麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第194回)

2009-10-25 21:31:02 | Weblog
10月25日


立ち寄ってくださって、ありがとうございます。

「聊斎志異」3巻、読了しました。
まだあと3冊読める。うれしい。ただひたすら、うれしい。



文春新書から中島敦の評伝のようなものが出ていたのでなんとなく買ってみましたが、途中で読むのをやめました。筆者の文章は達者で、「記事」としては完璧な作品だと思いますが、そうであればあるほど、中島敦はただの「材料」におとしめられ、筆者の着眼点の鋭さ(と本人が思っているに違いない)や、頭の良さを効果的に見せつけるための引き立て役、つまり「才能ある筆者によって解明しつくされた芸術家の肖像」になっていく。さすが東京大学卒の先生だけあって、小林秀雄そっくりのインチキが上手いこと。私が中島敦をちゃんと理解できているかどうかは怪しくても、少なくとも、こんな作物を書いて偉そうに大学で教えているような人に解明しつくされる程度の作家であろうはずがないのに。まあ、買わなければよかったのですが・・・・・・。



バーナード・マラマッドの短編集「喋る馬」、読みはじめました。やっぱり「天使レヴィーン」を真っ先に読みましたが。
解説によると、マラマッドのデビュー作は、アメリカ大リーグと聖杯伝説をからませた長編小説なのだそうで、とても興味がわきました(どんな話なのでしょうか)。いつか読んでみたいと思います。



では、また来週。
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生活と意見 (第193回)

2009-10-17 22:20:51 | Weblog
10月17日


立ち寄ってくださって、ありがとうございます。

いきなり出ました。
丸谷才一新訳「若い藝術家の肖像」。おどろきました。
丸谷訳は、すでに新潮文庫に入っているので、もう新訳になることはないだろうと思っていたし、集英社から出るのなら「世界の文学」収録の加藤光也訳だろうと思っていたからです(一度も単行本にも文庫にもなっていないので)。
丸谷才一さんが何歳かはわかりませんが、こん身の仕事であることは間違いありません。
なんにせよ、これで、集英社からは、「ダブリンの人々」「若い藝術家の肖像」「ユリシーズ」「フィネガンズ・ウェイク(抄訳)」が単行本として出て、「ジョイス選集(というかほとんど全集)」がそろったことになります。快挙ですね。
今、自分が大学3年生くらいだったら、もっとうれしいのですが。

1、2章は丸谷才一の独壇場。一番自然な訳です。天才。
でも、この小説でとても大切な5章の訳は、以前と少しは変わっていても、やはり、あまりぴんときません。たぶん、もうそれは、丸谷氏と私の世代が違いすぎるから、日本語の感覚が違うとしかいえないのかもしれませんが、どうしてもすっと読めない。岩波文庫の大澤訳のほうがいいし、さらに加藤訳のほうが断然いい。

しかし、これで、ひょっとしたら加藤訳が集英社文庫に入る可能性も出てきたのかも。丸谷訳は、この新訳が文庫化されるとしても、新潮版を改訳という形になるでしょうから。「世界の文学」は本が重いので、なかなか気軽に読めません。加藤訳が文庫になれば、もっと繰り返し読めるのに、と、いつも思っています。



「聊斎志異」第三巻は現在400ページあたり。
しかし、今週は「若い~」の新訳に驚いて、それを読み、「フィネガン~」をちらと読み、「ジョイスウイーク」になってしまいました。



今年は個人的には低調もいいところですが、読みたい本の新刊がたくさん出て、それに支えられている感じがします。そういえば、バーナード・マラマッドの新訳本も出ました。まだ迷っていますが、おそらく買うでしょう。「天使レヴィン」(今度の訳では、たしか「レヴィーン」)の新訳が収められているからです。



では、また来週。
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生活と意見 (第192回)

