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ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

ボジョレー・ヌーヴォーの歴史をさかのぼると…

2014-11-25 10:00:01 | ワイン&酒
今でこそ、ワインは古い年代物の方が価値がある、とよく言われますが、歴史をさかのぼると、ワインは新しい方が価値がある! とされた時代がありました。

保存技術が発達していなかった時代には、質の悪い樽を使って保存しようものなら、仕込んでから1年が過ぎる頃にはワインが酢のように酸っぱくなり、飲めたものではなくなってしまったからです。

当然、フレッシュでフルーティな、出来立ての新しいワイン が待ち望まれました。

中世のフランスでは、領主や修道院、司教などが古くからブドウ畑を所有し、彼らが新酒を最初に販売する権利や販売独占権を持っていました。
その後は富裕層などもワインを保管するようになりますが、ワイン供給量は限られており、品薄で暴動が起きたことも多々あったとか。
だからこそ、ブドウの収穫は素晴らしいことで、新酒は喜びをもたらすもの だったんですね。



とはいえ、ボジョレー・ヌーヴォー の形が見えてきたのは第二次世界大戦後の1950年代のこと。

1951年の法令で、1951年のAOCワインは12月15日以降にしか販売できないとなりました。
しかし、ボジョレーの生産者たちは、ボジョレーのワインは新酒であるから早く販売したいと申請し、これが認められ、1951年11月13日、この日以降に今すぐ販売できるAOCワインが特定されました。
その中に、AOCボジョレーが入りました。

解禁日はその後、年によって変動し、1967年には11月15日に固定されたのですが、新しい改定が1985年に行なわれ、ここで現在の「11月の第三木曜日」となりました。
1985年とは、意外にも新しくないですか?

国外への輸出は1960年代末頃からで、ヨーロッパ各国を皮切りに、北米、1982年に豪州、1985年にはイタリアと日本へ、1990年代には東南アジアと、次々と広がっていきます。

日本へは、11月の第三木曜日を解禁日とした1985年に輸出が始まったのは、“時差”の戦略もあったのでしょうか?

すぐにバブルの波にも乗り、日本は世界でいち早くボジョレー・ヌーヴォーの解禁日を迎えることのできる国 ということで、解禁日の前夜は空港近くのホテルでカウントダウンイベントが開催されていた記憶が残っています。

バブルが弾けた後、1990年代後半の赤ワインブームで、またボジョレー・ヌーヴォーの人気が盛り返し、XX年に一度の当たり年というキャッチコピーにも後押しされ、2001年には日本がボジョレー・ヌーヴォーのNO.1の輸出国 となりました。
以来、日本の独走は続いています。



2013年の実績では、ボジョレー・ヌーヴォーの出荷量130,000hlのうち100,000hl(約1,500万本)が国外110カ国に輸出されましたが、1位は日本の52,183hl(700万本)で、2位のアメリカ 13,311hl(180万本)、3位のドイツ 5,500hl(73万本)を大きく引き離しています。

フランス国内で最もボジョレー・ヌーヴォーが売れたパリは9,100hl(120万本)でしたから、いかに日本が飛び抜けているかがわかりますね。



2014年は、昨年よりは日本への輸出量が減少しているようですが(収穫量の見込みが800,000hlと言っていました)、例年のヌーヴォーの30%は日本向けだそうです。

日本でも、ヌーヴォーだけでなく、他のワインにもぜひ目を向けてほしいところではありますが…

実際、近年は、ボジョレー以外の新酒、イタリアのノヴェッロやオーストリアのホイリゲ、日本の新酒のアピールもあり、そちらへの関心の増加や、ボジョレーへの熱狂的な傾倒の落ち着きから、ボジョレー・ヌーヴォーの日本への輸出量は、ピーク時の約半分か?と言われています。
他に目が向いてきたのはいい傾向だと思います。

本家ボジョレー・ヌーヴォーも、新樽で熟成させたもの、古木のブドウで仕込んだもの、ビオやオーガニックのもの、ノンフィルターのもの等々、なんらかの付加価値を付けたものがピーク時前後から増え、消費者の関心を惹きつけようという努力が見られます。ロゼも出てきましたね。
そういえば、3年ほど前に登場したペットボトルのヌーヴォーにも賛否両論がありました。
来年のボジョレー・ヌーヴォーはどうなっているでしょうか?

ということで、ひとまず今年のボジョレー・ヌーヴォーの話はこれで一区切りとします



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