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CSは決め手になるか

中部国際空港が、CS(顧客満足度)の評価で3年連続世界一になったという(中規模空港の部門)。さすがトヨタ自動車出身者で運営されているだけある。

案内所、電話、メール、手紙などで寄せられる利用者の要望や問い合わせを把握し、トヨタお得意のQC活動によって改善しまくる。

面白かったのは「偵察リポート」。海外出張に行く社員は、利用した空港と中部空港との違いをA4一枚裏表の用紙で報告することが義務づけられている。TQMでいうベンチマーキングである。

ただ、気になったのは、燃料価格の高騰もあり、航空各社の減便が撤退が増え、2008年3月期の経常利益が前期に比べ61%も減少しているという事実。

「CSは航空会社をつなぎとめる決定打にはなっていない」というリーダーの言葉は重い。

CSを実行するときには、細やかな改善活動に加えて、顧客にとってのコアバリューを高めていくことが大切になる。

カイゼンだけでなく、ビジネスモデルの再構築が求められているような気がする。

出所:日経産業新聞2008.7.29
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基本がなくては進歩しない

2001年に39億円の赤字に転落した「良品計画」は、松井忠三体制に変わってからV字回復し、2007年度には売上高1620億円、経常利益186億円をあげるまでになった。

はたして松井氏は、何を改革したのか?

問題は大きく2つあった。過剰在庫と海外店舗の不振である。この問題に対して、松井氏がこだわったのは徹底した「しくみの変革」である。次のような改革を打ち出した。

1)バイイング
過剰在庫が生じるのは「右肩上がりの成長を経験してきたバイヤーが欠品を恐れて商品を買いすぎる」のが原因である。では、なぜバイヤーが買いすぎるのを防げないのか?それは、上司がバイヤーの仕事を把握できないからである。なぜ把握できないのか?それは、販売情報をバイヤーが独自のフォーマットで管理しているからである。

松井氏は、バイヤー各自が独自に作成していた帳票類を廃止し、会社が作成した統一フォーマットに切り替えた。

2)商品開発
これに加え、商品開発の仕組みを変えた。新商品を投入してから3週間の販売動向を確認し、計画の30%売れていれば増産し、売れていなければブレーキを踏むように、コンピューターで一元管理する仕組みにした。

3)組織構造
また、各店舗の店長とエリアを管轄するエリアマネジャーのコミュニケーションを迅速にするために、ブロック店長を置いた。

4)店舗マニュアル
さらに、完成やセンスを重んじるセゾン文化の影響で属人的な経験のみにたよった業務の進め方が横行していた。松井氏は、「ムジグラム」と呼ばれる13冊1000ページを超えるマニュアルによって業務を標準化した。

5)出店基準
海外店舗についても、出店基準を厳格化し、不採算店化を防止した。

このように、さまざまな側面から「仕組み」を改革することで、筋肉質の組織を作り上げた。松井氏は次のように語っている。

「スポーツと同じです。基本がなくて最初から自己流だと、進歩はいずれ止まる

この発言に見られるように「業務の基本」を明確にすることで、はじめて社員個人のオリジナリティを積み上げることができる、といえよう。

ここで注目したいのは「マニュアルは常に変えるべきものだ」という松井氏の発言である。マニュアルを練り上げることを通して業務改善を進める姿勢は、しまむらと共通している(良品計画では、しまむらの藤原会長を招聘して学んでいる)。

組織学習論では、ルール・慣行・システム・制度のことを「ルーティン」と呼ぶ。組織は、このルーティンを改善・改革することで学習していくが、松井氏が「基本」と呼ぶのは、ルーティンのことである。

業務の「基本」を練り上げることが、組織が学習する際のポイントになる、といえる。

出所:「良品計画 松井忠三会長:V字回復へ柔軟な豪腕」日経ビジネス2008年7月21日号44-51.
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「ぼくの心をなおしてください」(読書メモ)

原田宗典・町沢静夫著『ぼくの心をなおしてください』(幻冬舎)

