麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第438回)

2014-06-29 07:49:48 | Weblog
6月29日


鷗外全集第五巻読了。普通の意味での「創作」は、これですべて読み終えたことになります。残りの膨大な史伝は死ぬまでに読めるものだけ読もうという感じです。

「風景を~」には、さまざまな自分の心の様相(と、その心の様相にとっての「世界の雰囲気」。しかし、「自分」と「世界の雰囲気」は結局同じもの)、つまりそのつどそのつど「自分が自分と呼んでいる(た)もの」が複数の人物に分けて収めてあり、ノートにメモを始めたときから全編を脱稿するまでの数年間、それらがどういう位置関係にあるのかを考えることで、私は自分を整理することができました。私にとって創作の第一の目的は、完成度の高い文芸作品を作ることではなく、物語の形を借りて、自分にとっての普遍的な問題を固定することです。そうしておけば、いつ、どこでも、その作品を開けばすぐにその問題を頭の中に再現することができるから。いってみれば創作は「麻里布栄用覚醒のための基礎問題集」と言えます。そうしてそれは、ほかの誰かの役に立たないものでもあるまいと思っています。もちろん、成熟した大人の皆さまには読むに値しない書物ですが。
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生活と意見 (第437回)

2014-06-21 13:08:46 | Weblog
6月21日


鷗外全集の読書は止まったまま。今週は「マルテの手記」を読んでいました。今回の訳で、この作品ははじめて日本語に置き換えられたと感じます(これまで四種の翻訳で途中まで読み、挫折しました。今回はもうすぐ読み終わります)。

夜中に「風景をまきとる人」の文庫を読み返しました。細かい傷は無視して読みました。疾走感がある、と思いました。自分のビートが刻まれていると感じました。やはり、現在までのところ、私はこの本を書くためだけに生まれてきたのだと思います。それ以外の行為、時間のすべてが無意味だとしても、この本があればなんとか死ぬまで持ちこたえられると思います。
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生活と意見 (第436回)

2014-06-16 00:17:17 | Weblog
6月16日

鷗外全集第五巻、残りあと30ページ。歴史ものに入って読書のスピードが落ちたのもありますが、講談社学術文庫の新刊「神曲・地獄篇」と新訳文庫新刊「マルテの手記」の翻訳が両方ともすばらしく、そちらを読み進めてしまったからです。とくに「神曲」は、「いままで生きていてよかった」と感じるほどいい仕事です。大学時代にこの翻訳があればよかったのに、と思わずにいられません。
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生活と意見 (第435回)

2014-06-08 11:13:44 | Weblog
6月8日


鷗外全集第五巻三分の二まで読みました。「大塩平八郎」の、大塩が決起にいたるまでの短い独白を読んでいると涙が出ました。しかし、これを書いた鷗外の心情を考えると少しいやらしいと感じました。「じいさんばあさん」はすばらしいですね。私がいうまでもなく。「純愛」が本当に存在したころの物語。しかも、当人たちは純愛という概念すらもっていない。もっていないから「守る」必要も「貫く」必要もなく、ただ自然な心で一人の人を思い続ける。日本が西欧化してなにを失ったか。鷗外は、突き放した書き方で老夫婦を描くことで、痛烈に現代を批判していると感じます。

なんとなく泉鏡花の「清心庵」も読みました。初めて読んだけど、すごくいいですね。鷗外の理性的世界から離れて、いきなり知らない山の中で迷子になったような気分にさせてくれました。

去年から書いている自分の原稿をひさしぶりに読み返して、あまりの悲惨さにやる気を失いました。これも当然のことですが。
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生活と意見 (第434回)

2014-06-01 17:22:11 | Weblog
6月1日


鴎外全集五巻読書中。

●新刊情報
「エドウィン・ドルードの謎」(ディケンズ/白水Uブックス)
「二都物語(新訳)」(ディケンズ/新潮文庫)
「吸血鬼ドラキュラ(新訳)」(プラム・ストーカー/角川文庫)
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