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主体性のある社員を育てる

17期連続増収増益を記録している大型スーパーがある。

関東を中心に100店舗を展開する「ヤオコー」である。僕は、この会社を10年前のNHKスペシャルで知った。それ以来、この会社と会長の川野さんのファンになった。

ヤオコーの強みは、地域のニーズに合わせて、1店1店が提案型の販売をしているところ。これがなかなか難しい。なぜなら、パートを含めて「主体性のある社員」を育成しなければならないからである。

では、主体性のある社員を育成するためにはどうすればいいのか?

第1に、教育訓練をしっかり行うこと。ヤオコーにはてんぷらの揚げ方や刺身のきり方などの検定がたくさんあり、それらを取得すると等級が上がり給与が増えるしくみになっている。

第2に、できるだけ権限を委譲して「PDCA」サイクルを回す経験をしてもらうこと。これは、教育がしっかりしているからこそできることである。

第3に、売上高営業利益率が4%を超えたら、その分の利益を顧客と社員に還元していること。決算時、パートさんには数万円から数十万円の決算賞与が支払われる。ちなみに、これは年2回のボーナスの他に出るものである。

川野会長は次のように語っている。

「パート個々人の持つ潜在的な能力は、よそのスーパーのパートとそんなに変わるわけじゃない。それなのに、私たちの店のパートはどうしてあんなに頑張ってくれるのか。それは、我々が私たちのパートは日本一だと思っているからなんです。」

会社が社員を信頼して「教育・権限委譲・報酬」がしっかりと結びつくとき、社員は信じられない力を発揮するのではないか。ヤオコーの事例は、多くの企業に大事なことを教えている、と感じた。

出所:日経ビジネス2009.2.23, 88-90.「川野幸夫氏[ヤオコー会長]:個人消費が日本を救う」
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人材育成のチャンス

不況になると、教育訓練費を削る企業が多い。

しかし、工作機器大手の森精機製作所は「不況で暇になった今が人材育成の絶好のチャンス」ととらえ、研修を通してベテランのノウハウを中堅・若手に伝授しているという。

景気が上向きの時期に人材育成に投資しても、教育される側は「忙しくてそれどころではない」という状態に陥りがちだからだ。

森社長は、2010年度の上半期に事業が底入れすると予想し、その後の増産時には、派遣規制強化によって非正規社員に頼れなくなると考えている。森社長は次のように語っている。

「仕事が減って研修に十分な時間を費やせられる今のうちに、正社員一人ひとりの能力を高めておかないと、需要を取りこぼしかねない

不況期には「今をなんとかしのぎたい」という短期的な見方をしがちであるが、不況期に先を見据えた人材育成をしているかどうかが、好況期の業績を左右するのだろう。

環境変化に合わせて人材育成の方法を工夫できる組織能力が競争優位につながる、と思った。

出所:日経産業新聞2009.2.6
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快眠ホテル

先日、東京出張の際、「ぐっすり眠れて低料金」がウリのスーパーホテルに泊まってきた。

僕はホテルに泊まると疲れがたまるほうだが、スーパーホテルは、ほんとうに静かで、ぐっすり眠れた

その秘密は、

・部屋の防音施工
・大きなベッド
・快眠枕
・静音冷蔵庫
・光が入らない窓

である。

これはかなりの差別化になると思う。翌日、同じ地域で同じくらいの料金設定の大手チェーンホテルに泊まったが、戸外の音や、時計の音がうるさく、熟睡できなかった。

ちなみに、スーパーホテルの凄いところは、サービスの差別化と同時に、低コスト化も徹底しているところだ。具体的にいうと、

・自動チェックイン
・鍵がない(暗証番号)
・電話がない

鍵を使ったり、部屋に電話を置くとどうしてもチェックアウトの際に鍵の返却や電話料金の徴収が必要となる。これらを省くことで、一番面倒なチェックアウトをまったく不必要にして、人件費を大幅にカットすることを可能とした。