躁うつ歴26年の作家原田宗典氏と、精神科医の町沢静夫の対談形式の本である。原田氏が投げかけて、町沢氏が答えるという形で、メンタルヘルスについて浅く広く解説するという内容になっている。

期待していた深みはなかったが、いくつか面白い箇所があったので紹介したい。

まず、うつと対人関係について。

「うつ病は、先進国ほど、あるいは都市部ほど患者数が多くなっています。いわば都市化がもたらしている病気です。なぜかといえば、都市部ほど人間関係が希薄だからです。」(p23)

メンタルでやられる企業人が増えているのは、会社の中での人間関係が希薄になっているからだろう。

では、どうしたらうつ状態から脱することができるのだろうか。

「作家は、自分で落ち込んでいる暗い穴から懸命に這い出ようとして、作品を書きます。同じように「うつ病」の人も、何らかの形で自己表現をすることによって、暗いトンネルに入り込むことを回避できるはずです」(p42)

「音楽療法ということでいえば、みんなが夢中になるのは、じつはカラオケです。(中略)とにかく、カラオケ大会を開くたびに、その効果にはびっくりさせられます」(p187・188)

何かに打ち込める趣味を持つことや、職場の仲間とカラオケに行くことには、精神面において隠れた効能があるようだ。

また、よい精神科医を選ぶ条件について、町沢氏はつぎの4点を挙げている。

・よく勉強していること(40代がいいらしい)
・センスがいいこと(患者の顔を見ただけでピンとくる)
・共感能力があること
・ヒューマニティがあること(協力し合って病に立ち向かう姿勢)

これは、精神科医に限らず、プロフェッショナルの条件だろう。なお、気になるのは次の言葉。

「じつをいえば、精神科医の中には「対人恐怖症」の人が意外に多いのです。私が先輩の精神科医に、「精神科医の20%はおかしいんだ」と言ったら、彼は否定するどころか、こう言い返しました。「20%どころじゃないよ。40%だよ。」(p162)

怖い話である。

そして、患者と話をすることを力相撲にたとえているところが面白かった。

「最初から精神科医が主導権を握って話を進めるのは最悪です。初めは聞き役に徹し、徐々に自分の意見を入れていかなければなりません。話のキャッチボールがスムーズにいくようになったら、ポイントを絞り、自分のほうから質問するように持っていきます。」

「いってみれば、相撲に似ているのではないでしょうか。最初は、押されっぱなしになって土俵際まで後退し、それからじわじわと押し返して、土俵の真ん中でがっぷり四つになります。そこから、今度は本当の力相撲になるわけです。」

こうした姿勢は、コミュニケーションの基本である(なかなかできないが)。

この本を読んで、メンタルヘルスを維持する上での「対人関係とコミュニケーション」「自己表現」の大切さがわかった。
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人間は複雑な考え方をしたがる

『神は人間をまっすぐに造られたが、人間は複雑な考え方をしたがる』
(コヘレトの言葉7章29節)

この書はダビデの息子であるソロモン王が書いたとされる。上記の言葉は、新共同訳の聖書によるものであるが、新改訳聖書によると同じ箇所が次のように訳されている。

『神は人を正しい者に造られたが、人は多くの理屈を捜し求めたのだ。」

私たちは物事を複雑に考えたり、理屈をこねようとする。しかし、神様が望んでいるのは「正しくまっすぐな生き方」である。

ごちゃごちゃ考えずにシンプルに生きたい、と思った。
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トヨタのDNA

「ザ・ゴール」の著者ゴールドラット氏は、大野耐一氏が書いた「トヨタ生産方式」の本質的部分が理解されていない、と述べている。彼のコメントは次のとおり。

「大野氏が著書において言及しているのは「時間の短縮」というコンセプトである。しかし、一般的には「ムダ」「コスト」を取り除くという表面的な活動への理解に終わっている。この誤解を正し、コンセプトを言語化することで、他産業でも理解して実践できるようになる」

