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花王のカイゼン活動

花王の改善活動であるTCR(トータル・コスト・レボリューション)は有名だ。2007年の営業利益1200億円のうち50億円以上をコスト削減活動で捻出したらしい。1980年の初めには60%以上あった売上原価率が2002年には40%にまで下がり、5%以下だった営業利益率は10%以上になった。

マンネリ化に陥りやすい改善活動だが、なぜ花王では20年以上も続けることができたのか?いくつかのポイントがありそうだ。

第1に、TCR活動の位置づけ。「従来のやり方を変革して独自の知恵や工夫を盛り込んだ活動」だけがTCR活動として認められるという。全社員から年間1000件以上の提案が集まってくる。1000件というと、ちょっと少ない気がするが、それなりの提案が上がってくるのだろう。目標スローガンは「コスト2分の1×時間2分の1」である。

第2に、組織体制がしっかりしている。社員から上げられた提案は、部門長クラスが集まる「TCRリーダー会」で毎月議論し、テーマを決定する。テーマが決まると、経営トップがコミットして、必要な人材を集め改善活動を進める。TCRリーダー会はプロジェクトの進捗状況を管理するらしい。

第3に、コスト削減が優先されすぎないように気をつけている。花王の理念である「よきモノづくり」という基本姿勢を崩さない。そのために重要な役割を果たしているのが、消費者からの苦情相談を収集・蓄積・管理する「エコーシステム」だ。コスト削減によって品質が低下すれば、このシステムによってすぐにわかる。

第4に、改善活動の貢献度を金額として反映させている。評価期間は活動開始から1年間である。会計と連動して活動の成果を数値化することで、プロジェクトメンバーのモチベーションも高まるし、TCR活動自体の年度毎の評価も明確になる。

こうして計画・実行・評価がきっちりと行われているがゆえに、活動がマンネリ化せず、進化していくのだろう。花王の事例が教えてくれるのは、カイゼン活動の枠組み自体にもPDCAをきっちりと埋め込むことの重要性である。

出所:日経ビジネス・マネジメント(2008年Spring)92-97.
「"カイゼン力"進化させ難局を乗り切る」
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