9月24日
立ち寄ってくださって、ありがとうございます。
今日は、12月11日からの「写真&言葉」展のタイトルを、カメラマンの宮島氏と決めなければならず、ずっとそのことを考えていて「友だち」の続きを書くことができません。
すみません。
10日ほど前から、ディケンズの「大いなる遺産」(中央公論社「世界の文学」セレクション)を読んでいて、2日前に読み終わりました。
新潮文庫でこれまで何度か挑戦しましたが、訳文の日本語にどうしてもなじめず(たしか初版が昭和27年とかで、改版にはなっているけど改訳にはなっていないのです)、挫折ばかりしていました。ところが、たまたま見つけて買ったこれは、とてもいまの日本語に近くて味読できました。読後の感想としては、「ディケンズはすごい」のひと言です。私流にまたおおげさにいうなら、うちのめされました。それは、もちろん、書き手として云々というようなおこがましいことではなくて、人間として、です。
結末には2パターン、主人公のピップがエステラと結ばれるものと、そうでないものとがあるそうです。そうかと思って見てみると、新潮文庫のものは前者で、私が今回読了したものは後者です。
私の意見を言わせてもらえば、この作品にハッピーエンドはありえないでしょう。
いくつものテーマが絡み合っていて、そのどれもが完璧に具象化されて描かれていますが、私の感じる限り一番大事なテーマは、ピップを、つまりディケンズの中のひとつの人格を裁くことだと思います。ジョーという人間を捨てて都会に出て行き、悲しみもしなかったピップが、幸福になれるはずがない、というのがなにより作者の考えであると思います。また、そうでなければ、最後に幸福に包まれるジョーとの対比がはっきりしません。ハッピーエンドのパターンは、友人の助言があってそうしたということですが、きっとその友人は、そのほうが芝居にしたときに人気が出る、と考えたのでしょう。
こんなにいい作品だとは、予想もしていませんでした。私は、この本を東京堂書店で買いましたが、このシリーズは1993年ころに出たもので、きっとジュンク堂や紀伊国屋本店にならまだあるんじゃないかと思います。
気が向いたら、探してみてください。
では、また来週。
立ち寄ってくださって、ありがとうございます。
今日は、12月11日からの「写真&言葉」展のタイトルを、カメラマンの宮島氏と決めなければならず、ずっとそのことを考えていて「友だち」の続きを書くことができません。
すみません。
10日ほど前から、ディケンズの「大いなる遺産」(中央公論社「世界の文学」セレクション)を読んでいて、2日前に読み終わりました。
新潮文庫でこれまで何度か挑戦しましたが、訳文の日本語にどうしてもなじめず(たしか初版が昭和27年とかで、改版にはなっているけど改訳にはなっていないのです)、挫折ばかりしていました。ところが、たまたま見つけて買ったこれは、とてもいまの日本語に近くて味読できました。読後の感想としては、「ディケンズはすごい」のひと言です。私流にまたおおげさにいうなら、うちのめされました。それは、もちろん、書き手として云々というようなおこがましいことではなくて、人間として、です。
結末には2パターン、主人公のピップがエステラと結ばれるものと、そうでないものとがあるそうです。そうかと思って見てみると、新潮文庫のものは前者で、私が今回読了したものは後者です。
私の意見を言わせてもらえば、この作品にハッピーエンドはありえないでしょう。
いくつものテーマが絡み合っていて、そのどれもが完璧に具象化されて描かれていますが、私の感じる限り一番大事なテーマは、ピップを、つまりディケンズの中のひとつの人格を裁くことだと思います。ジョーという人間を捨てて都会に出て行き、悲しみもしなかったピップが、幸福になれるはずがない、というのがなにより作者の考えであると思います。また、そうでなければ、最後に幸福に包まれるジョーとの対比がはっきりしません。ハッピーエンドのパターンは、友人の助言があってそうしたということですが、きっとその友人は、そのほうが芝居にしたときに人気が出る、と考えたのでしょう。
こんなにいい作品だとは、予想もしていませんでした。私は、この本を東京堂書店で買いましたが、このシリーズは1993年ころに出たもので、きっとジュンク堂や紀伊国屋本店にならまだあるんじゃないかと思います。
気が向いたら、探してみてください。
では、また来週。