麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第91回)

2007-10-29 00:55:01 | Weblog
10月29日


立ち寄ってくださって、ありがとうございます。

更新が遅くなって申し訳ありません。

今日は、できれば創作の一部を載せようと、いままでやってみたのですが、ダメでした。すみません。

ただ疲労だけが残りました。

なかなかちゃんと寒くならないですね。
寒さに向かってゆっくり準備をはじめた老いた体が、どうしようか戸惑っているのがわかります。

私は、先日ふいに、生きていることに飽きているのを感じました。

たぶん、ほかに問題はなく、飽きっぽい私が、とうとう全体に飽きたのだということが、ふいにわかったのです。

むずかしいことはなにもない。

ただ長く生きてきたからです。

どう思い直しても、心をリフレッシュしたふりをしても
なんにもなりません。繰り返しの感覚は油のように体に染み付いて取れはしません。

おそらく、この感覚を忘れさせてくれるのは、創作に没頭することだけです。
その時間以外、私はすでに死体としての私でしかありません。

このページを書き続けるのも、ただ一週間に一度だけ、指先ひとつ分、死体でなくなる時間をもてるからです。

それでは、また来週。

死体として目覚めるために寝ることにします。
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生活と意見 (第90回)

2007-10-22 00:45:02 | Weblog
10月22日


立ち寄ってくださって、ありがとうございます。

更新が遅くなって申し訳ありません。

飯を食う仕事で目を酷使していて、まるで血の海の中に黒目が浮かんだようになっています。自分で見ていても気持ち悪い感じです。

今週は、そのせいで、自分の読書はマンガだけになりました(あと源氏物語を少しだけ)。
「銭ゲバ」と「アシュラ」です。
両方とも、私が小学五年生から六年生の間に少年誌に連載されていたもの。
当時は、なんだかこわくてまともに読んだ記憶はありません。ただ、「『パットマンX』を描いていた人が、なぜこれを?」と思っていました。

だから、ちゃんと読んだのは、今回が初めてです。
感想をひと言でいうなら、すごい、です。傑作。
とくに銭ゲバのほうが、一貫していていいと思いました。

コードが三つしかないハードロックを聴いたような感じ。
若くストレートで、ドロドロの世界を書きながら、なぜかさわやかな読後感がある。
もちろん、苦いのですが、さわやかなのです。
それはおそらく、このときの作者が、まったく汚れていない人間だからだと思います。描けば描くほど、作者の純粋さがページの空白から香ってくるからです。

こういうテーマをこういう描き方で描けた作家はやはり選ばれた人といえると思います。
彼が今、旧約聖書をマンガ化しているのも、当然の仕事の流れなのでしょう。

私は、この作者の年齢のころ、この作者のように純粋ではありませんでした。
というか、心の中で、自分の中に銭ゲバ的要素を少しでも見つけると、それを自分自身にも他人にも拡大して見せ、「どうせ銭ゲバなんだから」という言い訳をしながら、ただ毎日を自虐的に生きていたように思います。

目の疲れが限界にきました。

すみません。

また、来週。

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生活と意見 (第89回)

2007-10-14 18:24:12 | Weblog
10月14日


立ち寄ってくださって、ありがとうございます。

今日は、なぜか、「天使レヴィン」が読みたくて、でもマラマッドの短編集をどこにやったのか思い出せず、買ってくるにもこの町の本屋にはないので、どうしようか、と思っているうちに1日が終わろうとしています。

たぶん、私の一生も、それと同じなのかもしれません。
「天使レヴィン」が手元にないのなら、自分の「天使レヴィン」を書けばいいのに。

いや、40歳になったとき、体の芯からそれを感じ、1冊は書き上げてみたのです。
「天使レヴィン」よりはぶざまだけど、ほとんど嘘のない本を。
それはそれで、よかった。でも、このごろまた、時間のないことにかまけてわけのわからないあせった気持ちのまま、何もできない日を重ねすぎている。

とりあえず読んだ本の冊数を増やすことで、なにかをやっているような気にわざとなろうとしているけど、心の中は空洞。

理由はわかっています。
孤独が足りないからです。
孤独が足りなければ、風車はただの風車にしか見えず、それを風車だという世間のおとぎ話に自分も参加しなければなりません。
にせものの女王の奴隷として。

古本屋に行って、マラマッドを探してきます。

では、また来週。
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生活と意見 (第88回)

2007-10-08 01:56:33 | Weblog
10月8日


立ち寄ってくださって、ありがとうございます。

静かに、マイ中国ブームは続いていて、あれから「三国志演義」を読み、「唐代伝奇」を読み、現在、徳間文庫の「史記」の5巻目を読んでいます。で、いま思っているのは、「司馬遷こそ元祖ハードボイルド作家ではないか」ということ。簡潔で見事ですね。いずれにしても、これらの本は(「唐代伝奇」は別として)若いころなら読めなかった種類の本です。

いちおう、勘違いされないよう言いますが、戦記ものが好きになったわけではありません。おもしろいのは、英雄が全員、結局は失敗者として死ぬことで、「三国志演義」も最後にただむなしさだけが残る。そこが爽快です。諸葛孔明には、今回もべつに何も感じません。関羽がいいですね。ひとりあげるなら。たぶん、それは、カラマーゾフで誰よりミーチャが好きなのと同じ理由でしょう。弱虫で不純な私は、男性的で純粋な人間に強烈なあこがれを感じるからです。

「史記」ではやっぱり始皇帝がちょっとおもしろいですね。踊り子と商人の間にできた子どもで、まったく王家の血をひいていない(らしい)なんて。初めて知りました。あとは高祖(劉邦)の妻・呂后。夫が死んだあと、寵愛を受けていた妾を「人豚」にしてしまうくだり。江戸川乱歩の「芋虫」の実話版です。女は、というより、人間はおそろしいですね、やっぱり。それがまたさらっと書いてあるのでよけい怖い。

人肉を食う話もけっこう出ます。というのは、謀反の罪で処刑された人間は、塩漬け肉にされてみんなに配られたりするからです。

まるで「人間というものを作って実験をしてみたが、こんなにひどい結果しか得られなかった」という誰かのレポートを読んでいるような感じです。でも、そこがおもしろいです。

マイブームはやがて去るもの。
この機会に、史記を読み終わったら、講談社世界文学全集の「紅楼夢」の抄訳を読んでみようと思っています。そのあたりできっとブームは終わって、またプラトンあたりに帰っていきそうな気がします。

今日はほかにも書こうと思ったことが(たいしたことではないですが)あったのですが、昨日も今日も仕事だったので、疲れて書けませんでした。

では、また来週。
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