柳蔭書翰

徒然なるままに、音楽関連の話題に拘らず、常ならんこの世の事々書き散らし諸兄のお耳汚しに供したく思います。

鉄ちゃん

2009-01-11 08:24:54 | Weblog
鉄道好きの話をもう少し。映画やドラマに汽車電車が重要な役割を持つものが多いでしょう。最近の西村京太郎シリーズは時刻表の組合せのトリックが主ですが(小説を読んでません、ひたすら土曜の昼の刑事モノ検察官モノTVドラマ再放送分を見るだけのことですが)、昔の映画には列車自体が印象的なものが多いです。渥美清が車掌役で主演の喜劇映画ではブルートレイン(特急さくらでしたね)が舞台になってました。松本清張ものの映画も多いです、私の大好きな映画なんですが「張込み」では東京から九州長崎まで繋ぐ夜行の急行列車のシーンから始まります。いきなり引き寄せられます、食い入るように見てしまいます。蒸気機関車が引っ張ってます。昭和30年の映画です、舞台は佐賀なんですがそこに着くまでの車中車外の風景がいいんです、小郡(だったと思います)駅も映るんです、白黒で何とも風景がいいんですね。寝台列車じゃありません、普通の堅い四人掛けの椅子の客車です。東京を夜に出て、名古屋辺りで夜が明けて、佐賀に着いたら夜になってる。この時間の流れがいいですよね。飛行機使わぬ限りこの流れに従うしかない、丸一日掛けて出かけるしかないという時代。ゆっくり流れていたと表現できるんでしょうが、それは急からしい現在と比較すればの話、その当時はそれしかなかったんですから従うばかりだったんですが、物事を考える時間がそういう風にできていたと言うことはできるのかなと思います。「点と線」も、これも九州が舞台で、有名な東京駅のトリック、他のホームを見通せる時間帯の妙だけでなく、当時の九州の田舎駅前の風景が何とも郷愁をそそります。もう一つ、題名ど忘れしました、本編は三船敏郎や仲代達也がキャスティングされた少年取り違え誘拐事件の映画、走る車窓から身代金を投げ落とすシーンが有名ですが、あの電車は当時の花形特急こだまでしたね。「点と線」もこの映画も最近リメイクされてTV放映されましたが、オリジナルには到底届かぬものでした。俳優の重さもさることながら、私のような者には時代の空気が何より重要な要素なので端から勝負にはならぬことでしたが。つまり私の懐古趣味の強さだけが律速要素だということですが、いつも言ってますが私の世代が昔と現代との境を知っている最後の集団、昔の(貧乏だった)日本の空気を知っている最後の世代なんだろうと思うのです。昔のシーンに郷愁を感じる最後の世代、単なる記録映画的な見方以上の思いを感じている、ということなんでしょう。九州行きブルートレインの廃止計画から長々と書きました。九州の果てから花の東京を結ぶ列車。どちらからも遠い片田舎の、通過駅近くに住む私にとっては、東京なり西鹿児島なり行き先を誇らしげに掲示して走るこの寝台特急はうっとり眺める対象でした。今も遠くに見遣っています。気持ちに大きく変わりはないと、思っています。
コメント
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