鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

中国上海との往復航空運賃が4000円なんてあり得ない運賃の背景

2010-08-02 | Weblog
 先日、茨城県にことし3月に開港したばかりの茨城空港に中国・上海からの定期便が到着した、と報じられたが、その航空運賃が往復4000円となっていたのに驚いた。中国で日本観光がブームとなりつつあるのを見越して、中国の航空運賃の価格破壊者である春秋航空が打ち出したもので、徹底した合理化策によって実現された価格だ、という。新幹線の東京ー小田原間の片道料金だけでも3640円もするのに、ほぼ同じ料金で中国・上海を往復できるのは関係者の度肝を抜いた。
 春秋航空はエアバスA323機など中古の航空機を活用したうえ、人件費や機内サービスも極力きりつめたうえで、格安料金を打ち出しており、世界50都市との間に就航させている。今回の上海・茨城間の航行に関しても①数時間の遅延は当たり前②キャリアアテンダントは離着陸以外は売り子に専念する③機内食や飲み物は市価の倍ーーで臨んでおり、座席と座席の間の間隔も通常より狭くなっている。当初、乗客を立ったままの姿勢で運行することも計画されたが、さすがに中国の航空当局の許可が出なかった、と伝えられている。
 一方、開港したものの定期便は神戸とソウルの2便だけで、核となる定期便の就航をめざし、LCC(ローコストキャリア)の誘致に積極的だった茨城空港は首都圏に近いとのキャッチフレーズで、春秋航空と就航の合意をとりつけたようで、両者の利害は一致したようだった。当初の合意では週3日(月、水、土)茨城空港との間で往復させる計画だったのが、国土交通省と防衛省の要請で、そのうち1回は成田空港へ就航すると変更されることとなった。もともと、茨城空港は海軍の飛行場として開港されたもので、いまでも自衛隊との共用飛行場となっている。このため、国が中国機の週3回の就航に難色を示した、という。
 自社機の初就航で茨城空港に一番乗りした王正華社長は成田への就航で、往復4000円の価格が維持できなくなった、と表明し、全体の10%を4000円とし、あとは8000円、1万6000円、2万円の3段階の価格体系とすることへ変更する、と表明した。春秋航空としては価格破壊を打ち出したものの、発着料の安い茨城空港への定期就航により可能だったわけで、国交省の横やりで変更を余儀なくされた、として格好の口実を与えたこととなった。
 航空運賃はもともと遊園地の乗り物のようなところがあり、収容人員が満員でもわずか1人でもコスト的にはほとんど変わらない。乗客が少ないからといって乗員の数を減らすわけにはいかないし、特に操縦パイロットは必須である。燃料のジェット燃料は乗客の数による差は大したことはないだろう。離陸直前に乗客の半分が埋まるようなことがあればその料金はすべて利益となることだろう。格安の運賃以上に海外ツアーのパック料金はなぜこんなに安いのだろうか、と首をかしげたくなるようなものがいくらでもある。早くから乗客を募っておけば1人当たりの航空運賃などいくらでも安くできる、のがその秘密なのだろう。
 市場は自由競争だから責めは経営が負わないといけないのだろうが、格安の航空運賃の一番の犠牲者はJALであり、全日空なのかもしれない。英国ヴァージン航空や、中国の春秋航空などLCCが続出しているのに対抗していかなければならないのだから、倒産してしまうのも無理からぬところがある。時代の流れを読み間違った経営サイドの責めは大きい、というべきだろう。

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