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あなたがたは自分の量る秤で量り返されるからである

あなたがたは自分の量る秤で量り返されるからである
(ルカによる福音書6章38節)

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『明るい夜に出かけて』(読書メモ)

佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』新潮文庫

ネット上の事件がきっかけで大学を休学し、深夜コンビニでバイトをしながら独り暮らしを始めた富山。唯一の楽しみは、週一回の深夜ラジオ番組「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」(2016年まで放送されていた実際の番組)を聞き、投稿すること。

高校時代からの友人である永川、ラジオ好きの変人女子高生・佐古田、バイト先の先輩・鹿沢と交流するうちに、心を閉ざした富山が一歩踏み出す物語

佐藤多佳子さんの作品は初めて読むのだが、『ライ麦畑でつかまえて』のサリンジャーのような書きっぷりで、とても1962年生まれとは思えない。

ちなみに、深夜ラジオの投稿者のことを「職人」というらしく、リスナーの間で評判や評価が存在する。そのディープな「世界観」「こだわり」「美学」が伝わってきた。

自分の「好きな世界」があるということは幸せなことだな、と感じた。

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『ミリオンダラー・ホテル』(映画メモ)

『ミリオンダラー・ホテル』(2000年、ヴィム・ヴェンダース監督)

ヴィム・ヴェンダース監督の映画は、大学生の頃に観た『パリ、テキサス』以来。

奇人変人が住む安宿「ミリオンダラー・ホテル」の住人イジ―が屋上から転落死したことから、FBI捜査官スキナー(メル・ギブソン)が乗り込んでくる。果たして犯人は誰なのか?

主人公は、雑用係として働く知的障害者のトム・トム(ジェレミー・デイビス)と、精神的に不安定な住人エロイーズ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)なのだが、この二人の純愛演技がすばらしい。

サスペンスというよりも、喜劇と悲劇と恋愛がミックスされた、絶妙な映画である。

「詩」のような映画を堪能した。




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悪人が自分の行った悪から離れて正義と恵みの業を行うなら、彼は自分の命を救うことができる。

悪人が自分の行った悪から離れて正義と恵みの業を行うなら、彼は自分の命を救うことができる。
(エゼキエル書18章27節)

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『雪の花』(読書メモ)

吉村昭『雪の花』新潮文庫

江戸は天保の時代。ウイルスである天然痘が流行ると、人々がバタバタと死んでしまう。その箇所を読み、ダニエル・デフォーの『ペスト』を思い出した。

「家の一人が天然痘にかかれば、たちまち他の者にも感染して、一家は全滅し死に絶える。たとえ死をまぬがれても、顔をはじめ全身に醜いあばたが残される。あばたは、福井の方言でめっちゃと言われているので、親がめっちゃなら、子もめっちゃ。親めっちゃ子めっちゃ。親子めっちゃ。」(p. 39)

そんな時代、福井藩の若き漢方医、笠原良索は、西洋医学を学び直し、天然痘にかかった牛の膿「牛痘苗」を使った治療法に挑む。今でいう「ワクチン」である。

しかし、西洋医学を嫌う漢方医の嫌がらせや、西洋医学を恐れる庶民の抵抗によって、なかなか広めることができない。そうした状況の中、協力してくれる仲間の助けを得ながら、何とか種痘(ワクチン接種)を進める奮闘記が本書。

ウイルスの脅威、ワクチンへの抵抗はいつの時代にもあることがわかった。

ちなみに、単行本のタイトルは『めっちゃ医者伝』。それが、文庫化するにあたり『雪の花』に変わったようだ。雪の花の由来はよくわからなかったが、こちらのタイトルのほうがいい。





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『うなぎ』(映画メモ)

『うなぎ』(1997年、今村昌平監督)

不倫した妻を殺してしまった山下(役所広司)は、刑期を終えた後、川べりのさびしい場所に理髪店を開く。

自殺未遂を助けたことで、桂子(清水美砂)が理髪店を手伝うようになるのだが、怪しい金融業を営む桂子の愛人・堂島(田口トモロヲ)が乗り込んできて、一騒動になるというストーリー。

妻殺し」が怖くて観るのを躊躇していたが、意外と明るい内容だった(冒頭以外)。

なぜ「うなぎ」なのか?という疑問があったが、途中で「なるほど」と思った。

うなぎは、メスの生んだ卵に、オスが精子を振りかけることで子供をつくる(魚はみなそうだが)。そこに、うなぎの「おおらかさ」があるといえる。

本作を観て、おおらかに生きたい、と感じた。





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恐れることはない。ただ信じなさい。

恐れることはない。ただ信じなさい。
(マルコによる福音書5章36節)

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『日の名残り』(読書メモ)

カズオ・イシグロ(土屋正雄訳)『日の名残り』早川書房

舞台は、第1次世界大戦前後から第2次世界大戦後あたりのイギリス。

イギリス外交にも影響を与えた貴族ダーリントン卿の家で執事を務めていたスティーブンスが、アメリカ人の主人に仕えるようになったのをきっかけとして、小旅行に出かける。その6日間に、自分の執事人生を振り返るという物語。

元女中頭のミス・ケントンとの淡い恋を回想しつつ、「執事の役割」や「品格」とは何かを自らに問いかけるスティーブンス。

響いたのは次の言葉。

「誰もが、よりより世界の創造に微力を尽くしたいと願い、職業人としてそれが最も確実にできる方法は、この文明を担っておられる当代の偉大な紳士にお仕えすることだと考えたのです」(p.168)

これは、職業人すべてに言えることのような気がする。

つまり、より良い世界を創ることを目的としている組織において、そのビジョンに向かってともに働くことに意味がある、という考え方である。

ただ、ここで問題なのは、仕えている主人や組織の姿勢や考え方が間違っているケース。愚かな殿様に使える武士が苦労したように、愚かな経営者の下で働く人々はどうしたらいいのか。

組織人に鋭く問いかけてくる作品である。

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『スモーク』(映画メモ)

『スモーク』(1995年、ウェイン・ワン監督)

ポール・オースターの短編を基にした作品だが、心に沁みる映画だった。

舞台はニューヨーク、ブルックリン。14年間、毎日、決まった時間に、同じ場所で写真を撮り続ける煙草屋の店主オーギー(ハーヴェイ・カイテル)。なぜそんなことをしているのかは最後に解き明かされることに。

妻を亡くした小説家、ギャングに追われる少年、娘を救うためにやってきたオーギーの元カノが絡むストーリーが、不思議とうまくミックスされている(バックに流れる、切ないピアノ音楽が秀逸)。

物語全体を見渡すと、登場人物が助け、助けられ、お互いに支え合って生きていることがわかる。

相手を思いやる心」の大切さが伝わってきた。




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まっすぐな人には闇の中にも光が昇る

まっすぐな人には闇の中にも光が昇る
(詩編112章4節)

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