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『岸辺の旅』(読書メモ)

湯本香樹実『岸辺の旅』文春文庫

『夏の庭』で世界的に有名になった著者の小説。

才能に満ち溢れた文章である。

3年前に失踪した夫・優介が家に帰って来て、その後、共に旅に出る瑞希。ただし、夫はこの世の者ではない

「私たちはもう二度と、私たちの家でもとどおりに暮らすことはできない。ただ日ごとに近づく何かわからないものに向かって、進んでいくことしかできない・・・・・でもこの安らかさは何だろう。なぜ今になって私は、こんなところで、こんなに安らいでいるのだろう・・・・・」(p.102)

いろいろなことがあった夫婦が、旅する中で、わかりあっていくプロセスが良かった。

安らかさ」を感じながら生きることは難しいが、安らかに生活したい、と思った。

カバー画に使われている相原求一朗の絵も美しい。








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『エジゾンズ・ゲーム』(読書メモ)

『エジゾンズ・ゲーム』(2019年、アルフォンソ・ゴメス=レホン監督)

直流式送電を提唱するエジソン(ベネディクト・カンバーバッチ)と、交流式送電を提唱するウエスティングハウス(マイケル・シャノン)の闘いを描いた映画。

エジソン=癖が強い男、ウエスティングハウス=いい人」として描かれているのをみて、「ユング=女癖が悪い男、フロイト=常識人」という図式だった『危険なメソッド』を思い出した。

本作を観て感じたことは、「天才=独善的」であるということ。

エジソンのキャラクターが、マルクス、ジョブス、ザッカーバーグと重なる。

なお、エジソンの発明は電球や電送だけにとどまらず、映画や蓄音機もあるため、一つの勝負で負けても、他のもので勝負できるという「懐の深さ」がある。

才能があふれ出している「天才の中の天才」である。




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どうか、あなたのお住まいである天から耳を傾け、聞き届けて、罪を赦してください

どうか、あなたのお住まいである天から耳を傾け、聞き届けて、罪を赦してください
(歴代誌下6章21節)
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『算法少女』(読書メモ)

遠藤寛子『算法少女』ちくま学芸文庫

時は江戸時代。

医師である・千葉桃三の娘「あき」は算法が大好きな少女

当時の算法の中心が「関流」なのに対し、千葉家は「上方算法」。そのため、「関流vs上方」の闘いがあったりして、数学の世界も「流派争い」がある。

少女ながら算法の才能を発揮するあきが、数学好きの久留米藩主・有馬候の目にとまったことで、ここでも「関流vs上方の闘い」が勃発する。

ただ、こうした政治的な戦いとは別に、あきが寺子屋に行けない子供たちのための教室を開いており、そこが印象的である。

「算法の世界で自分の名を上げる」ことと、「学びたい子供たちを教える」こと。

どちらをとるかで、その人の生き方がわかる。

「朝ドラ」的にも楽しめる本書だが、意外と深い、と思った。





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『リリィ、はちみつ色の秘密』

『リリィ、はちみつ色の秘密』(2008年、ジーナ・プリンス=バイスウッド監督)

この映画の冒頭は、幼いリリィ(ダコタ・ファニング)が、喧嘩している両親を見ている場面から始まるのだが、なんとリリィが銃を暴発させて、母親を殺してしまう。

その後、「お母さんは他に男を作って、自分を捨てた」という思いに悩まされるリリィは、14歳のときに家を出る。そして、養蜂を営む黒人三姉妹の家(ボートライト家)で暮らしながら、トラウマと向き合うという物語。

公民権運動が吹き荒れる1960年代のアメリカの人種差別問題と絡めながら、「人生とどう向き合うか」を問う本作。

とくに、ボートライト家の黒人三姉妹、オーガスト( クィーン・ラティファ)、ジューン(アリシア・キーズ)、メイ(ソフィー・オコネドー)のキャラクターが際立っており、引き込まれた。

