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『豚の死なない日』(読書メモ)

ロバート・ニュートン・ペック(金原瑞人訳)『豚の死なない日』白水ブックス

子供から老人まで全米150万人が感動した」という文句にひかれて読んだ。途中までは淡々と物語が進行していたが、終盤に怒涛の感動が訪れた。

ロバート少年は、ヴァーモント州の貧しい農家の息子。現代文明を嫌うキリスト教一派・シェーカー教を信じるお父さん、お母さん、叔母さんと住んでいる。

ちなみに、家計を維持するために、お父さんは近所の農家が飼っている豚を殺す仕事をしているのだが、確固たる信念に基づいて生きてる姿はすがすがしい(ちなみに字の読み書きができない)。

本書では、近所の人にもらった豚のピンキーとロバートの交流を中心にほのぼのとしたストーリーが展開されるのだが、貧しさや病気という試練がロバートを待ち受けている。特に、最後の2章では、衝撃の結末が

人間としての生き方や成長」について考えさせられた。


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強みと存在意義

先日読んだ『子供時代』(リュドミラ・ウリツカヤ著、沼野恭子訳、新潮社)の中に、「折り紙の勝利」という感動的な作品がある。

主人公ゲーニャは、父親がおらず、生まれつき足が悪く、いつも鼻がつまっているため、近所の子供たちからいじめられている。

ある日、お母さんが「ゲーニャのお誕生日にあの子たちを呼ぼうと思うの」と言いだす。「気が変になったのかい」「あの子たちは子供とも思えない、ワルどもだよ」とおばあさんがびっくりする。(p. 100)

「だれにも来てほしくない。やめようと、ママ」(p. 102)と頼むゲーニャ。

そんなことお構いなしに、お母さんは誕生会を開く。

実はゲーニャには得意技があった。それは「折り紙」である。病気がちなゲーニャはベッドの上で折り紙を折りながら戦ってきたのだ。

イマイチ盛り上がりに欠ける誕生会の中で、お母さんが「ゲーニャ、折り紙を作ってあげたら?」と促したところ、「ぼくにも!ぼくにも作って!」「ゲーニャ、ぼくはコップ!」「私は人!ゲーニャ、人作って!」と大人気に(p. 109-110)。

この作品を読み、それぞれが持っている「強み」を引き出してあげることが、その人の「存在意義」につながるのだな、と思った。








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『マーガレット・サッチャー』(映画メモ)


『マーガレット・サッチャー』(2011年、フィリダ・ロイド監督)

予想に反して、感動してしまった映画。

鉄の女」といわれた英国サッチャー首相の力強い生涯を描いていると思っていたら(そうした面も描いているのだが)、夫婦愛がメインテーマであった。サッチャーになりきっているメリル・ストリープの演技が圧巻である。

食料品店の娘に生まれたマーガレット(メリル・ストリープ)は、オックスフォード大学に進んだ後、市制に関わっていた父の影響もあって政治家を目指す。「他人は他人だ。自分の道を行け」という父の教えが力強い。

実業家デニス・サッチャーと結婚した後は、下院議員、大臣を経て首相へと昇りつめる。周りの男を「腰抜けども」とののしりながら、落ち目の英国を建て直していく姿は、正に「鉄の女」である。

ちなみに、この映画は、サッチャーが引退後、夫デニスが亡くなってしばらく経った時代から始まるのだが、なぜかサッチャーの側には夫デニスがいる。実は、認知症のため夫の幻覚と生活しているのだ。全編を通して、鉄の女サッチャーは夫デニスに支えられてきたことが伝わってくる。

「私を独りにしないで」というセリフが胸に沁みた。軽い気持ちで借りたDVDが、思わぬ名作だった。


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すべてのものは、神から出て、神によって保たれ、神に向かっているのです

すべてのものは、神から出て、神によって保たれ、神に向かっているのです
(ローマの信徒への手紙11章36節)

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『子ども時代』(読書メモ)

リュドミラ・ウリツカヤ(絵ウラジミール・リュバロフ、沼野恭子訳)『子ども時代』新潮社

舞台はスターリン時代のロシア。6つの短編からなる本書は、ウラジミール・リュバロフの絵とともに、なんともいえない雰囲気を醸し出している。

子供が困った状況に陥るものの、なぜか状況が好転し、幸せになる、というストーリーは共通しているのだが、どの作品も胸に迫るものがあった。特殊な時代における物語であるにもかかわらず、なぜか共感してしまう。