さらに、トヨタ社内においてもDNAを継承できるかどうか疑わしい、と氏は指摘する。なぜなら、トヨタ生産方式(TPS)の本質が言語化されていないからである。

では、どうすればいいのか?ゴールドラット氏の答えは「『ザ・ゴール』を読んでTOC(制約理論)を理解しなさい」、である。

しかし、『ザ・ゴール』はベストセラーになったが、TPSが広まったという話はきかない。方法論を言語化することは大切だが、やはり現場にいる人間にしかわからない暗黙知が存在するのだろう。

移転や模倣が難しいからこそ競争力の源泉になる。だからこそ、ゴールドラット氏が指摘するように、トヨタ社内においてもTPSを継承することは難しいといえる。

強みとなる組織文化や組織能力が受け継がれずに、企業が衰退していくことはよくあることである。その原因は、先駆者の本質的考えが見失われることにあるのではないか。

今、トヨタにおいて、どのようにノウハウを継承する努力がなされているのか、知りたいと思った。

出所:エリヤフ・ゴールドラット「大野耐一氏を受け継ぐ」Diamond Harvard Business Review, August, 2008, p3.
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数値目標

これまで、必達目標である「コミットメント」を重視してきた日産が、5ヵ年計画の中で利益などの数値目標の発表を自粛したという。

短期的な数値目標に振り回される弊害が目立ってきた、という理由らしい。

その代わり、「新興市場の開拓」「次世代環境車の開発」「人材育成」など、長期的な視点を取り込むようにしたとのこと。

目標を立てる際には、S(具体的)M(測定可能)A(達成可能)R(現実的)T(有形の)という基準が大切になると言われている。

売上・利益といった財務数値は、一見上記の基準をクリアしているように見える。しかし、「なんのために売上・利益を上げるのか?」という理念や、「どのように売上・利益を上げるか?」という方策・手段が不明確だと、数値だけが一人歩きする危険性もある。

数値目標に振り回されないためには、まず自分の仕事の使命やこだわりを意識した上で、「自分は何をしたいのか」「何をすべきなのか」を具体的に考えることが欠かせない、と思った。

出所:日経産業新聞2008.7.22
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授業、終了

昨日は、経営学原理Ⅰの最終回だった。

「自分の頭で考える」ことを重視してきたが、4月の時点とくらべると、分析する力も、話し合う力も格段に伸びたのがわかる。

ただ、分析シートをみると、成長を実感できている学生は7割程度で、感じれない学生が3割くらいいることがわかった。3割の学生は、後からじわじわと自分の成長を感じることができるだろう。

今日のケースは「リンク・アンド・モチベーション」。15分程度のビデオを見てから個人分析とディスカッションを行った。

一般消費財を扱わない「コンサルティング業」ということで、すこしイメージがわきにくかったようだが、インパクトは大きかったようだ。学生からは「この会社に入りたい」「もっと知りたい」という声が多かった。

ある学生は「将来、私が作りたい会社もリンク・アンド・モチベーションのような会社です。」とコメントしていた。

なお、SWOT分析をした上で出された強化策・改善策としては「カリスマ社長の後継者を育成すべき」「学校や役所などをターゲット市場としたらどうか」「競争が激しそうなので、先駆者としてのブランドを構築すべき」などの意見が出された。

つぎに挙げるようなコメントから、学生の「議論する力」が向上していることがわかる。

「疑問をぶつけることで、他者の意見が自分の意見になりうると思ったし、自分の意見もさらに発展していくことがわかった」

「ディスカッションで出た意見のいいところをうまく抽出して発展させることの大切さがわかった」

「「どうして?」とか「たとえば?」とか「どうやって?」とか、簡単な質問をするだけで、議論が盛り上がった。」

「司会がいなくてもディスカッションが勝手に進んでいて、びっくりした」

「この授業を通して、人見知りが治った」


次の学生のように、今後も継続して学んで欲しい。

「今後は、自分で興味ある会社を分析して、自分の能力を高めていきたい」
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『ボクの音楽武者修行』(読書メモ)

小澤征爾著『ボクの音楽武者修行』(新潮文庫)

