鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

わずか3人の出演だけでも観客を飽きさせない楽しい舞台の演劇「スカイライト」

2018-12-09 | Weblog

   9日は東京・初台の新国立劇場で英劇作家デイヴィッド・ヘア作の演劇「スカイライト」を観賞した。劇場に入ると、真ん中に舞台がこしらえてあり、両サイドから観客席があり、四方の2階からは舞台を見下ろすという構造になっている。舞台にはベッドからテーブル、ソファー、それに台所がついていて、さながら1人暮らしの部屋がしつらえてあり、玄関はそのまま下へ階段でつながっていて、反対側には浴室があるといった趣きで、わずか3人の登場人物がここで演技をするといった感じだった。

 ロンドン郊外の質素なアパートに暮らすキラが重い荷物をぶら下げて家に帰ってくるシーンから舞台は始まる。お風呂にでも入ろうかな、と思っていると、突然来客が「開いていたから」と部屋に入ってくる。キラが驚いてみると、3年前に別れてきたトムの息子エドワードだった。何事かと聞くと、母親のアリスが1年前に亡くなって以来、父親はすっかり元気をなくして、今日も喧嘩してきた、という。それでキラにトムを励ましてやってほしい、ということだった。でもキラは久しぶりの再会に感激して、懐かしい思いで話し込むが、夜も更けたので、エドワードはそうそうに引き上げる。

 それで、キラはシャワーを浴びようとすると、しばらくして夜中の訪問者としてトムが突然やってくる。一体何しに来たのか、といぶかるキラに対し、「どうしているのかな」とあいまいなことをいいながら、2人はかつてアリスに隠れて不倫をしていたことを話し始め、お互いの近況を交えながら、微妙な話し合いを続けていく。トムはキラに「なぜ突然いなくなったのか」と問いただす。それに対しキラは「2人の仲がアリスに知られてしまったから」と答える。それに納得しないトムは「それでいまは幸せか」などとキラの様子を聞き出していく。そのうちにトムは運転手を外に待たしたままであることが判明し、キラはそうしたトムの仕打ちをなじり始める。

 それでトムは運転手をかえして、キラと話し込むうちにベッドに寝込んでしまう。夜半に目を覚ましたトムはキラが起きて仕事をしているのに驚き、起き出す。そして話はまた二人の思い出話に及び、キラはかつてトムがキラからもらった手紙をうっかりしまい忘れてアリスに見つけられてしまったことを思い出し、「それはトムがわざとしたことだ」とトムを責め立てる。それはミスだと抗弁するトムはキラに「もう一度やり直そう」と持ち掛けるがキラは頑として応じず、ついにはトムを追い出してしまい、トムはキラにふられて、すごすごと帰途につく。

 それで寝込んだキラは翌朝、一番に再び現れたエドワードに起こされる。何事かと思って起きると、エドワードは前夜にキラが「クロワッサンの豪華な朝食を食べたい」と言っていたのを聞いていて、ホテル勤めの友人から朝食セットを借りてきて、キラの部屋で朝食をとしゃれこみ、一瞬、幸せな気分を味わったところで幕となった。

 主演の蒼井優とトム役の浅野雅博の絶妙な掛け合いが見ている者を飽きさせず、楽しい演劇であった。スカイライトはトムが大金を投じ闘病生活を続ける妻のアリスが退屈しないように大理石の床と天井から太陽の光が注ぐスカイライトの病室をしつらえたことから取ったようで、実際には出演しないアリスの存在がこの演劇の大きな要素を占めていることをうかがわせるタイトルであった。何よりも2時間余の舞台をわずか3人の演者だけでもたせるのは原作の出来によるものだ、と思わせた。

 

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