最も印象深かったのは「キャベツの奇跡」。

孤児の姉妹が、親戚のおばあさんに預けられ、「キャベツを買ってきなさい」という命令を受ける。長い行列に並んでいた姉妹だが、お金を落としたことに気づき落胆して家に帰る。「絶対におばあさんに怒られる」と覚悟をしていた姉妹だったが、たまたまキャベツを荷台に載せたトラックが急カーブで通り過ぎたときに、キャベツが転げ落ちてくる。

不安から安心への瞬間である。

本書を読み、不安を感じながらも、安心の中で暮らしていた子供時代を思い出した。






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不安ベースのモチベーション

俳優・映画監督の竹中直人さんは、美大で映像研究会に入り、卒業後に劇団員になったものの仕事はほとんどなくバイトに明け暮れる日々を送っていた。そこで26歳のとき、テレビのお笑い新人戦に出てみたところ、チャンピオンになる。

「おかげで仕事が入るようになり、風呂付のアパートに引っ越せた…。でも1年で消えると思っていました。「来年はもうないだろう」という不安は今もまったく変わってないです。それを積み重ねてこの歳になってしまった感じですよ。舞台に上がる時は今でも本番1週間前から毎日のようにセリフを忘れる夢をみるし、初日の前日は緊張で眠れません

この記事を見て、成長してもなお「危機感」を持ち続けるトヨタの経営と似ているな、と思った。

不安ベースのモチベーション」。なんとなくわかる気がする。

出所:ビッグイシュー日本版Vol. 353, p. 3.

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『シンシナティ・キッド』(映画)

『シンシナティ・キッド』(1965年、ノーマン・ジュイソン監督)

スティーブ・マックイーンが放つ独特のオーラが半端ない。

ポーカー賭博師のシンシナティキッド(スティーブ・マックイーン)は、ニューオリンズでは怖いものしらず。そこに、ポーカーの王様ランシーがやってくる。

俺はポーカーのキングになる」と意気込むキッドに対し、どっしりと構えるランシー。

手に汗握る長丁場の勝負。はじめは優位に立っていたキッドだが…

勝負の世界で怖いのは「心の隙」や「慢心」である。ビジネスの世界も同じだな、と感じた。 
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わたしの訴えをあなたに打ち明け お任せします

わたしの訴えをあなたに打ち明け お任せします
(エレミヤ書20章12節)

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『月と六ペンス』(読書メモ)

サマセット・モーム(金原瑞人訳)『月と六ペンス』新潮文庫

画家のポール・ゴーギャンをモデルにした小説。ちなみに、月は「狂気もしくは夜空に輝く美」を、六ペンスは「世俗や日常」を象徴しているらしい(訳者あとがき)。

ロンドンで株の仲買人をしていたストリックランドは、突然家族を捨て、パリで画家になる。女性、名誉、お金に目もくれず、一心不乱に絵に打ち込む彼は、やがてタヒチへ。

この小説で描かれているストリックランドは性格破綻者であるため、正直なところ、好きにはなれない。しかし、美に取りつかれた彼の言葉は印象的である。

「おれは、描かなくてはいけない、といっているんだ。描かずにはいられないんだ」(p. 79)

タヒチで家族を持ち、病気にかかり、死の直前まで絵を描き続ける美への執念は怖いほど。世間的には幸せとはいえない彼の生涯ではあるが「自分らしさに満ち溢れる人生」であったといえるだろう。

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「思い」を言葉で伝える

バーンスタインに師事し、海外のオーケストラを指揮してきた大植英次さんは、「格調は高く、敷居は低く」をテーマに、誰もが楽しめる「大阪クラシック」を開催している。

ある公演で、観客の子供が演奏中にぐずりだし、他の観客が不快感を示したことがあったらしい。その雰囲気を察知した大植さんは「普段コンサートに来られない人にこそ聴いてほしい」という大阪クラシックの思いを観客に語り出した

その瞬間から観客の雰囲気は一変し、その親子に席を譲る人などが現れ、会場が一体化したという。

このエピソードを読み、「思い」を言葉で伝えることの大切さが伝わってきた。

出所:Works, No.152, p. 44-45.

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