2009-10-11 01:39:41 | Weblog
10月11日


立ち寄ってくださって、ありがとうございます。

「自由への道」は途中で止まっていて、光文社の新訳文庫から出たカフカの「訴訟(審判)」をなんとなく買ってみたら、おもしろくて、初めて読了できました。これまで、何種類もの訳文で読んでみましたが、最初の20ページくらいでいやになってやめました。たぶん、一番の原因は会話の訳文がまどろっこしかったことだと思います。今回は、あまりひっかからずに、すっと話に入れました。

どうも、読んだ直後にそれについて書くのは、その作品の世界を俯瞰してみることの邪魔になるようなので、あまりすぐには書かないようにしようと思います。

カフカについて少しだけ。
カフカは、すごく好きな作家とは言えません。「変身」は傑作だと思います。何度読んでもおもしろいし、そのたび「すごいな」と感じます。ですが、ほかは、正直言ってよくわかりません。「城」も「アメリカ」も読みました。長編の中では「城」が一番好きです。テーマとしては「審判」も同じなのでしょうが、なにより主人公の測量士には「城に自分を認めさせてやる」という強い意志があり、その結果を見届けたい、という読書の目標を作ってくれるからです。「審判」がこれまで読めなかったのは、主人公が「自分は何の罪で訴えられているのか」を追求しようとしないし、それを知ろうとしない以上、すでに自分の運命を受け入れようとしているとしか見えないので、読者としては「おいおい……まあ、そうなら好きにすれば」と、あとを追う気が失せてしまうからです。
「普通ここを気にするだろ」という部分に作者が何の説明もなく覆いをかけるときは、筒井康隆さんのように文章そのものの力で、「この話にはここに書いている以外の進み方はありえないのだ」というようにもっていくか、神話的、宗教的、超自然的なものを説明の代わりにしてしまうというやり方が必要でしょう。「変身」では、「ザムザはなぜ虫になったのか」ということは、読んでいる間は気になりません。虫になったザムザがどう世界を見ているか、これからどうするのかしか読者は気にならないのです。
ところが「審判」では、「もともと何の罪なんだよ」が、ずっと気になってしまう。

場所、もあるでしょうね。私が「城」を好きなのは雪に閉ざされた村という物語の設定がすでに童話めいていて、日が沈んだ雪道を測量士が収穫もなく歩いている場面だけでも妙に感動してしまう。雪国生まれの人が抱く感想は違うのかもしれませんが。

でも、今度の「訴訟」は、いい訳です。私と同じ理由で、また別の理由で、これまで「審判」を読めなかったという人にはすすめたいと思います。

その直接の感想は、そのうち書かせてもらいます。



「聊斎志異」3巻出ました。現在約50ページあたり。



「聊斎志異」と同じくらい最近気に入っているのは、アートダイジェストという版元から出た「オスカー・ワイルドのコント集」という本です。ひと言で言えば、最高です。ワイルドも私が偏愛する作家で、童話はすべて大好きだし、「獄中記」も大好きです。(新潮文庫で絶版状態。紙がボロボロになってきたので、復刊希望します。)自分はそうではないのに、本当に好きな作家はみなホモばかりというのはなぜ? 深く考えないことにします。



では、また来週。
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生活と意見 (第191回)

2009-10-04 00:49:55 | Weblog
10月4日


立ち寄ってくださって、ありがとうございます。

「聊斎志異」1巻、2巻、読了しました。
もう、最高です。目が、以前にも増して悪くなっているので、この紙のよさと活字の大きさは大変ありがたい。今月3巻目も出ることをたしかめたので、わくわくです。
やはり、「お話」に飢えているのでしょうか。「お話」としては、「千一夜物語」と双璧ですね。
ぜいたくを言えば、以前ここでも書いた、東洋文庫収録の前嶋訳(原典直訳)の「千一夜」も平凡社ライブラリーにならないでしょうか。なったら、ものすごくうれしいのに。ぜひ、してください。平凡社さん。あと、同じ東洋文庫の「今昔物語集」も。



まだ、どこか夏が残っていて、気分が切り替わらないまま、月だけが替わっていくような。

では、また来週。
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