麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第688回)

2020-03-29 21:38:37 | Weblog
3月29日

まるで60歳以上はいなくなれと言わんばかりの「自然」による振る舞い。もちろん私も淘汰される側のひとりです。まったくそれでいいのですが、短編集「地球の思い出」をできれば紙の本で上梓したかったとは思います。気にかかるのはそれだけですね。

いちおう書いておくと、今朝はいきなりの雪に驚きました。
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生活と意見 (第687回)

2020-03-22 18:57:26 | Weblog
3月22日

岩波文庫から「火の娘たち」の、野崎歓さんによる新訳が出ました。「シルヴィ」を読みました。とてもよかったです。これまで、何度か読んでいてそんなことは思いつきもしなかったのですが、これはネルヴァルの「グレート・ギャッツビー」ですね。シルヴィには「でも、分別をもたなければね」、オーレリーには「あなたはドラマを求めている、それだけのことよ。結末は手にはいらないわ」といさめられる「僕」は、“人生にフラれた男”(私自身の言葉)であり、ギャッツビーのように殺されるか、作者その人のように首をくくりに行くかしかない。この世にはしょせん合わない人間です。シルヴィやデイジーやオーレリーを手に入れるのは、いまならLINEなどでまめに女の相談相手になり、現実的な満足をあたえてやる俗物――子供のころ男同士で話をしていても、女が近づいてくると、すぐにふりむいてそちらへの対応に夢中になるタイプの男――たちなのです。そうして、世の中にとっての余計者は、彼らを俗物とよぶ阿呆たちのほう。阿呆に才能があれば、作品として、その不幸と絶望を昇華させることもできますが、なんの才能もない阿呆は毎日をただ耐えながら死ぬのを待つことしかできない。――みじめな人生です。

書き忘れました。「シルヴィ」の、訳者による解説は過不足なく、平明で、完璧だと思いました。
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生活と意見 (第686回)

2020-03-15 21:08:17 | Weblog
3月15日

新潮文庫の新刊「三島由紀夫を巡る旅」(徳岡孝夫、ドナルド・キーン)を読みました。すごくよかったです。三島論を何十冊読むよりも、この本1冊を読むほうがはるかに有意義だと思います。徳岡さんの名前は、キーンさんの「日本文学史」の翻訳者として知っていましたが、こんなにすぐれた書き手だったとは。平岡公威少年が、学習院の学友である少女の父親=志賀直哉に自分の創作を読んでもらおうと熱心にはたらきかけていた、なんて今回初めて知りました。でも大事なのはそんな表面的な事実のおもしろさではなく、「矛盾の人・三島由紀夫」を、キーンさんのコメントを多く援護射撃としながら徹底的に分析していく、その平明で深い思考の進め方にあります。きっとずっと残っていく本だと思います。
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生活と意見 (第685回)

2020-03-08 20:09:15 | Weblog
3月8日

老いてから日常生活のあらゆることがうまくいかない。何度も書いた気がしますが、とくにここ何年かは、なにごともうまくいかないのが当たり前になってしまい、毎日毎日「またか」と思うばかり。もはや怒りもなにもなく、早く全部過ぎてくれ、とうつむいて祈るだけになっています。本当にうんざりです。
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