人は、程度の差はあっても、何らかのトラウマを抱えている。それとどう向き合うかが人生を決めるのだろう、と思った。




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暗闇に追いつかれないように、光のあるうちに歩きなさい

暗闇に追いつかれないように、光のあるうちに歩きなさい
(ヨハネによる福音書12章35節)

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『花神』(読書メモ)

司馬遼太郎『花神(上・中・下)』新潮文庫

幕末・明治に活躍した長州藩出身の軍事家である村田蔵六(のちの大村益次郎)

もともとは村医であったが、緒方洪庵が主宰する適塾の塾頭になり、語学力を買われて軍事関連の翻訳を任され、そして長州藩・新政府軍の司令官となる。

彼のどこが凄いかというと、戦争の経験はまったくないのに、書物だけから軍事の本質を理解し、優れた司令官になったこと。

蔵六の強みは、語学力、本質把握力だけでなく、ものごとを「技術」としてとらえる力にある。

そもそも、蔵六自身が感情的な人ではなく、技術的な人であり、そのパーソナリティを生かしたことで、日本の軍隊の基礎を作ったといえる。

なお、本書を読んでもう一つ感じたことは、日本人の変わり身の速さである。それまで蘭学中心だったのに、オランダを捨てイギリス、フランスに乗り換えているのだ。

「また江戸期の早い時期から蘭方外科がまがりなりにも定着した。そういういわばオランダの恩に対して、日本人はべつに感謝することもなく、「これからは英学の時代ではあるまいか」と、そろそろオランダ語という文明づくりの道具をすてようとするきざしがみえてきたのである。げんに幕末のぎりぎりの時代では、洋学といえばもはや蘭学ではなく、英学か仏学になった」(上巻, p. 407)

古い知識を捨て、新しい知識に入れ替えることを「アンラーニング」というが、意外と日本人はアンラーニング力を持っているのかもしれない、と思った。




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『ステップ』(映画メモ)

『ステップ』(2020年、飯塚健監督)

幼い娘を残して妻が亡くなった後、父親である健一(山田孝之)が再婚せずに娘を育てる10年間の物語。

やはり、山田孝之が上手い。

出勤前に娘を保育園に送り届け、残業のない部署に異動させてもらい、6時には保育園に迎えに行き、炊事洗濯した後は、くたくたになる健一。

「これは大変だ」と思いながら観ていたが、働きながら子育てをしているお母さんたちは、これをしていることに気づいた(もちろん、お父さんも協力しているのだろうが・・・)。

義父・義母、保育園の先生、会社の同僚・上司に支えられながら、何とか仕事と育児を両立しようとする健一を見ていると、「つながり」の大切さが伝わってくる。

人生にはいろいろなステップがあるが、一人で歩んでいるわけではないことを改めて感じた。






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高い者は低くされ、低い者は高くされる

高い者は低くされ、低い者は高くされる
(エゼキエル書21章31節)

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『さあ、じぶん才能(じぶん)に目覚めよう』(読書メモ)

トム・ラス(古屋博子訳)『さあ、じぶん才能(じぶん)に目覚めよう【新版】:ストレングス・ファインダー2.0』日本経済新聞出版社

著者によれば、強みの方程式は次のようになる。

強み(成果を生み出す能力)=才能(思考、感情、行動パターン)×投資(練習やスキル開発にかける時間)

「最も成功している人は、その人が持つ高い才能を起点にしてスキルや知識を身につけ、練習を積んでいる」(p. 22)

本書は、人間が持つ資質を34に分けて、その内容を解説したものである。

辞書的・マニュアル的ではあるものの、「学習欲、共感性、コミュニケーション、慎重さ、着想、内省、未来志向」といった資質についての説明を読むと、人間の多様性に気づくことができ、ちょっと感動してしまった。

なお、本書には、資質を診断するツール「ストレングス・ファインダー2.0」にアクセスできるコードがついており、自分の資質を無料で診断してくれる。

あなたの資質ベスト5」がフィードバックされる仕組みになっているのだが、僕の場合、これが結構「当たっていた」。

自己理解のための有益な一冊である、といえる。




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