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『死はこわくない』(読書メモ)

立花隆『死はこわくない』文春文庫

臨死体験は、死後の世界を証明するものではなく、脳の作用による「夢のようなもの」であることを科学的に追及した書である。NHKのドキュメンタリーがもとになっている。

正直なところ「だから?」と思いながら読んでいた。

そもそも「死はこわなくない」という理由が説明されておらず、科学的証拠を全面に出しながらの「得意げな語り」が気になった。

しかし、最後に立花氏が、次のように本書を結んでいたので、少し納得した。

「これからも、科学は常に解釈の余地を残し続けると思いました。科学が解釈の余地なしに、臨死体験とはこういうものだと事実として突きつける、そういうことは起こりえないように思います。科学がどれほど進んでも、新たに「分からない」ことが出てくる。(中略)人間とは何か。生とは何か。死とは何か。その謎を問い続けていくのが人間なのかもしれません」(p. 183-184)

こうした「問いの姿勢」こそ科学である、と感じた。




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トヨタ式PDCAサイクル

トヨタ生産方式におけるPDCAサイクルは、通常の4ステップ(プラン、ドゥ、チェック、アクション)に、

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標準化
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が加わり、上記の7ステップすべてに「考える」がつくという。

若松義人氏は言う。

「「標準のないところに改善はない」というのがトヨタ式の考え方だ。しっかりとした標準作業をつくることと、標準作業をもとに改善作業を進めていくことは、基本中の基本といえる」(p. 139-140)

「トヨタ式の標準作業は、生産現場で働く人たちが自分自身でつくる。そこに大きな特長がある。(中略)「標準作業は現場でつくる」これがトヨタ式であり、現場でつくるからこそ本当に使えるものができる」(p.142)

PDCAサイクルが回らないという声をよく聞くが、PDCAを機能させるには、こうした工夫が必要なのだろう。

出所:若松義人『トヨタ式「改善」の進め方』PHPビジネス新書

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『コーヒーをめぐる冒険』(映画メモ)

『コーヒーをめぐる冒険』(2012年、ヤン・オーレ・ゲルスター監督)

ジム・ジャームッシュ風の白黒ドイツ映画だが、なかなか雰囲気がよかった。

大学を中退したことを隠し、親の仕送りで生活するニコ(トム・シリング)は、どこか影があるイケメン。コーヒーを飲みそこなった朝から、さまざまな人と出会い、人生に違和感をもちつつ、冒険的な一日を過ごす。

勉強するでもなく、働くでもない。ただ、ぶらぶらしながら、さまよっているニコを見ていると、イライラすると同時に、なぜか共感してしまうのが不思議である。

フランス映画ほどおしゃれではないが、ドイツらしい渋い映画だった。

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肉の思いは死であり、霊の思いは命と平和であります

肉の思いは死であり、霊の思いは命と平和であります
(ローマの信徒への手紙8章6節)

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『トヨタ式「改善」の進め方』(読書メモ)

若松義人『トヨタ式「改善」の進め方』PHPビジネス新書

大野耐一氏のもとでトヨタ生産方式を実践・普及してきた若松義人氏の書。

トヨタ自動車を退職後も、コンサルタントとして様々な企業を指導してきたご経験があるため、紹介されている手法に普遍性がある。

一番印象に残ったのは、「改善推進チームの教育ママ化」の話し。

企業の改善を促進する「改善推進チーム」が教えすぎると、現場が考えなくなるという。

「ある日のミーティングで、推進チームがいつものように「改善点はまだあるはずです」と言うと、現場から「もうないよ。そんなに言うのならどこにあるか言ってみろよ」と言い返された。業を煮やしたメンバーの一人が、つい問題点をいくつか指摘してしまった。そればかりか、「こうすればよくなるでしょう」と具体的なやり方まで教えてしまった。(中略)これはトヨタ式改善において最もまずいやり方だ。改善の基本は「答えは自分で考える」だ。人はつい、考えずに答えをほしがる。教える側、指導する側もつい「こうしなさい」と答えを教えたくなるものだ。だが、それでは知恵を出して働く人は育たない。多少時間はかかっても自分の頭で考えてもらう。推進チームはその「自分で考えた答え」に対して、「もっとこうしたらどうだろう」「こんな考え方もあるのでは」とアドバイスする。アドバイスはするが、決して正解を教えてはいけない。考えること、試してみることを通してしか知恵ある人は育たないからだ」(p. 164-165)

