麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第382回)

2013-06-02 00:26:30 | Weblog
6月2日


「『白痴』や『悪霊』でおかしたような誤りを避けること。つまり、真実を直截に説明せず、かわりに(たくさんの)二次的な事件を、最後まできちんと言い切らずにほのめかすいかにも小説じみた形で描写し、出来事やさまざまの場面のなかで、長大なスペースをとって延々と引き延ばし、そのくせ説明は少しもせず、推測やほのめかしで示した、そういう誤りを避けること。」(『未成年』創作ノートより)

もう、ふき出すほどおかしい。自分でも悪文だという自覚はあったんですね。でも『未成年』でも結局同じ誤りを繰り返している。自分をコピーしているのでなく、毎回別のことをしようとしているのに同じになってしまう。それが本当の個性でしょう。そうして、じつは、毎度繰り返す、そのほのめかしや、一読したのではわけがわからないように見える部分に作者の偉大さも宿る。

まあ、現代の、日本の、したり顔の文芸編集者がついていたら、ドストエフスキーの小説はけして現在見られる形で発表されることはなかったでしょう。一見知的に、文芸的に刈り込まれ、お上品に仕上がり、と同時に偉大な部分もすべて削除されていたことでしょう。毎日量産され消費される見栄えのいい文芸商品のように。でもそんな作品だったら、100年後の人間は誰も読みはしなかったでしょう。

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