9月28日
立ち寄ってくださって、ありがとうございます。
ネルヴァルの長編「東方への旅」の一部「暁の女王と精霊の王の物語」(90年復刊角川文庫)を読みました。これは、通読したのは初めての本です。
旧約聖書のヒーロー、ソロモンと、シバの女王の恋愛を題材に、ネルヴァルが大きくアレンジを加えた歴史幻想小説。クライマックスは、職人頭のアドニラムが、地下の精霊たちの国に降りていき、そこで地上の人々が知らない、「世界の真理」について、カイン(「カインとアベル」のカインの精霊。アドニラムの直系の祖先)に説明を受けるシーンでしょう。神曲にも似た幻想は、リアリティがあって、とてもおもしろい。「オーレリア」もそうですが、なにかこういうところを読むと、昔「麻里布さんの作品は、ネルヴァルに似ていますね」と、まだネルヴァルを知らないころ、知り合いに言われた理由がよくわかります。本の解説を読むと、おおかたの訳者は、ネルヴァルの幻想の元を、彼の神秘学趣味のせいにしていますが、それだけではないのが、私にはわかります。もともとなにかの直感というか感覚というか、生(なま)の物があってこそ、こういうシーンが生まれてくるのです。自分に必要だから、それを見たくて描くのです。もちろん、それを描き出す才能には人によって雲泥の差があるわけですが……。
☆
ファンタジーのようなものも、1作だけ書けたらいいのですが……たぶん手をつけたりする余裕は死ぬまでないでしょう。貧民層に生まれた者は、相応の教養を身につけるだけで十分。「世界のしくみ」について思いをめぐらせるなんて余計なこと。なるほど、そのとおりです。おみそれしました。すたこらさっさ。
☆
では、また来週。
立ち寄ってくださって、ありがとうございます。
ネルヴァルの長編「東方への旅」の一部「暁の女王と精霊の王の物語」(90年復刊角川文庫)を読みました。これは、通読したのは初めての本です。
旧約聖書のヒーロー、ソロモンと、シバの女王の恋愛を題材に、ネルヴァルが大きくアレンジを加えた歴史幻想小説。クライマックスは、職人頭のアドニラムが、地下の精霊たちの国に降りていき、そこで地上の人々が知らない、「世界の真理」について、カイン(「カインとアベル」のカインの精霊。アドニラムの直系の祖先)に説明を受けるシーンでしょう。神曲にも似た幻想は、リアリティがあって、とてもおもしろい。「オーレリア」もそうですが、なにかこういうところを読むと、昔「麻里布さんの作品は、ネルヴァルに似ていますね」と、まだネルヴァルを知らないころ、知り合いに言われた理由がよくわかります。本の解説を読むと、おおかたの訳者は、ネルヴァルの幻想の元を、彼の神秘学趣味のせいにしていますが、それだけではないのが、私にはわかります。もともとなにかの直感というか感覚というか、生(なま)の物があってこそ、こういうシーンが生まれてくるのです。自分に必要だから、それを見たくて描くのです。もちろん、それを描き出す才能には人によって雲泥の差があるわけですが……。
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ファンタジーのようなものも、1作だけ書けたらいいのですが……たぶん手をつけたりする余裕は死ぬまでないでしょう。貧民層に生まれた者は、相応の教養を身につけるだけで十分。「世界のしくみ」について思いをめぐらせるなんて余計なこと。なるほど、そのとおりです。おみそれしました。すたこらさっさ。
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では、また来週。