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『さよならクリームソーダ』(読書メモ)

額賀澪『さよならクリームソーダ』文春文庫

『拝啓、本が売れません』の著者である額賀澪さんの小説を読んでみた(本人おすすめ)。

没入感が得られる小説が少ない中、グッと物語に引き込まれた

美大に入学した友親(男性)が、先輩である若菜(男性)と仲良くなる。さばさばして明るい若菜だが、徐々に彼の暗い過去が明らかになる、というストーリー。

生と死の問題を扱った、緊迫のラストパートが良い。

「若菜さん…あんたは、ぶっ壊れてる。恋人を失ってから、ずっとぶっ壊れてるんだ。だから、ぶっ壊れたまま生きていくんだ。この世界は、壊れていない人間しか生きられないわけじゃなない。ぶっ壊れたまま生きていたっていいはずなんだ」(p. 343)

というセリフが刺さった。

人間、どこか故障していても、だましだまし生きていくことが大事だな、と思った。

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自分を低くして、この子供のようになる人が、天の国でいちばん偉いのだ

自分を低くして、この子供のようになる人が、天の国でいちばん偉いのだ
(マタイによる福音書18章4節)
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『幸福について』(読書メモ)

ショーペンハウアー(鈴木芳子訳)『幸福について』光文社古典新訳文庫

評伝が面白かったので、とっつきやすそうな本書を買ってみたところ、エッセイのようでとても読みやすかった。

ただ、フロイトやニーチェにも影響を与えただけあって、深い。

ショーペンハウアーの基本的な考え方は、人間を無意識的に駆り立てる本能である「(生への)意思」に従って享楽を追求するのではなく、「苦痛なき、まずまずの人生」を求めよという点。

そのための第1のポイントは「今を大切に生きる」こと。

「現在だけが真実であり現実なのだ。(中略)直接的な不快や苦痛のないまずまずのひとときがあれば、それを意識的そのまま享受すればよい。(中略)過ぎたことに腹を立て、あるいは未来を案じて、現在の楽しいひとときをしりぞけたり、わざと台無しにしたりするのは、実に愚かしいことだからである」(p. 212)

まさにマインドフルネスである。

第2のポイントは「他者の思惑を気にするな」という点。

「他人の思惑をあまりにも重要視しすぎるのは、世間一般を支配する迷妄である。(中略)この迷妄が私たちの行状すべてに過度の影響を、しかも私たちの幸福に有害な影響をおよぼす」(p. 91)「他人の思惑が私たちにおよぼす現実の影響はいかに少ないか」(p. 97)「他人の目にどう映るかで、生き方の価値の有無が決まるとしたら、みじめだろう」(p. 175)

こうしたこともあり、ショーペンハウアーは「孤独な生活」を奨励している。

第3のポイントは「自分の強みを活かせ」ということ。

「人間が自然から賜った能力の本来の使命は、四方八方から迫る困苦と戦うことにある。だが戦い終わると、人間はもはや使っていない能力をもてあますようになる。そこでその能力を「遊び」に用いる、すなわち、何の目的ももたずに用いることが必要になる」(p. 52)「ともあれ、各自が能力にしたがって何かすればよい」(p. 263)

本書においてショーペンハウアーは、アリストテレスをやたら引用しているが、次の言葉も引用していた。

人間の幸福は、自分の際だった能力を自由自在に発揮することにある」(p. 51)

ということで、とても腑に落ちる書であった。



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『ライ麦畑の反逆児』(映画メモ)

『ライ麦畑の反逆児』(2017年、ダニー・ストロング監督)

サリンジャー作品は5冊ほど読んでいるが、この映画を観て、彼の背景がわかった。

一番印象に残ったのは、サリンジャー(ニコラス・ホルト)が若い頃、短編作品を出版社に送っても送っても不採用が続いたとき、恩師でもあるホイット・バーネット(ケビン・スペイシー)からもらったアドバイス。

「君は、一生不採用で終わるかもしれない」
君に、生涯を賭して物語を語る意志はあるか。何も見返りがなくても

後に、『ライ麦畑でつかまえて』がベストセラーとなり、一躍有名人になるサリンジャーなのだが、それが彼を苦しめることになる。

このときに彼を支えたのが、ホイットからの助言であった。

たとえ社会からの評価がなくとも、仕事そのものを愛すること。

その凄さが伝わってきた。
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人は目に映ることを見るが、主は心によって見る

人は目に映ることを見るが、主は心によって見る
(サムエル記上16章7節)

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『夢の島』(読書メモ)

大沢在昌『夢の島』集英社文庫

失業中の若手カメラマン信一は、子どもの頃に家を出た父親の死亡通知を受け、形見として「島の絵」をもらうことに。

実は、その島にはヤバイものが隠されており、カジノ王、麻薬密売人、麻薬取締官、ヤクザが絡む大騒動に発展するというストーリー。

「疾走感」にあふれる展開で大満足。ラストシーンも意外性があり、かつ美しい。

やはり、この頃(1999年発売)の大沢作品は脂がのっている

本作の魅力は、徐々に人の本性が見えてくるところ。

初めの印象とは違う「裏の顔」が明らかにされるところが怖い。

人間には「光と影」があるということが伝わってきた。


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口に入るものは人を汚さず、口から出て来るものが人を汚すのである

口に入るものは人を汚さず、口から出て来るものが人を汚すのである
(マタイによる福音書15章11節)

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『ショーペンハウアー:欲望にまみれた世界を生き抜く』(読書メモ)

梅田孝太『ショーペンハウアー:欲望にまみれた世界を生き抜く』講談社現代新書

1788年、ドイツの裕福な商人の家に生まれたショーペンハウアー。

当初はビジネス教育を受けるものの、次第に哲学へと関心を移していく。

世界はわたしの表象である」という考え方を示した点に、彼の哲学の特徴があるらしい。梅田先生は次のように説明する。

「わたしたちは普段、「世界というモノが無条件に実在していて、その内に自分もモノとして実在している」と想定しがちだが、ショーペンハウアーの主張からすると、これは一つの臆見にすぎないということになる。むしろ、「世界」というのは、人間の認識主観によって見られたかぎりでの世界であり、「表象」意外の何物でもない」(p.46)

確かに、同じ世界であるはずなのに、ある人にとっては「明るい世界」に、別の人にとっては「暗い世界」に見えるはずだ。

なお、ショーペンハウアーによれば、「人生は苦しみである」であり、そうした人生を幸せに生きる鍵は「欲望を鎮める」ことにあるという。

「ショーペンハウアーにとって幸福とは、より多くの欲望を満たすことではなく、むしろなるべく欲望を鎮め、心の平穏を得ることだった。そのために、次から次へと欲望を搔き立てる「外面の富」よりも、もともと備わっている「内面の富」に目を向けるべきなのである」(p. 89)

幸せになれるかどうかは心の持ちようで決まる、といえる。


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しかし、彼が強くなると、彼の心は高ぶり、ついに身に滅びを招いた

しかし、彼が強くなると、彼の心は高ぶり、ついに身に滅びを招いた
(歴代誌Ⅱ26章16節)
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