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ラーニング・ラボ

松尾睦のブログです。書籍、映画ならびに聖書の言葉などについて書いています。

『マルホランド・ドライブ』(映画メモ)

2025年04月09日 | 映画メモ
『マルホランド・ドライブ』(2001年、デビッド・リンチ監督)

自動車事故で記憶を失ったリタ(ローラ・ハリング)は、女優志望のベティ(ナオミ・ワッツ)の家に住み着いてしまう。

覚えているのは「マルホランド・ドライブ(マルホランド通り)」という言葉だけ。

この言葉を頼りに、2人はリタの秘密に迫っていく、という物語。

映画を観終わって愕然とした。なぜなら、全くストーリーが理解できないから。

ネットで検索してみると、リンチ監督は「映画に隠されたヒントをもとに、観る人がストーリーを解き明かせ」と言っているらしい。

こういう不親切な映画の作り方はあまり好きではないが、映画の持つ「雰囲気」だけは良かった。

『春に散る』(映画メモ)

2025年03月28日 | 映画メモ
『春に散る』(2023年、瀬々敬久監督)

題名がシブイので観てみた。

米国でビジネスマンとして成功した元ボクサーの仁一(佐藤浩市)が帰国し、若きボクサーの翔吾(横浜流星)と出会う。

仁一の指導を受けることになった翔吾が、二人三脚でチャンピオンを目指すという物語。

横浜流星の動きが本格的だと思ったら、子供の頃から極真空手を習っており(中学世界チャンピオン)、プロのライセンスも取得したことがわかり(ネット情報)、納得。

ちなみに、翔吾はかつて仁一が所属していたボクシングジムで練習していたものの、ちょっとしたトラブルで別の小さなジムに移ることになる。

このジムでは、子供たちもボクシングを練習しているのだが、そこに掲げてある看板に感動した。

「王者のベルトよりも心のベルトを!」「元気が一番」

こうしたスピリットが映画のラストにも反映されているのが良かった。

『折り梅』(映画メモ)

2025年03月07日 | 映画メモ
『折り梅』(2001年、松井久子監督)

1人で暮らしていた高齢の政子(吉行和子)は、息子の家に同居することに。

すると、しっかりしていた政子が、とたんに痴呆になってしまう、という物語。

前半は、政子と嫁であるトモエ(原田美枝子)の確執がすごく、家族もバラバラになりかけるが、後半は意外な展開に・・・。

おばあさん役としては、吉行和子が若すぎると思っていたが、次第にその演技に引き込まれた

関係が改善してきたきっかけは、政子の辿ってきた人生をトモエが聞いたこと。

やはり、その人の背景がわかると、距離感が縮まるのだろう。



『博士と彼女のセオリー』(映画メモ)

2025年02月21日 | 映画メモ
『博士と彼女のセオリー』(2014年、ジェームズ・マーシュ監督)

スティーブン・ホーキングを描いた作品。

妻ジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)とホーキングの葛藤の物語。

ホーキング役のエディ・レッドメインの演技が凄い。

ALSの症状が重くなるにつれて、ジェーンとホーキングの関係が微妙になり、お互いに不倫的なパートナーに頼ってしまう。

理想的には、夫婦が支え合って乗り越えればよいのだろうけれども、どうしても支えてくれる他者を求めてしまうところがつらい。

信心深いジェーンと、無神論のホーキングの取り合わせも悪かったのかも。

なかなかリアルな作品だな、と思った。


『達人』(映画メモ)

2025年02月07日 | 映画メモ
『達人』(2021年、横尾初喜監督)

アキラ100%こと、大橋彰主演のコメディ―&アクション映画。

巷の評価はとても低いが、個人的には楽しめた。

資産家の娘(祖父・祖母・両親は亡くなっており、お手伝いさんと2人暮らし)である牧田静子(安倍萌生)の家を訪れた達人(大橋彰)だが、静子の部屋(2階)から誤って落としてしまった鉢植えが頭に直撃し、記憶喪失になってしまう

記憶はないが、「自分は何かの達人だったはず」ということは覚えていたので、「達人(タツヒト)さん」と呼ぶことに。

それからは、何の達人だったのかを思い出してもらうために、剣道、書道、料理などの腕前を試すのだが、とんでもない過去と事実が明らかになるというストーリー。

印象に残ったのは、記憶のないタツヒトの「優しさ」と、記憶を取り戻したタツヒトの「職業(ヤバイ系)」のギャップである。

本来は良い人であったにもかかわらず、きびしい人生を歩んでいるうちに、本来の自分を見失ってしまうことがあるのかもしれない、と思った。



『Perfect Days』(映画メモ)

2025年01月23日 | 映画メモ
『Perfect Days』(2023年、ヴィム・ヴェンダース監督)

東京の公共トイレを掃除する平⼭(役所広司)は、毎日のルーチンがある。

朝起きて、布団をたたみ、歯を磨き、植物に水をやり、朝食の缶コーヒーをアパートの前にある自販機で買い、車の中で古い洋楽を聞きながら担当しているトイレに向かう。

そして、トイレを丁寧に掃除して、昼はサンドイッチを食べながら、木の写真を撮る。

仕事が終わると、駅ナカにある飲み屋で、焼酎の水割りと食事をとり、寝る前には本(ちょっと難しめ)を読み、寝る。たまに、美人ママ(石川さゆり)がいるスナックで酒を飲む。

