麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第156回)

2009-01-31 22:19:21 | Weblog
1月31日


立ち寄ってくださって、ありがとうございます。

ついに『移動祝祭日』(新潮文庫)が出ました。
すでに読了しました。
すばらしい。まるでもうひとつの『日はまた昇る』を読んだような感じ。
これまで名前と顔写真くらいしか知らなかったシェイクスピア書店(『ユリシーズ』の版元)のシルヴィア・ビーチや、『グレート・ギャツビー』を出したばかりのフィッツジェラルドなどの姿が活写されていて、なにかビデオでも見せられたかのように(いや、それ以上に)リアルに彼らを感じることができました。
もちろん、書かれた対象のことが感じられるのがうれしいだけでなく、彼らとやりとりをしている若き日のヘミングウェイ、またこれを書いているときのヘミングウェイの気分や鼓動までが伝わってくるようで、約2時間読書に没入しました。余韻も強力です。



他にも、今週は、
角川文庫から河合祥一郎さんの
『新訳 マクベス』が出ました。これもすばらしい。
これで新訳は5冊になりました。

ただ、角川文庫はよくカバーのデザインを変更するので、同じ著者のものでも買った時期によって背中のデザインが違い、本棚に並べるとなにか統一感がなくなっていやな感じです。もう少し長くひとつのデザインで続けることはできないのでしょうか。



では、また来週。
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生活と意見 (第155回)

2009-01-24 08:41:24 | Weblog
1月24日


立ち寄ってくださって、ありがとうございます。

ブログを始めて、なんともう3年。
今年の正月、更新できなかった週が一度ありましたが、それ以外は、なんとか心の具合が最悪のときも週一のペースで続けてきました。続ける意味は、人生と同じで、もはやとくにはないのですが。

毎年、世界が狭くなっていくような感じ。頭の中でマス目が黒く塗りつぶされて、残りの領域が少なくなっているような感じ。がします。

これが続いて、やがて完全に塗りつぶされるときがくるのでしょう。それをこのブログを書き、読むことで、つねに自覚していたい。そんな気もしています。

自分で自分を看取る。

その過程がこれというわけです。



では、また来週。
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生活と意見 (第154回)

2009-01-19 00:44:40 | Weblog
1月19日


立ち寄ってくださって、ありがとうございます。

耳の調子が悪いせいだと思いますが、おさらばしたいような気分がずっと続いて、ほとんど丸一日横になっていました。夕方、どうにかしなければと思い、近所の商店街まで外の空気を吸いに出て、さっき戻ってきました。

マイナスの気持ちが本能的にプラスの思い出を引っ張ってきたようで、ふいに浪人時代、たぶん、梅雨に、予備校からの帰り道、雨がざあざあ降る中をヤケクソな気持ちでゆっくり歩いていたら、自習室でときどき見かける女の子(たぶん国立文系)が、「入りませんか」と傘に入れてくれたことを思い出しました。一言もしゃべらずに広島駅まで約20分2人で歩きました。彼女とは反対方向の電車だったので、一礼して別れ、それ以降予備校で会っても話もしませんでした。この思い出の何がプラスかというと、私には「青春」のようなものがなかったと思っているのですが、これはきっと「青春」のひとコマの部類に入るのだろうなと思うからです。

あのとき、ヤケクソな気持ちで歩いていたのは傘がなかったからではなく、当時は常にそんな気分だったのです。「どうにでもしやがれ。クソ。降れクソ。クソ信号のクソ横断歩道。クソ世界が」。考えているのはそれだけでした。なんと元気な若者だったことか。――自分ではすでに60年くらい生きているような気でいましたが。



なんとかおさまったようです。

では、また来週。
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生活と意見 (第153回)

2009-01-11 15:09:00 | Weblog
1月11日


立ち寄ってくださって、ありがとうございます。

更新が遅くなって申し訳ありません。

にわかに創作のディテールが浮かんできて(以前からとりかかっている作品の)いろいろノートに書いているうちに日が経ちました。

河出文庫から「神曲」の第2巻「煉獄」が出ました。
名訳はもちろんですが、皆さんもよくご存知の版画家・ギュスターヴ・ドレの挿絵が多数収録されているのも大きな特徴です。しかも印刷がとてもきれいです。




では、また来週。
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