がある。(中略)生徒は教師を尊敬しなければならず、厳格な上下関係を受け入れなければならない。」(p.142)

ピアノの先生いわく「あなたにもわかっているように、大切なのは姿勢なんです。」

優れた師との出会いと、学びの姿勢が人生を豊かにするんだな、と感じた。
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羽生さんのPDCA

昨日に引き続き、『仕事力(青版)』をパラパラ読み返していると、羽生善治さんの記事が目に止まった。「アマチュア時代から今日まで将棋の学び方は変わっていません。そのプロセスはシンプルに四つの段階を経ています」と述べている。

その四つのプロセスとは何か?

少し長くなるが、羽生さんの言葉を引用してみよう。

「最初にするのはアイデアを頭に思い浮かべること。次はこういう手を使って対局しようと新たな発想を考えるのです。
 そして次にそれがうまくいくだろうかとさまざまに検証していきます。盤に向かい、あるいは前例を調べ、自分が考え付いたアイデアを成功させるにはどうすればいいのか、徹底して時間をかけます。(中略)最初のアイデアで戦うためにこの検証のプロセスは非常に大切だと思います。
 そして実践に臨む。ところがどれほど検証して準備していても、相手は思わぬ手を指してくるんですね(笑)。そうなったら直感を信じて進んでいきます。
 対局が終わればまた検証です。相手や自分がどこでミスをしたのか、どの手を打ったからアイデアが生きたのか、あるいは失敗したのか、細部に至るまで明確にします。
 ずっと絶え間なくこの繰り返しで強くなれる。どの段階が抜けても、もろくなりますね。」

まさにPDCAサイクルである。

ただ、羽生さんのPDCAは、「P」に時間をかけるようだ。「アイデアを出す段階」と「アイデアを事前に検証する段階」に分かれている。そして、振り返りと改善である「CA」も徹底的に行っている。もちろん、対局である「D」も真剣勝負だ。

要は、たんにPDCAを回せばよいというわけではなく、それぞれの段階で、集中して全精力を注ぎ込むことが強くなる秘訣なのだろう。「どの段階が抜けても、もろくなりますね」という言葉が重い、と感じた。

出所:朝日新聞社編『仕事力(青版)』朝日文庫
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限界は自らが作りだす

僕は今年で46歳になるが、最近つくづく感じるのは、この歳になると成長が止まってしまいがちだということ。「もうこのへんでいいか」と思う気持ちと戦わなければならない。

そんなとき『仕事力(青版)』に掲載されている、武豊さんの記事を読み返した。2007年に通算3000勝を達成し、JRA歴代最多記録を更新中の武さんは次のように語っている。

「仕事の壁とか限界などというものは、自分で作ればいくらでも出てくる。実際は目に見えるものでもなく、本当にわるわけでもないのに、勝手に枠を作り、その中で自ら苦しんでいるだけではないか。ここまででいいや、と自分で決めてしまえば本当にそこまでで終わります。まだまだと考えれば、仕事は常に発展途上なのだと思います。いったい自分の力はどれ程だろうか。仕事でその自分の力を楽しみ、味わい尽くしたいと思いますね。」(p209-210)

天才だからそう言える、と言ってしまえば簡単だ。しかし、限界は自らが作りだす、という言葉はその通りだろう。「仕事で自分の力を楽しみ」たい、と思った。

出所:朝日新聞社編『仕事力(青版)』朝日文庫
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わたしはあなたたちを造った

わたしはあなたたちを造った。わたしが担い、背負い、救い出す。
(イザヤ書46章4節)
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『「いっしょに働きたくなる人」の育て方』(読書メモ)

見舘好隆著『「いっしょに働きたくなる人」の育て方』プレジデント社
(ワークス 人と組織 選書)

非正規社員を抱えるサービス企業は多い。しかし、そこでは、十分な教育プログラムがないため、採用したアルバイトがどんどん辞めてしまい、コストアップとサービス低下に陥る、という悪循環がみられるように思う。

本書は、人材育成で定評のあるマクドナルド、スターバックス、コールドストーンの3社を紹介するとともに、そこで働くアルバイトの生の声を分析した本である。非正規社員だけでなく、新人社員を育てる上でのポイントが書かれている。

まず3社は、アルバイトの資格を何段階かに分けることでキャリアステップを明示し、しっかりとした教育プログラムを用意しているところに特徴がある。

例えば、スターバックスの場合、「バリスタ→シフトスーパーバイザー→アシスタントマネジャー」という段階があり、その上に正社員であるストアーマネジャー(店長)がいる。入ったばかりのアルバイトは、本社でのOFFJTや、店でのOFFJT、OJTで、80時間の研修と確認テストを経て、晴れて「バリスタ」になる。

大切だと思ったのは、マニュアルで対応できないことはクレド(企業理念をまとめたもの)に立ち返って考えるという点。それを可能にしているのが、アルバイトを教育するアルバイト達である。マクドナルドでは、新人クルーに日常の業務に関する指導を行うアルバイトを「クルートレーナー」と呼び、専用の教育プログラムが整備されている。