ただし、フロントスタッフの接遇は非常にレベルが高かった。しっかり教育されているのだろう。

このホテルの弱点を挙げれば、プロモーション力が弱いところ。たしか羽田空港の階段のところに大きな看板があるが、「低料金」だけが目だって「ぐっすり眠れる」という特徴に気がつかなかった。「スーパーホテル」という名前も少しうさんくさいイメージを与える。

でも、一度使えばリピートしたくなるホテルである。次の出張でも是非使いたい、と思う。

出所:日経ビジネス2008.9.29, 64-65.「スーパーホテル:ぐっすり快眠で、泊り客魅了」
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わたしが命のパンである

『わたしが命のパンである。わたしのもとに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者は決して渇くことがない。』

(ヨハネによる福音書6章35節)

これはイエスの言葉である。イエスの教えは、精神的な飢えや渇きをいやしてくれると思う。
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『流れる』(読書メモ)

幸田文『流れる』新潮文庫

幸田露伴の次女である幸田文の作品。『流れる』という不思議な題名につられて読んでみた。

落ち目の芸者置屋(芸者さんの芸能事務所のようなところ)で女中として働くことになった40過ぎの未亡人、梨花の眼から見た芸者の世界が描かれている。

この小説で強調されているのが、くろうとの世界しろうとの世界の違い。小説の中で、いいがかりをつけて金をゆすりに来た石工の男と主人が交渉する場面がある。そのとき梨花は、主人の「くろうとの技」にほれぼれとする。次のシーンである。

「主人のほうは、はっきりと座敷を勤めているというものだった。芸妓の座敷というものを梨花は見たことがないけれど、一見してこれがそうだとわかった。ふだん茶の間にいる主人とはまるで違って、一トかさも二タかさも大きく拡がっていた。からだのまわりに虹がかかっているような感じである。」

この小説は「家政婦は見た!」的に構成されており、女中の目を通して、芸妓という「くろうとの世界」がリアルに伝わってくる。

ただ、くろうとである芸者さんは、しろうととは違う自分たちの世界を誇りにしていると同時に、しろうとの世界に憧れを抱いているところに、一抹の悲しさを感じた。物語の背景となった昭和30年代と現代では、その辺が少し違うように思える。

小説家の娘である幸田文は、どのようにして芸妓の世界を知ったのだろうか。この点が不思議だった。
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サービスの生産性

箱根エリアで8箇所の旅館・ホテルを経営する「一の湯」の創業は1630年。370年以上の歴史を誇る旅館だが「低価格の温泉旅館・リゾートホテル」がコンセプトである。最も安いプランは一泊二食付きで六千円を切るという。

なぜ低価格を実現できるのか?

その秘密は労働生産性の高さにある。社長の小川氏が従来の旅館業から脱却を図るために流通業やチェーン店のセミナーに参加したのが1987年頃。鍵となるのは、従業員一人が1時間に生み出す粗利益率を示す「人時生産性」。当時は1400円弱だった人時生産性は、改善の結果、2007年度には5400円に達した。

何を変えたのか?

それは「客の満足度を下げずにコストを削減し、サービス効率を上げる」ことと、「一人複数の役割をこなす」ことである。

一の湯では、お客さんが来ても客室への案内やお茶入れをしない。客室の冷蔵庫を空にして、廊下に自動販売機を設置している。自分でお茶を入れたりビールを飲みたい人が多いからである。中身の補充やチェックに必要な人手も省ける。

従業員は、受付係だけでなく、調理や配膳など、最低でも一人三役をこなす。箱根に集中展開しているため、繁忙状況に合わせてシフトを組み、複数施設の間で従業員を行き来させている。

