麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第561回)

2017-04-30 13:51:52 | Weblog
4月30日

人はなぜもの忘れをするのか。

忘れていけないことなどなにもないから。

人にはなぜ寿命があるのか。

いなくなっても宇宙はなにも困らないから。

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生活と意見 (第560回)

2017-04-23 22:46:49 | Weblog
4月23日

「黄金仮面」読了。しかし、意味不明。この作物がなぜできたのか、よくわからないですね。自分の心のどの部分を鼓舞して読み進めればいいのか、途中でわからなくなって何度も読書を中断しました。これはちょっとダメでした、私は。なんとなく思い出すのは、「ガメラ」にイーデス・ハンソンさんがお母さん役で出ていたころのこと。「日本も国際的になってきたなあ」感を出すことがおしゃれとされていた、ああいう感じが昭和の初めにもあったのかな、と思いました。それにしても、なぜ黄金仮面をつけて活動しないといけないのか、謎は深まるばかりですね。――次の「吸血鬼」は、でも、最初のシーンを読んだだけで、小学生のころ読んだときの印象をすぐに思い出しました。文代さんも活躍するみたいだし、これは楽しみですね。――以前からこのシリーズがなぜ12巻で終わりなのか気になっていましたが、最近出た第12巻を立ち読みしてみたら、「戦前発表分」ということで区切りがついているようです。

今日は秋のような一日でしたね。
「これからまた寒くなるんだな」と、季節と真逆のベクトルを感じました。
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生活と意見 (第559回)

2017-04-16 21:51:26 | Weblog
4月16日

「魔術師」読了。いままでのところ、私のようなボンクラがいうのもあれですが、この作品が、一番バランスがいいように感じられます。これまでの長編(短編はどれも傑作だと思います)は、乱歩がなりたかったという、無声映画の弁士然とした語り口調が強く、ときにはこちらが物語の世界に入り込むのを邪魔することもありましたが、魔術師はそれが抑えられていて小説らしい感じ。ただ、いま読んでいる「黄金仮面」では、また弁士調がぶりかえしている気がします。文代は魅力的ですね。賊の娘でもなかったし。書いてあることを何も疑わずに、文代さんは賊の娘だと鵜呑みにするなんて、まるで波越刑事と同じ間抜けですね。そのぶん、いい読者ともいえますが。ちょっと思ったのは、ミステリーって、人間の心がつねに不安であることを利用したおやつのようなものなのではないか、ということ。すごく単純に考えれば、不安なのは当然で、生き物として警戒心があるからでしょう。自分が壊れものだという自覚。それがあるから壊れないように気を配る。ショーペンハウアーがいうように、幸福というようなプラスの感情はまったく長続きしない。幸せになりたい、と言っても、なにかひとつ満たされればすぐに別の多くの問題を見つけ出し(思い出し)、また漠然とした不安にとらわれるのが人間のさが。そういう、人間としての自然状態ともいえる漠然とした不安に、架空のお話でひとつの形を与えて、事件が解決されることで不安が少し解消されたような錯覚を感じさせる。それがミステリーの役目なのでしょう。それは本来、私には不要な操作です。それなのにホームズと乱歩を私がまだ読んでしまうのは、ほかでもない、子供のころによく知っていた世界に戻っていく通路がここにあるからです。ホームズは、何も事件を解決しなくていい。ただ、ワトスンと二人で「チャリングクロス」という鈴の音のような音感の駅から「ダートムア」という紫色の煙を感じさせる駅に向かって汽車に乗ってくれるだけで、私の、ただ私の頭の中にあるだけのロンドンとその郊外は無限に広がり、私はそこの住人となることができるわけです。乱歩にしても、明智や犯人が、本郷、上野、浅草、麹町、西麻布を駆け抜けるだけで、子供のころ私の心がそこに住んでいた私だけの東京がまたよみがえってくるからです。もちろん、私と同年代の人たちはみんな同じ理由で読んでいるに違いありません。あらためて書く必要もないようなことですが。



「口訳万葉集 中」出ました。
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生活と意見 (第558回)

2017-04-09 22:02:41 | Weblog
4月9日

「蜘蛛男」「猟奇の果」を読みました。「蜘蛛男」は少年探偵シリーズで読んで以来約45年ぶり。少年探偵には、蜘蛛男が被害者を「手籠めにする」シーンはもちろんなかったので、今回原作を読んで、「なんだ、手籠めにするのか」と思いました。子供のころの、蜘蛛男に対する理解は、「殺したり、バラバラにしたりということはまったく理解できないが、世の中にはそういう行為を愛する犯罪芸術家とでも呼ぶ人種がいて、蜘蛛男もそうなのだ」というものでした。それは、悪の中の悪ではあるが、どこか高貴なところもある……というふうに感じていたのです。ところが、「手籠めにする」わけです。「なーんだ」という感じですかね。ただの性欲過多でグロテスク趣味の下衆。ぜんぜん高貴ではなかったのですね。また、死体の腐乱臭が部屋に漂っているという描写だけで、魚を煮る臭いすらダメな自分には吐き気がしてきました。「猟奇の果」は、前半はとてもおもしろかったです。前半だけ読むと、これは、猟奇的な趣味に没頭して自分を顧みない夫に不満を感じた奥さんが、夫の親友に協力してもらい、日常が崩壊するかもしれないという危機感を抱かせ、夫の目をさまさせる……という人情喜劇なのかと思いました。もしかしたら、乱歩はそのつもりで書いたが、編集者に後半のようなエキセントリックな展開を要求されて、いわれるままに書いた……そういう事情でもあったのではないか、と邪推しました。続けて、いま「魔術師」を半分ぐらい読みました。あいかわらず派手なシーンが多いけど、すごく読みやすくなってきました。明智の奥さん、文代さんって、この事件の賊の首領の娘なんですね。どうやってくっつくのか、事件よりそこが楽しみです。また、毎回巻末に時代背景の説明があるのですがすごくていねいでおもしろいです。



ちくま学芸文庫から「枕草子 上・下」が出ました。以前ここにも書いた、同文庫「徒然草」と同じ方による校訂・訳つき。大好きな第六段の訳をまず読みましたが、とてもいいです。おそらく枕草子全訳の決定版になるのではと思います。ぜひ見てみてください。
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