著者の見舘氏は、3社で働くアルバイトの方たちをインタビュー調査し、彼らがどのような経験を経て成長しているかを分析しているが、これが興味深い。

店舗で働く人々に「憧れ」て入社したアルバイトは、職場の人々から「歓迎」され、「徒弟制」の下で「自分と戦い」ながら業務を覚えていく。一人前に近づくにつれて、仕事に「誇り」を持ち、「ライバル」を意識しながら、ときに先輩から「メンタリング」を受ける。一人前になった後は、さらに高い資格を「目標」としてがんばる、という流れでアルバイトは成長していくという。

このように、制度やシステムだけでなく、働く側からの主観的な経験をとらえることは、今後の人材開発において重要になるだろう。

対象となった3社を絶賛しすぎる点がやや気になったが、本書には、非正規社員の人材育成システムを構築するための数多くのヒントが示されていて、その応用範囲はかなり広い、と感じた。
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モバイルエコー

お客様の声をお聞かせください」というハガキをよく見かけるが、面倒くさくて利用をためらう人は多いのではないか。

中堅タクシー会社のANZENでは、乗務員と乗客の間を仕切る防犯板に「QRコードを載せたシール」を貼り、意見や要望を出しやすくする「モバイルエコー」と呼ばれるしくみを導入したらしい。

苦情マネジメントの第一歩は「苦情を出しやすくする」こと。企業の顧客相談室に寄せられる苦情・相談は実際の10%程度といわれているが、同社のしくみは、この数字を高めることを可能にする。

次なる課題は、収集した顧客情報をどのように「共有して活用するか」。そこで勝負が決まる、といえそうだ。

出所:日経産業新聞2010年7月15日
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顧客が参加する商品開発

通販大手のフェリシモでは、「生活雑貨大賞」という制度を設け、年2回、消費者からの商品提案を募っている。

誰でも、応募書類をHPからダウンロードして、自分なりの企画を出すことができる。その数、年間約1200点。これまで100点以上を商品化し、現在でも40点を販売中である。

同社の開発手法で興味深いのは、企画だけでなく、その後の評価も消費者が関わっていること。

最終審査には過去の受賞経験者が加わり、商品化された商品のうち初月売上トップの商品提案者が最優秀賞に決まる。そして、発売後も、消費者へのアンケート結果を基に、改良を重ねる。

「消費者を起点として商品開発の過程をオープンにし情報共有することで共感の輪が広がる(同社・坂村氏)」という。

顧客の声を収集し、それをビジネスに生かす企業は多いが、その過程は顧客から見えないことが多い。フェリシモのように、顧客と企業のやりとりを可視化する試みは、消費者のコミットを高め、実践コミュニティをつくりあげる上で有効であると感じた。

出所:日経産業新聞2010年7月16日
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悔い改めなさい

悔い改めなさい。天の御国が近づいたから。
(マタイの福音書4章17節)
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『小さな命が呼ぶとき』(読書メモ)

ジータ・アナンド『小さな命が呼ぶとき(上・下)』新潮文庫

すでにメディアでも紹介されており、この夏、映画が公開されるらしい。5歳まで生きられないといわれる難病ポンぺ病に侵された娘と息子のために、自ら新薬開発に挑む父親と、その家族の物語(事実)である。

コンサルタント会社を辞め、大手製薬会社に転職。その後、バイオベンチャーの社長に就任したジョン・クラウリーは、執念の塊となり新薬開発に突き進む。

いろいろな面で凄い話なのだが、本書を読んで一番印象に残ったのは、ジョンが社員のモチベーションを上げる方法。

それは、自分たちが開発している薬を待っている患者や家族を会社に招待することである。当初は気乗りしない社員たちも、死に直面し、自分たちに期待している患者や家族を目の前にすると、気持ちの底からヤル気がでてくるのだ。

自分は何のために働いているのか?

これを強烈に意識するとき、人は潜在的な力を発揮することができるのだろう。
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ベテランの弱点

生産現場で積極的に取り組まれている「技術継承」の問題。JFEスチールでは、個人や職場毎に求められる能力を200~300項目設定し、習熟度を5段階で測定しているという。

⑤は後輩や部下の指導ができ、トラブル対策や原因究明ができるレベル、③は定常作業を一人で安全にできるレベルである。目標設定に対して成果を評価し、次なる目標を再設定するのは半年ごとに作業長が担当する。

こうした取り組みが管理強化として受け止められるのではないかという危惧に対して、同社の藤原労政部長は次のように答えている。

「むしろ動機づけに役立っている。現状と目標が明確になることで教える側も教えられる側もモチベーションが工場していると聞いている。ベテラン従業員にとっても思わぬ弱点が浮き彫りになるというメリットもある。」

ベテランから若手への技術継承の取り組みの中で、ベテランの弱点が見つかるという点が面白い。こうした試みを、生産現場だけでなくサービス業の現場や間接部門で実施すると、職場力が良く見えてくるのではないか、と思った。

出所:日経産業新聞2010年7月7日
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