5月30日
立ち寄ってくださって、ありがとうございます。
iPadが話題になっていますね。
この製品を知ったとき、すぐに思い浮かんだのは、泉鏡花の「夜叉ヶ池」か「海神別荘」かに出てくる、手をかざすと文字が浮き出て読書ができるという本のこと。まさにそれはiPadですよね。まあ、誰でも考えつくといえばそうですが、明治時代の人の空想としてはすごいと思います。
20歳ころ、「夜叉ヶ池」が映画になって、鏡花が少し流行ったことがありました。
「水は美しい。いつ見ても美しいな」
というセリフで始まる物語。なんという一行か、と思って忘れられません。鏡花の中にある、「中途半端で醜い生き物、人間よ、滅びよ」といった目線がこころよく、読みやすいとはいえない小説も何作か読みました。有名な「高野聖」は、中国の奇談にも似た味わいのある話(「三娘子」を思い出させます)で、当時すでに「聊斎志異」も読み始めていた私には大好物のひとつとなりました。鏡花の、その、人間に対する軽蔑への共感は、たぶん、気質的なものもあると思いますが、当時自分の性欲をもてあましていた私の、自己否定願望からきていたのでしょう。鏡花を読まなくなったのは、(漢字が難しいせいもあるけど)年々、人類を道ずれにしてまで滅ぼさなくてはならないほどの性欲がなくなってきたからでしょう。もし、作者がそれらを書いた理由のひとつが、自己否定願望にあるとしたら、ある意味、鏡花の幻想的作品群は永遠の青春小説といっていいのかもしれません。
思い出したので、書きました。
☆
しばらく前から、「ブリキの太鼓」の新訳を読んでいます。おそろしく、読みにくい。以前から出ている文庫に比べると、それでも読みやすくなったと思いますが……。いま、ようやく第2部に入ったところです。読了できたらなにか書こうと思いますが、半年くらいかかるかも。その間に「嘔吐」の新訳が出たら、もちろんそちらを先に読むつもりです。
☆
では、また来週。
立ち寄ってくださって、ありがとうございます。
iPadが話題になっていますね。
この製品を知ったとき、すぐに思い浮かんだのは、泉鏡花の「夜叉ヶ池」か「海神別荘」かに出てくる、手をかざすと文字が浮き出て読書ができるという本のこと。まさにそれはiPadですよね。まあ、誰でも考えつくといえばそうですが、明治時代の人の空想としてはすごいと思います。
20歳ころ、「夜叉ヶ池」が映画になって、鏡花が少し流行ったことがありました。
「水は美しい。いつ見ても美しいな」
というセリフで始まる物語。なんという一行か、と思って忘れられません。鏡花の中にある、「中途半端で醜い生き物、人間よ、滅びよ」といった目線がこころよく、読みやすいとはいえない小説も何作か読みました。有名な「高野聖」は、中国の奇談にも似た味わいのある話(「三娘子」を思い出させます)で、当時すでに「聊斎志異」も読み始めていた私には大好物のひとつとなりました。鏡花の、その、人間に対する軽蔑への共感は、たぶん、気質的なものもあると思いますが、当時自分の性欲をもてあましていた私の、自己否定願望からきていたのでしょう。鏡花を読まなくなったのは、(漢字が難しいせいもあるけど)年々、人類を道ずれにしてまで滅ぼさなくてはならないほどの性欲がなくなってきたからでしょう。もし、作者がそれらを書いた理由のひとつが、自己否定願望にあるとしたら、ある意味、鏡花の幻想的作品群は永遠の青春小説といっていいのかもしれません。
思い出したので、書きました。
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しばらく前から、「ブリキの太鼓」の新訳を読んでいます。おそろしく、読みにくい。以前から出ている文庫に比べると、それでも読みやすくなったと思いますが……。いま、ようやく第2部に入ったところです。読了できたらなにか書こうと思いますが、半年くらいかかるかも。その間に「嘔吐」の新訳が出たら、もちろんそちらを先に読むつもりです。
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では、また来週。