この本は小澤征爾氏が27歳のときに書いた本である。

名もない音楽家が単身ヨーロッパに渡り、日の丸をつけたオートバイで一人旅をしているときに、たまたま参加した国際指揮者コンクールで優勝し、一躍有名になる。

ニューヨーク・フィルの副指揮者になるまでの3年間を綴った自伝なのだが、とにかく勢いがあって、エキサイティングで面白い。サクセスストーリーなのだが純粋な関心や喜びが伝わってきて嫌味がない

この本を読むと、なぜ世界のオザワといわれるまでになったかがわかる。成長する人の姿勢が明確に表現されているからだ。

まず、小澤さんは、楽天的で行動力がある。

パリの日本大使館で、音楽の勉強に来たことを伝えると「これからどんなふうに勉強されるんですか?」と聞かれる。小澤氏の答えは「行き当たりばったりです」。

また、積極的に他人から教えてもらい、感謝する気持ちを忘れない。

すばらしいと思った音楽家には「弟子にしてください」と押しかける。カラヤン、ミュンシュ、バーンスタインから指導を受け、どんどん吸収していく。そして、現地で交流のあったいろいろな人に感謝している。

そして、なんといっても音楽が好きで好きでたまらない、ということが伝わってくる。

本書の最後の言葉が印象的である。「これから、あと五年さき、十年先にぼくがどうなっているかということは、ぼくにはまったく予測がつかないけれども、ただぼくが願っていることは、いい音楽を精いっぱい作りたいということだけだ。」

喜び、感動しながら、その瞬間、瞬間を大切にし、集中して、精一杯やりとげることの大切さがわかる本である。
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神のみこころにかなう願い

『何事でも神のみこころにかなう願いをするなら、神はその願いを聞いてくださるということ、これこそ神に対する私たちの確信です。』
(ヨハネの手紙第一5章14節)

これは、使徒ヨハネの言葉である。

神様にお願いすれば何でもかなえてくれる、というわけではないらしい。「神のみこころにかなう願い」であればOKということだ。

以前、ある牧師さんが次のように語っていた。

「神様に祈ったとき、神様の答えには3つあります。一つはYes、二つ目はNo、三つ目はWaitです」

けっこう多いのがWaitのような気がする。神のみこころにかなってはいるが、まだその時期ではない、というケースだ。YesとWaitの違いはわかりにくいが、祈り続けていれば、神様はちょうどよいときに、私たちの願いをかなえてくださるのだろう。

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学習する組織を診断する

ハーバードビジネススクールのガービンらは、学習する組織の診断ツールを提示している。彼らによれば、次の3つが学習する組織の構成要素となる。

・組織学習を支える環境
・学習プロセスと学習行動
・学習を増進するリーダー行動

もう少し具体的にいうと次のようになる

組織学習を支える環境
・気軽に意見を出す雰囲気があるか
・異なる意見を認め合っているか
・未知のものを探索しているか
・立ち止まって内省する時間をとっているか

学習プロセスと学習行動
・新しいやりかたを実験的に取り入れているか
・競合、顧客、経済の情報を収集し、幅広い観点から議論しているか
・教育を重視し、社内外から知識を得ているか

学習を増進するリーダーシップ
・上司は、他の人の意見を求めているか
・上司は、さまざまな視点を持つことを奨励しているか
・上司は、過去の業績を内省し改善するための時間、資源、場を提供しているか

言い換えると、あまり意見も言えず、前例にこだわっていたり、仕事に追われている職場では、学習が進まないといえる。

この論文自体はつっこみが足りないところがあるが、ツール自体は参考になると思った(論文には質問項目も載っている)。

修正するとすれば、「組織学習を支える環境」「学習プロセスと学習行動」がオーバーラップしているので、区分けを明確にることと、「学習を増進するリーダーシップ」を、リーダーが職場環境を設計するという観点から捉えなおすことだろう。

職場の学習風土を醸成する上で、このツールを使って定期的に現状を測定し、風土を改善していくことが有効になると思う。ガービンらが薦めているように、他部門や他組織とベンチマーキングして相対的な評価をすることも大切である。

出所:Garvin, D.A., Edmondson, A.C., Gino, F. 「学習する組織の成熟度診断法」Diamond Harvard Business Review, August2008, 118-130.
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