この箇所を読み、「自分も教えすぎている」と反省した。

たしかに、時間はかかっても「君はどう思う?」と聞くことが大切なのだ。その積み重ねが人を成長させるのだろう。



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『田園に死す』(映画メモ)

『田園に死す』(1974年、寺山修司監督)

寺山修司の自伝的映画

青森県恐山のふもとに母と二人で暮らす中学生の私(高野浩幸)は、母を捨て、隣の人妻(八千草薫)と駆け落ちしようとするが失敗する。

映画監督となった大人の私(菅貫太郎)も登場し、中学生の私と会話しつつ、母殺しを画策するのだが…

とにかく前衛的で、舞台を見ている気持ちにさせる映画である。特に、不気味なサーカス団が怪しい雰囲気を醸し出している。

寺山修司の原点であり、トラウマでもあり、創作のエネルギーでもある「母」や「故郷」に対する複雑な思いが描かれているように感じた。

創造性の裏に潜む闇を見たような気がした。



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わたしはこの口に手を置きます

わたしはこの口に手を置きます
(ヨブ記40章4節)

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仕事の意味

カリフォルニア大学バークレー校のハンセンとケルトナーによれば、仕事の意味は、8つの視点からとらえることができるという。

①自分ひとりの力を超える貢献
仕事を通じて、自分一人ではできない社会貢献ができる。

②学習
仕事は人に学びの機会を与え、可能性を広げる。

③達成
仕事によって、何かを成し遂げ、人に認めてもらうことができる。

④ステータス
ステータスの高い組織で働くことで、尊敬と承認を得ることができる。

⑤パワー
仕事を通じてパワーを獲得し、行使することができる。

⑥コミュニティへの帰属感
職場や会社を自分の居場所だと思うことができる。

⑦変化や影響の手ごたえ
自分の行動が何らかの変化や影響をもたらすという手ごたえを感じることができる。

⑧自律性
自由裁量がある場合、自分のやり方で仕事ができる。

以上8つの視点のうち、何を重視するかは人によって異なるだろう。マズローの欲求階層モデルのうち、「社会的欲求」は⑥、「自尊欲求」は③④⑤、「自己実現欲求」は①②⑦⑧に関係しそうだ。

意味の提供」こそが、組織の力であるように感じた。

出所:モルテン・ハンセン&ダッヒャー・ケルトナー(2019)「あなたは仕事に「意味」を感じているか」ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス2019年6月号, p. 90-92.



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いいとこどり

将棋の羽生義治さんが執筆した『直観力』(PHP新書)に、つぎのような一節があった。

「どうして若い人のほうが、斬新な発想ができるのか。それは、明確な割り切り、いいとこ取りができるからではないかと思っている。思い入れが生じてしまうと、いいとこ取りができない。たとえば、「十年かけてこの形をマスターした」「この手で勝ち抜いた」などといった思い入れがあると、それを切り捨てることができなくなる。愛着のようなものが湧いてきてしまうからだ」(p. 94)

自分の「型」や成功体験が、革新を邪魔し、アンラーニング(捨てる学習)を邪魔するのだ。

むしろ「型」がない若い人ほど、新しいことを取り込むことができる。

「型」を持ちつつ、「いいとこどり」をして、型を変え続けることが大事なのだろう。

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『東京オアシス』(映画メモ)

『東京オアシス』(2011年、松本佳奈・中村佳代監督)

劇的な始まり方で「これからどうなるのか?」と思いきや、淡々と進むストーリーが意外だった。

女優のトウコ(小林聡美)が、レタスを運ぶ運転手ナガノ(加瀬亮)、元脚本家のキクチ(原田知世)、浪人生ヤスコ(黒木華)と偶然出会い、話しをする。それだけの展開である。

それぞれが何らかの悩みを抱えていて、迷いながらも、前を向いて生きていることが伝わってきた。

3つの話しの中では、ナガノ(加瀬亮)とのエピソードが良かった。

少し、肩の力抜こうよ」と言われている気がする映画である。

エンディングに流れる大貫妙子の歌がしみた。



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