鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

またぞろ失望させられた芥川賞作品「ポトスライムの舟」

2009-02-12 | Weblog
 文芸春秋3月号に恒例の第140回芥川賞、津村記喜久子の「ポトスライムの舟」が掲載されているので、読んだが、今回も失望させられた。毎回、芥川賞作品には失望させられることが多いので、またk、という感じで、錚々たる作家が選考委員に入っているはずなのに主宰元の文芸春秋社の意向に沿った選考ばかりするのだろうか。今回も派遣労働者を主人公としたこれといった内容のものでもなかった。
 「ポトスライムの舟」は化粧品会社の工場で働く契約社員で29歳独身の長瀬由紀子が休憩時間に壁に貼ってあるNGO団体の主催する世界一周クルージング参加者募集のポスターに見とれているところから始まる。料金が163万円と長瀬の1年間の収入とはぼ同じであることがあとでわかるのがこの小説の落ちとなっている。長瀬はクルージングに行こう、と思いお金を貯めよう、と思いだす。
 自宅でポトスライムの鉢を育てながら、友人のそよ乃や子連れのりつ子との交流を淡々と綴って、そのうちにりつ子と同居するようになり、その子恵那との触れ合っているうちに風邪を引いてしまい、最後にはクルーズングを諦めるようなところで終わる。独身ワーキングウーマンのなんということない日常を描いた小説で、ただ興味がるのがいま流行りの派遣労働者であることぐらいだろうか。主人公の表記が2回目からナガセとカタカナ表記に変わっていることも親しみを増すためにそうしたのだろうが、あまり褒められたことではない。
 選考委員の評を見てもそれほど強く推している作家はそれほどいない感じだったが、マーケッティング戦略上、派遣労働者を扱っているからこの作品に受賞が決まったとしか考えられない。いつもながらのことである。
 著者の津村記久子はこれまで太宰治賞や野間文芸新人賞を受賞している30歳の新人で、おそらく等身大の主人公を登場させ、ほとんどの叙述は自己の体験から描いているのだろう。主人公の生き方なり、考えにあまり共感できるような側面もなかったし、会社なり、仕事の状況から社会の現状が鋭くえぐりとられているような面も感じとれなかった。
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