鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

政権の実権を握っているのは霞が関官僚と喝破した「日本国の正体」

2009-12-29 | Weblog
 知人のK氏の勧めで、長谷川幸洋著「日本国の正体」を読んだ。21年山本七平賞を受賞したとのことだが、筆者は中日新聞の論説委員を務める現役の記者で、霞が関の内幕をあけすけに書いた力作で、中川昭一財務相の失脚、エコノミスト、高橋洋一の窃盗事件、小沢一郎幹事長の秘書逮捕の3つの事件がつながっていることを指摘、霞が関官僚の実態を暴きだす。権力をもっているのが政治家ではなく、霞が関の官僚である、と断言し、マスコミもその走狗に過ぎない、と喝破する。霞が関官僚の実態をここまで露骨に書いた本はかつてない。久し振りに面白い本であった。
 著者は日本を動かしているのは政治家である、と長い間思い込んでいたことが間違いであったことを素直に打ち明ける。政治家を操り、マスコミを自ら描いたシナリオ通りに走らせるのが霞が関の官僚であり、黒子どころか、権力を動かしている、と断言する。冒頭に中川昭一財務相の朦朧会見、エコノミスト、高橋洋一の窃盗事件、小沢一郎公設秘書逮捕の3つの事件がいずれも霞が関官僚が仕組んだことである、とも言ってのける。
 霞が関官僚は自らの王国を築くことしか考えておらず、増税して予算を増やし、同僚たちを天下り官僚として多くの独立法人などに送り込んでいくことしか考えていない人種だ、と切り捨てる。自らの経験をもとに官僚たちがいかに記者を垂らしこんで思うように記事を書かせているか、を暴きだす。政治家も記者も官僚たちの道具にしか過ぎない、とまで言ってのける。官僚になる前は日本をよくしよう、と思っているが、いざ官僚になると自分たちの王国を築くことしか考えなくなる、悲しき習性をもった人種である、とまでいう。
 だから、霞が関官僚にとって無駄な経費を削ってスリム化し、減税するというのは絶対に受け入れられない理論で、常に増税して、自分たちの利権を広げていくことしか念頭にない。彼らにとって、行政改革なんていう言葉はタブーである、という理屈はよく理解できた。
 いままで霞が関官僚の実態を政権の黒子的存在である、と認識していたのが見事に打ち破られた。政策を作り、その実現を図っているのは事実、霞が関官僚であることがこの本を読んでよく理解できた。事実はその通りなのであろう。
 ただ、そうはいっても新聞、テレビを見ているといかにも総理大臣はじめ大臣、国会議員など政治家が政治を行っているような報道がされているが、実は黒子である霞が関官僚が裏で糸を引いているのだ、ということで、国会や各種の委員会、諮問会議の類はみんな官僚主導のもとに描かれた茶番劇である、というのだ。
 確かに筆者の言う通りなのかもしれない。霞が関官僚はざっと50万人いて、国会議員はたかだか750人程度、新聞・テレビの記者はせいぜい数千人しかおらず、数の上では圧倒的に霞が関官僚の方が多い。それに霞が関官僚といっても個々の人格があるわけではなく、組織として自らの存立を守るべく活動するのは組織として当然のことだろう。
 翻って、民間企業だって、社長が指揮をとっているように見えて、実は事務局が原案を作成してプランを練っているのが実態で、社長は単なるお飾りのケースが多い。日本の大企業の場合、時にそうである。筆者も認めているが、民間の株主総会が国会とよく似ているのはすべてお膳立てのうえでことである。
 それと、この本が書かれたのは今年前半で、まだ自公政権時代で、その後政権交代が行われ、多少は雰囲気も変わってきている。ここはぜひ、民主党政権となって、官僚主導から政治主導となったいま、それがどの程度実現されているのか、筆者の目で見て、同じ視点から切ってもらいたいものだ。
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