また、残業代を1分単位で払う体制にしてから、従業員のヤル気も高まったという。

こうした改善活動によって低コストオペレーションが可能となり、低価格が実現できるのである。客室稼働率も80%台を維持している。

一の湯の事例から学ぶべきことは、次の3つである。

明確なコンセプト(低価格で楽しめる温泉旅館)
・改善のための指標(人時生産性)
顧客ニーズに合わせてコストを削減する姿勢

サービス業の生産性が低いといわれる日本だが、こうした事例を参考にすることで、サービスのクオリティ向上と低コストを実現することができるのではないか。

出所:日経産業新聞2009.2.12
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二人の店長

サンドラッグは、徹底した低価格戦略をとるドラッグストア業界3位の企業。50年連続で増収を記録し、経常利益率は6.5%と業界でもトップクラスである。

低価格をウリにするだけあって、販売管理比率は17%。マツモトキヨシが23%だからかなりのローコスト経営だ。

一般に低価格の店は、セルフサービスで、接客に力を入れないというイメージがある。しかし、サンドラッグのウリは低価格だけでなく「丁寧な接客」。時間をかけて商品を薦める。

どのように、ローコストと質の高いサービスを両立しているのか?

そのヒミツは2人店長制にある。1店舗に店長が二人いて、一人は接客担当、もう一人は店舗運営を任されている。

接客担当の店長は、店員に対し徹底的に接客の訓練をする。接客担当には販売ノルマはなく、接客に関する定期的な研修と試験を受けて技術を磨くことに専念する。

一方、店舗運営担当の店長は、在庫管理、店内陳列、清掃など、効率経営を行うことに責任を持つ。同社では、店内運営に関する200以上の項目について、1日の作業スケジュールが細かく設定されている。

二人店長制について、才津社長は次のように説明する。

「じっくりと販売することと、効率よく店内作業をすることは相反する。2つのことを同時にできる人は少ない」

サンドラッグは、やるべき仕事を絞り込み、徹底的に専門化することで、クオリティと効率を両立しているのである。

しかし、あまりに専門特化しすぎると蛸壺にはまり視野が狭くなって、改善が進まない危険性がある。これを回避するために、サンドラッグは、異なる部門長同士が互いの問題点を追求しあう会議を頻繁に設けている。

専門特化するだけでなく、多様な視点も取り入れることで変革を促し、成長を持続しているといえる。

組織内で分業するだけではなく、それをうまく統合する仕組みが必要となることを、経営学では「分化と統合」と呼ぶ。サンドラッグは、この分化と統合がほどよく組み合わされているといえる。

出所:日経ビジネス2008.11.24, 44-46.「サンドラッグ:"内戦"で磨く安さと利益」
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あなたはいのちを選びなさい

『私は、いのちと死、祝福とのろいを、あなたの前に置く。あなたはいのちを選びなさい。』
(申命記30章19節)

私たちの前には「いのち」と「死」、「祝福」と「のろい」が置かれており、それを選ぶことができる。神様がすすめるように、「いのち」と「祝福」を選びたいものである。
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『凍』(読書メモ)

沢木耕太郎 『凍』 (新潮文庫)

手足を凍傷で失いながら、死の危険をかえりみず、山に登り続けるクライマー達の気持ちが、どうも理解できなかった。

世界的なクライマーである山野井泰史と妻妙子が、ヒマラヤの難峰ギャチュンカンに挑んだプロセスを綴った本書を読み、登山家の美学の一端を感じることはできたものの、結局はわからないままである。

しかし、本書の中で印象的な箇所が二つあった。

一つは、山野井が山登りの魅力に取り憑かれはじめた中学生のころ、崖から落ちて全身血だらけになって返ってきた息子を見た父親が「そんな危険なこともうやめろ!」と叱りつけたときのこと。

山野井は台所に走り、包丁を持ち出して「俺にクライミングをやめさせるなら、これを刺して死んでやる!」と言ったらしい。

中学生にして自分の道に命をかけることができるとは凄いことである(その後、包丁で腹を少し刺したら痛かったのでやめたらしいが)。天才という人は、自分が進むべき道をはっきりと自覚している人なんだと思った。

もう一つ印象に残ったのは、ギャチュンカンのベースキャンプを設営する際、荷物を運ぶヤク使いの少女に出会ったときに、山野井が手帳に書き記したという内容だ。

「最新の装備に囲まれ、ピンク・フロイドを聞きながら、生きて帰れないかもしれない山に挑戦する私。かたや、父を亡くした十三歳の少女は、ヤク・ドライバーとして厳しい環境で働かなくてはならない。一枚のビスケットに幸福を感じながら。これでいいのか。自分の人生は間違っていないのか。しかし、残念ながら、あの山をみると、登らざるをえない自分がいる。」

