麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第724回)

2021-02-28 22:35:45 | Weblog
2月28日

めまいがして、長く書けそうにありません。
「なんとなく、クリスタル」を読みました。最初に読んだのは、大学2年のころ。新刊として友だちが買ったものを、その友だちの部屋で読みました(場所は荻窪)。自分が全否定されたようで、すごく怖かったのをおぼえています。初読のときのその印象が抜けず、今日まで避けてきたのですが、今回初めて自分で買って読みました。もういくらなんでも大丈夫だろうと思ったからです。感想としては、この本は、仮想敵をたたきつぶそうという、戦闘的な意図をもって書かれた本だということ。それがわかっただけでも、少し安心しました。いちおう当時の私のような、虫けらのような学生も、どうやらその仮想敵の一部分とされているように感じたから。初読時は、ぜんぜん相手にされていないように感じて、だから怖かったのですが。続きは来週書きます。部屋が回る。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生活と意見 (第723回)

2021-02-21 20:21:15 | Weblog
2月21日

「五衰の人」(徳岡孝夫)を読みました。とてもいい読書でした。この本が書かれたことで、三島由紀夫の霊はようやく本当に供養されたと言えるでしょう。また、見方によっては、これは評伝ではなく、前衛的な、コラージュ手法を使って書いた小説のようだとも感じました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生活と意見 (第722回)

2021-02-11 20:17:37 | Weblog
2月11日

三十数年ぶりに、「パイレーツによろしく」(川西蘭)を読みました。今回読んだのは1987年発行の集英社文庫ですが、初めてこの作品を読んだのは大学6年(1984年)の春、河出から出た単行本で、でした。以前ここでも書いたような気がしますが、川西さんは同い年で広島のご出身。また、偶然にも私のライター時代の同僚M氏の高校の同級生です(それだけでなく、私が編集部員だった雑誌にクルマの記事を書いていただいていたことがあり、面識もあるので、さん付けさせていただきます)。私が浪人して広島の予備校に通っているころすでに作家デビューされ、高名な評論家に早熟の天才を認められていました。正直デビュー作はよくわからなかったのですが、この「パイレーツによろしく」には、一読圧倒されたのを覚えています。ひとつには、ここで描かれる、車の運転、セックス、コンピュータのどれも自分には経験がないことから。つまり題材ですね。もうひとつはその詩的な文章の途切れることのない流れ。つまり才能です。まったくかなわない、と思いました。いま、老人になって読んでみると、ツッコミどころはいくつかあります。登場人物の、いわゆる「機知に富む会話」の「機知」が、全員同じ深さ、同じ性質だと感じられること。つまり、頭の良さには種類がひとつしかない、と作者が考えているように感じてしまうこと。明の描かれ方が初めから悲壮感に包まれていて、なぜそうなったのかについては「問答無用」にされていることなどです。この小説に自分のすべてを救ってもらうことはできません。しかし、この小説が、我々世代の「日はまた昇る」と呼べる唯一の作品だと今も感じます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする