麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第463回)

2014-12-28 19:03:19 | Weblog
12月28日

水声社から、ヘンリー・ミラーの「わが生涯の書物」が出ました。新潮版全集の「わが読書」も持っているのですが、買いました。ゆっくり読むつもりです。

なんとなく稲垣足穂を読み直したりしていました。「びっくりしたお父さん――或いは『僕もそう思います』」という「新青年」に発表された短編が、若いころから好きです。文庫には一度もおさめられていないマイナーな作品ですが、二十歳のころ好きだったゴーチェとかレ・ファニュなどの怪奇ものに通じるところがあってとてもいい。潮出版社の「多留保集」に入っています。
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生活と意見 (第462回)

2014-12-21 08:43:15 | Weblog
12月21日

来月、プルーストの「楽しみと日々」が岩波文庫から出るようです。全集11巻に入っているものの文庫化です。私は若い時(といっても30歳くらい)福武文庫で読みました(もちろん全集11巻も持っています)。岩波の新刊解説にもありましたが、「失われた時~」の世界を凝縮したような短編集です。

ときどき読み返すのですが、やはり、岩波の「失われた時~」の翻訳は、私は好きになれません。とくに漢字の語句の選び方などについて。これは読むのがしんどい。逆に、この長い小説を読者に読みやすく届けるために、井上究一郎氏が最終的にどんな配慮をしながら訳文を作ったか、何種類も翻訳が出てきたいまになると、その苦労がひしひしと伝わってきます。原文も読めないのになにを無意味なことを、といわれるかもしれませんが、プルーストが日本語で書いたとしても岩波文庫のような作品の印象には絶対にならないと思います。ただの感覚ですが。まあ、またも私(わたし)的言い方をすれば、岩波の翻訳は東大的です。小説というものを「明日の立派な社会を築くために」「上流階級の人々が下ネタ以外の雑談の材料にするために」「それについて語ることで自分の知的さ優秀さをみせびらかすために」読むのならその目的にはかなっていますが。日常に窒息しそうな人間がやっと酸素のある空間をみつけて飛び込んでいく。そういうふうにしか読書できない私には、東大的な作家も翻訳も無意味としか思われません。東大的な人々にとって私が無意味であるように。
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生活と意見 (第461回)

2014-12-14 19:01:11 | Weblog
12月14日

国木田独歩の短編を少し読みました。古本屋で何年も前から売れ残っていた岩波文庫の「愛弟通信」も200円で買いました。いつか読みたくなるかもしれないので。そういえばしばらく前に徳富蘇峰の書いたものに触れる機会があり、つい最近独歩の年譜を読んでいて二人に親交があったことを知りました。二人ともなんと志の高い気持ちのいい若者であることよ。なんの才もないうえに汚れて疲れ切った生きる意味のないのになお生きている自分とはまるで別の生き物と感じます。

もうひとつ。二十歳のころ読んだアップダイクの「歯科医と疑惑」を再読しました。二十歳のころは「完璧だ」と思いましたが、今回は「やりすぎ」と感じました。独歩の自然な無骨さのほうがはるかにすばらしいと感じます。

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生活と意見 (第460回)

2014-12-07 15:40:42 | Weblog
12月7日

本当に早い。もう去年年末から一年たつとは。行く場所も会う人もないままバスに乗り、窓から町が暗くなっていくのをながめて……どうしようもない冬でしたが、さらにひどい寒さが待っているとは夢にも思いませんでした。高校以降は罰ゲームのような展開の人生ですが、まだ子どもの頃の借りを返せませんかね?

「感情教育」(新訳文庫)の下巻が出ました。若い時に岩波文庫で読んで以来ですが、通読してみようと思います。「家の馬鹿息子」フローベール。偉大な文学おたく。
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