そんな一日が何回も繰り返される場面が写されるが、微妙に新しいことが起きる、という物語。

僕は自分のルーチンを頑なに守る派なので、とても共感できた。

この映画の冒頭の感じでは、ちょっと怖い展開になるのかとビビッていたが、そんなことはなく(ただし、それなりの展開はあるが)、「日々平安が何より」というメッセージ伝わってきて、ホッとした。

正直言ってラストの展開には納得いかなかったが(役所広司の演技は凄いのだけれど)、全体的にいうと、さすがヴィム・ヴェンダース、という感じであった。



『みとりし』(映画メモ)

2025年01月09日 | 映画メモ
『みとりし』(2019年、白羽弥仁監督)

娘を亡くし、妻とも疎遠になった柴 (榎木孝明)は、部長として勤めていた会社を辞めて、看取り士となる。

ちなみに、「看取り士」とは、末期の患者さんが希望する形で死を迎えられるように、患者や家族に寄り添いつつ見届けるプロフェッショナルである。

5年後、看取りステーションの管理職となった柴が、新人看取り士めぐみ(村上穂乃佳)の成長をサポートする過程が描かれているのが本作。

前半は高齢者の看取りなのだが、後半は、小さい子供を抱えた若いお母さんを看取るため、涙なしには観ていられない。

そんな中でも、看取り士が、死に向かうお母さんだけでなく、お父さんや子供たちを支えながら「意義のある死」を迎えてもらうように支援している様子に感動。

『看護のなかの死』(寺本松野著、日本看護協会出版会)という本を読んだとき、「病床の中で家族や肉親の愛を感じることができた人は幸せな死を迎えていた」ことを思い出した。

『小さき麦の花』(映画メモ)

2024年12月19日 | 映画メモ
『小さき麦の花』(2023年、リー・ルイジン監督)

この映画は泣ける。

中国の農村で暮らすヨウテイ(ウー・レンリン)は貧しく、兄のやっかいになる独身中年。

ある日、病気もちの女性クイイン(ハイ・チン)と(強制的に)お見合いさせられる(厄介ばらい)。

粗末な家で暮らすようになった純粋な二人は、麦やトウモロコシを育て、自分たちの力で(土レンガの)家を建て、徐々に普通の暮らしができるようになっていく。

言葉は少ないけれども、お互いを思いやる二人の様子が心にしみる。

しかし、そうは問屋が卸さないのが世の中。

ラストが近くなると、切なすぎて観ていられなくなった。

夫婦の関係、人の生き方について深く考えさせられる映画である。

『人生クライマー:山野井泰史と垂直の世界』(映画メモ)

2024年12月07日 | 映画メモ
『人生クライマー:山野井泰史と垂直の世界』(2022年、武石浩明監督)

世界的なクライマーである山野井泰史についてのドキュメンタリー映画。

以前、山野井さんを書いた『凍』(沢木耕太郎)を読み感動したが、この映画も凄かった。

登山のために、日々、近所の岩場などでトレーニングしている山野井さん。

びっくりするくらい岩登ったり、山登ったりするのが好きなんだよね」という言葉を聞いて、「たまらなく好きなことを見つけろ」というジョブズの言葉を思い出した。

ちなみに、山野井さんは単独登攀で有名。なぜ一人で登るのか?という問いにたいしては

二人より、三人より充実感がある」との答え。

これはわかる。自分も単著(1人で書いた論文や書籍)が多いからだ。

本作を観ていて驚いたのは、クライマーの多くがかなりの確率で亡くなっていること。

山野井さんは言う。

「一人で登っているぶんには死なないという自信がある」
「自分のレベルを把握している(から死なない)」
「死ぬかもしれないなと結構思ったりしますが、それがないと面白味がない」

なお、多くのクライマーが未踏ルートにこだわる。

これについては共感できた。なぜなら、研究も「新しい発見」にこだわるからだ。

しかし、死を賭けて挑むかと言われたらノーである。

あらためてクライマー達の凄さを感じた。

『ルックバック』(映画メモ)

2024年11月21日 | 映画メモ
『ルックバック』(2024年、押山清高監督)

アニメ映画はあまり観ないのだが、アマプラメニューにあったのでクリック。

実写を超えるような描写が心に沁みた。

4コマ漫画が得意な小学4年生藤野と、不登校の京本(二人とも女子)が、マンガを通して成長する物語(大人になるまで)。

デッサン力を磨くため、二人が描きこんだスケッチ帖の山が部屋の前に積まれている場面が印象的である。

才能だけではなく、たゆまぬ努力が必要であるという作り手のメッセージが伝わってきた。

本作の凄さは、ストーリーというよりも、主人公たちの思いを描く独特のテイスト

アニメの潜在力に驚いた。

ネタばれになるので詳しく書けないが、吉田松陰の『留魂録』に出てくる「人間にはふさわしい春夏秋冬がある」という箇所を思い出した。