よく考えると、人間の生活の中には実生活とは関係ない活動がたくさんある。サッカーや野球だって、単にボールを蹴ったり、投げたり、打ったりするゲームである。しかし、それに人生をかけている人々がおり、それを見た人々が感動する。

人は、挑戦し続ける何かを持っていることで、成長することができるのだろう。たとえ、なぜ自分がそれに魅力を感じるのかがわからなくても。

「登らざるをえない自分がいる」と言える山野井さんはとても幸せな人だと思った。
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御用聞きの科学

でんか(電化)のヤマグチ」は、東京町田市にあるパナソニック・ショップの一つ。年商12億だが、利益は過去3年で4倍に伸ばし、粗利益率は37.8%と、パナソニック・ショップの中でも突出している。ちなみに、価格は大型量販店より3割ほど高いという。

高値であるにもかかわらず、利益を上げることができるのはなぜか?

その理由は、優良顧客をターゲットとして、徹底した訪問販売により、すぐれた顧客関係管理を実現していることにある。

でんかのヤマグチはトンデ行きます」というポスターにあるように、顧客に呼ばれたらすぐに飛んで行き、製品説明、使い方の指南、即日修理などサービスに注力する。一人暮らしの女性顧客は次のように評している。

「たまに帰ってくる息子は『ヤマグチは高いから俺が駅前の安い店で同じ製品を買ってくる』って言う。でも、駅前のお店だって、息子だって、いつもすぐに来てくれない。操作が分からない時、壊れた時、いつでも駆けつけてくれるのはヤマグチさんだけ。だから決して高い買い物ではないわ

主要ターゲットは「4年以内に購入履歴がある顧客」。これを、購買履歴により「1年未満」「1-3年」「3-4年」に分け、累計購入額により「100万円以上」「30-100万円」「30万円未満」に区分し、顧客をセグメント化している。

1年未満に購入履歴があり累計100万円以上購入している顧客を「最上」のA1とし、営業担当者が月1回は訪問する。ちなみに、上記のセグメント毎に販促方法を変える。いかにA1の顧客を増やすかがポイントになる。

13人の外販専門営業マンは、一人当たり500~700人の顧客を抱え、顧客の自宅を周回し、御用聞き営業に徹する。日頃から訪問しているため、顧客の生活ニーズに合った提案ができる。

山口社長が重視するのは「粗利益」。以前、売上高優先で経営していたときには、粗利益率は25%台だった。しかし、評価基準を粗利益にすることで、たとえ低額の商品でも利益が高いものを売るようになり、細かいサービスにも目が行くようになった。山口社長は次のように述べている。

「ウチの従業員は、たとえ5000円の配電工事だとしても、喜んでお客様のお宅へ”トンデ”行く。工事に必要な部品は500円程度。粗利益率は90%になるからだ」

人材育成においても、「販売」よりも「御用聞き」の姿勢を身につけることを強調する。製品に不具合が生じたときにも、まずお客様のもとにかけつけて、製品を修理する前にお客様の「心の修理」をすることの重要性を説く。

極めつけは、報奨制度。税引き後利益は、会社と従業員で折半する。社長の講演などで得た報酬も全額会社にプールされ、全社員に還元される。

「社会と従業員あってのヤマグチ、だから、儲けも社会と従業員へきちんと還元する」という山口社長の姿勢が、社員のモチベーションを高めている。

ヤマグチの高収益は、「ターゲットの明確化」「提供する価値の差別化」「プロモーションの工夫」「人的資源管理のこだわり」といったビジネスモデルに支えられていることがわかる。CRM(Customer Relationship Management)のお手本のような会社だ。

出所:日経ビジネス2009.1.26「大手も真っ青の”高値売り”」p.50-52
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