11月7日
性欲の具体的な描写がないのは、それがこの作品の重要なテーマではなく、また詩という隠れた本質の形式上合わないから(詩劇「ファウスト」の第一部は、メフィストフェレスと契約して若返ったファウストがグレートヒェンを誘惑して妊娠させるという話ですが、小説のような欲望の描写はまったくありません)。しかし、作者がそれをプロットによって表現していると思われるところが一か所だけあります。それは、マリユスとコゼットの婚礼の翌朝一番にジャン・ヴァルジャンがマリユスを訪ね、自分が徒刑囚であったことを告白する場面です。(続く)
2011年5月の書評。「宇宙は何でできているのか」(村山斉著、幻冬舎)