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少しだけ後押し

昨日紹介した「店長のリーダーシップ」特集の中で、覚方守氏の記事が面白かった。

覚方守氏によれば、これからの時代を乗り切る小売業の店長は、「引っ張る」だけでなく「後押し」する力が大切になるという。

ここでいう「後押し」とは何だろうか?氏は次のようにコメントしている。

「構成メンバーが悩んだとき、相談を受けて、少しだけ後押ししてあげるのが、店長のリーダーシップであるといえます。」

この部分を読んで「少しだけ」という点が大事だと思った。問題に直面することは従業員にとって成長のチャンスである。しかし、上司が介入しすぎると自分で考える機会を奪ってしまう。かといって、まったく何もしなければ、部下は途方にくれてしまうだろう。

「少しだけ」後押しすることは、部下が自律的に行動し成長するためのカギとなる、と思った。

出所:「”変わる”店長のリーダーシップ」販売革新2009 March, p.53-57.
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数字づくりより、人づくり

販売革新3月号に掲載されていた「店長のリーダーシップ特集」を読んだ。

心に残ったのが、ライフ千川駅前店の新井信利店長の言葉。

新井氏は、笹塚店、仲宿店の惣菜チーフを務めていたとき、惣菜の売り上げを前年比で130%アップさせる実績を上げていた。しかし、他の店に異動したとたん、前の店の売上はダウンしてしまったという。新井店長は当時を以下のように振り返っている。

「当時は数字を上げることが信念でしたが、後で考えると、それは店や会社としては良くないことだと考えるようになりました」

店長になってからの方針は、「数字づくりより、人づくりを優先する」である。

具体的には、次のことを実践しているという。

・わかりやすく伝える
業務改善をすすめるため、「探さない」「歩かない」「焦らない」(定位置管理、作業導線短縮、基本動作の習得)というキーワードを使った。

・耳を傾けて、質問する
本音を聞いて、潜在能力を伸ばす。

・共に取り組む
自分でやってみないと何が問題かわからない。自分から動くと部下はついてくる。

「伝え」「聞き」「共働する」とき、「人づくり」が可能になる、ということだろう。

出所:「”変わる”店長のリーダーシップ」販売革新2009 March, p.62-63.
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顧客満足度で業績評価

北米最大のレンターカー会社である「エンタープライズ・レンタカー」では、マネジャーの業績評価の際に顧客満足度を加味している。

同社では、いくら売上面での成績が優秀でも、全社平均以上の顧客満足度スコアを達成できなければ、マネジャーは昇格することはできない。

なぜそこまで顧客満足度にこだわるのか?

それは、リピート顧客の確保がレンタカービジネスの成長の唯一の方法だからである。ちなみに、「まあまあ満足した」と答えた顧客と「非常に満足している」と答えた顧客を比べると、再利用意向は3倍の違いがあるという。

つまり、満足度の平均値を取ることにはあまり意味がない。あくまでも「非常に満足した」と答えた顧客が全体の何パーセントいるか、が大切になる。5段階評価でいうと「5」と「4」の差は大きい。

同社では、2001年に「非常に満足した」と答えた顧客の全社平均が70%に達し、それに比例するように市場シェアも拡大しているらしい。

顧客満足度の測定は、コストがかかるものの、マネジャーや支店の学習を促す上で効果的なツールになりそうである。

出所:Diamond Harvard Business Review, November 2007, p174-175.「エンタープライズ・レンタカー:顧客満足度で社員を評価する」
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神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに

『神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。』
ヨハネの福音書3章16節
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『たった一人の反乱』(読書メモ)

丸谷才一『たった一人の反乱』講談社文芸文庫

この小説に出てくる、エリート意識丸出しの主人公は好きになれないが、状況設定やストーリー展開は「さすが丸谷才一」という感じがした。

読んでいる途中、タイトルにある「たった一人の反乱」ってどういう意味だろうと思っているうちに読み終わってしまった。そのあと、じわじわと伝わってくるものがあった。良い小説とはそういうものかもしれない。

