麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第743回)

2021-07-25 21:24:57 | Weblog
7月25日

2回目のワクチン接種。いまのところ、体温は上がるどころか下がっています。ただ、なぜか耳鳴りがすごい。うるさくてしょうがないです。これが年寄りの副反応なのでしょう。

岩波文庫「楚辞」の「離騒」を読みました。自分で驚くほど感動しました。ここには、杜甫の声も聞こえるし、ダンテやウエルギリウスの声も聞こえる。なぜこんな昔の詩がいまでも残っているのか、一読わかりました。やはり、本当の芸術には永遠の命がある。そう思います。

横目で見ているだけですが、岩波文庫では近年「文選」の新訳も出ていて、中国文学もなおざりにしていないという姿勢を見せてくれています。さすがというしかなく、今回、新訳「楚辞」に触れて、その意義を深く感じました。しかし、ここまで来たら、何にもまして「詩経」の決定的な新訳が必要でしょう。素人ながらいろいろ勉強しても、なかなか決定訳に出会えない最重要詩集。ボケる前にぜひ、出してほしいものです。


ほかには先週、山頭火の句集を開いたら目に入った、この句。

なんぼう考へてもおんなじことの落ち葉ふみあるく

いいですね。すごく。
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生活と意見 (第742回)

2021-07-18 22:09:06 | Weblog
7月18日

「中国怪奇小説集」(岡本綺堂編訳)を初めて通読しました。旺文社文庫で出たのを大学時代に買って四十年。ようやくです。いま出ている光文社文庫版に、kindle版まで購入して読み継ぎました。怪奇小説というタイトルですが、これは、中国のさまざまな時代の「怪異を記した」古典からのアンソロジーで、得難い貴重本です。すごく極端に言えば、この本と、古典新訳文庫の「聊斎志異」の二冊を読めば、中国文学の一ジャンルのエッセンスが味わえると思います。おすすめです。本当に。

拙作「地球の思い出」kindle版は創作ですが、作者の気持ちとしては、自分が夢で経験した怪異をなるべく忠実に記したということで、中国のこのジャンルに入るものだと考えています。


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生活と意見 (第741回)

2021-07-04 20:53:18 | Weblog
7月4日

コロナワクチン一回目、打ってきました。肩が痛くなると聞いたけど、いまのところ何ともないですね。老人の鈍感力のおかげかも。

「ランボーはなぜ詩を棄てたのか」(奥本大三郎著、インターナショナル新書)を読みました。「イリュミナシオン」のタイトルについての斬新な解説を読んで、蒙を啓かれました。これまで敬遠してきましたが、その詩集に含まれる諸作を新たに読みかえしてみたいと思います。そんな内容のすばらしさとともに、いままでなんとなく科学者というイメージのあった著者(だって奥本先生といえば「ファーブル昆虫記」ですから)が実は東大仏文科の出身で、井上究一郎の教え子だったという事実にちょっと意外さを感じ、同時にあらためてすごいな、と思いました。「昆虫記」の翻訳には30年を費やしたとのこと。おそらく井上先生もプルーストを訳すのに同じぐらいの年数をかけているはず。この師匠にしてこの弟子あり。そしてその2人がランボーにもそうとうのこだわりを持っていたという事実がまたおもしろい。興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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