私たちは、毎日、毎日、変わりばえのしない日々を送っている。何か変化を起こそうとするとエネルギーがいる。しかし、何かが変化すると(誰かが反乱をおこすと)、その平穏な毎日に波がたち、私たちが乗っている船が揺れ出す。

下手をすると波が大きくなって転覆する恐れもある。しかし、その大波を乗り越えたとき、人が成長したり、人と人の絆が強くなる。そういうことかな、と思った。
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プレゼンの観察学習

昨日は前期最後の授業。学生二人から事例(オーダーチーズドットコムとDHC)を紹介してもらい、いつもの「個人分析→グループディスカッション→プレゼンテーション」を2サイクル実施した。

前期の授業で感じたことは、学生のディスカッション力プレゼンテーション力が向上したこと。

ディスカッションの方は、毎回グループ討議をしているので、力がつくのはわかる。学生も「初めての人でも臆することなく話せるようになった」「深い話ができるようになった」とコメントしていた。

これに対し、150名以上の履修者がいるため、プレゼンする機会はせいぜい1回。にもかかわらず、回を追うごとに上手くなっている。学生たちはポイントを押さえて、制限時間1分以内にうまくまとめることができるようになった。

これはたぶん、観察学習によるものだろう。「あの人上手いなあ」「ああいうふうに要点を絞ればいいのか」「あの説明じゃわかりずらい」というように、手本や反面教師となるプレゼンを観察することで、学生は自分の中で無意識のうちにイメージトレーニングをしていたのではないか。

こうした学習が可能なのも、若いからかもしれない。
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苦労していないと尊敬されない日本

全日空の機内誌『翼の王国』に「おべんとうの時間」というシリーズがある。いろいろな人々が登場して、その日のお弁当とともに、働きぶりや生活の様子が紹介されている。

これまで、馬の飼育係の女性とか、高速道路の料金所のおじさんとか、藁ぶき職人といった方々が登場している。いろんなお弁当の写真が紹介されるが、なぜか「卵焼き、ホウレンソウ、ウィンナー」というおかずが多いような気がする。日本の文化なのだろうか。

7月号に登場したのは外資系銀行に勤務するバタルー・プジョールさん。お弁当は、フランスの女性らしく、パエリア風のごはんと焼きりんご。

プジョールさんが、日本の職場について次のように語っているのが印象に残った。

「日本人って、苦労していないと尊敬されないでしょ。フランスでは楽しんでいないと尊敬されない。」

「外国人の目から見ると、日本の社会はプレッシャーが大きくて、みんな心の中で葛藤しているように見えます。失敗したら許してもらえないっていう空気がある。たぶん、ヨーロッパの国では、その点がもっと自由で、失敗しても次があるよっていう考え方ですね。」

この記事を読んで「やっぱりそうなんだ」と思った。僕が、日本の社会について日ごろ感じていることと同じだからだ。日本では、長時間働くことや、つらいことを我慢することが美徳とされている。明るいうちに家に帰ると、なんとなく罪悪感がある。

ただ、「ハードワーク文化」「我慢して頑張る文化」は日本の良いところでもあり、僕は結構好きである。これまでの日本の発展を支えてきた「ドライバー」となる価値観だと思う。

しかし、心理学や経営学の研究によれば、人が成長するためには、「がんばること」に加えて、「楽しむこと」や「失敗しても大丈夫という安心感」が欠かせない。

楽しみながら苦労している人が尊敬される社会」になったとき、日本が進歩したといえるのではないか、と思った。

出所:『翼の王国』2009年7月号、p.83-85.
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試練に耐える人は幸いです

『試練に耐える人は幸いです。耐え抜いて良しと認められた人は、神を愛する者に約束された、いのちの冠を受けるからです。』
(ヤコブの手紙1章12節)
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『学ぶ意欲とスキルを育てる』(読書メモ)

市川伸一『学ぶ意欲とスキルを育てる:いま求められる学力向上策』(小学館)

学校教育について書かれた本であるが、企業における人材育成についても多くの示唆が含まれている、と感じた。特に、以下の3点が大事だと思う。

1)「学んだ力」vs「学ぶ力」
学力は「学んだ力としての学力」と「学ぶ力としての学力」に分けられる。前者は、知識、読解力、論述力など、後者は、学習意欲、学習計画力、学習方法などを含む。

「学ぶ力」は、知識を獲得するための、車のエンジンのようなものである。しかし、今の学校では手がつけられていない。

市川先生は、学習の方法にまつわる問題を解決するために「認知的カウンセリング」という概念を提示している。要は、学習方法について子供がどこでつまづいているかをカウンセリングし、自立して学べるようにサポートする試みである。

2)「基礎から積み上げる学び」vs「基礎に降りていく学び」
「基礎から積み上げる学びとは」系統的に基礎から応用へと進む学び方であり、「基礎に降りていく学び」とは、まず目的や意義を感じさせてから、基礎訓練をする学習方法である。

テニスの練習にたとえるなら「ランニングや腕立てで基礎体力を造り、ラケットの素振りをして、やっとテニスの試合をするやりかた」が基礎から積み上げる学びであり、「まずテニスの試合の面白さを味わってもらってから、基礎練習の大切さに気づかせるやり方」が基礎に降りていく学びである。とてもわかりやすいたとえだ。

3)「教えずに考えさせる授業」vs「教えて考えさせる授業」
自己学習力を高めるために「自分で考えさせる」ことを強調する教師がいる。しかし、十分な説明をしないままに考えさせるものだから、結局生徒はわからない。こんな授業が増えているという。

そこで市川先生が提唱するのが、「教えて考えさせる授業」。基本的なことをしっかり教えてから、自分で説明させたり、応用的な課題に取り組ませる方法だ。教え込みすぎず、ある程度のところまできたら、自分で考えさせるところがミソである。

さて、以上3点は、企業においても問題になっていることではないだろうか?

・仕事の成果ばかりに目がいき、「仕事の方法」を改善することに注意がいっていない
・とにかく忍耐して仕事をし、かなり年月が過ぎた後でやっと仕事の面白さがわかる(その間、人がボロボロと辞める)
・あまり仕事を教えずに「背中を見て技を盗め」的な教育方法をとっている

などなど。

市川先生の考え方を採用するなら
・成果が上がらない人の「仕事の進め方」について、認知的カウンセリングをする
・仕事の目的や意義を味わってもらってから、基礎的な訓練や仕事をする
・仕事の基本をしっかりと教えてから、応用的な部分を自分で考えさせる
という具合になる。

子供の教育も、大人の教育も原理は同じである。
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成功サイクル、失敗サイクル

サービスマネジメントの研究によれば、顧客満足を高めるためには、従業員満足(仕事のやりがいや意欲)を高めなければならない。逆にいえば、従業員が生き生きと働いていない組織は、顧客を満足させることはできない。

火曜日の授業では、「成功サイクルと失敗サイクル」というモデルを検討した。

成功サイクルとは、「採用に力を入れて資質のある人材を雇う→魅力のある仕事を用意して、適切な賃金を支払う→しっかりと教育訓練する→サービスクオリティが高まり、離職率が低下する」というものである。

逆に、失敗サイクルは「採用に力を入れず誰でも雇う→やりがいのない仕事をあてがい、賃金も低い→最低限の訓練しかしない→サービスクオリティが低下し、離職率が高まる」という悪い流れのこと。

要は、「採用」「職務設計」「評価・報酬」「教育訓練」などの人的資源管理をしっかり行うことで、優秀な人材が定着し、サービスのクオリティも上がるというモデルである。

上記のすべてを高めることは難しいが、どこかに手をつけて少しずつ改善すれば、前に進むことができる。

授業では、ある学生が「バイト先のスーパー」の事例を発表してくれた。このスーパーでは、仕事の内容や賃金には手をつけることができなかったものの、「採用面接で、しっかりセレクションし」「ミーティングを毎日実施して情報共有」をすることで、サービスの質が向上し、辞めるバイトも少なくなったらしい。

一歩踏み出すことで、失敗サイクルから抜け出す道が開ける、といえる。
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