鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

間近で加山雄三の魅力をたっぷりと感じることができた

2010-04-02 | Weblog
 1日も前日に引き続き東京・初台の東京オペラシティコンサートホールでの「題名のない音楽会」の公開番組収録に行った。司会の佐渡裕の忙しいスケジュールに合わせての2日連続公演であるが、この日はゲストに加山雄三が出演するとあって、同世代と見られるおじさんおばさん族がどっとおしかけ、いつもより混んでいた。申し込み段階ではだれが出演するかわからないが、当選してチケットが送られてきた段階でゲスト名が明記されていて、ぜひとも行こう、ということになったものと見られる。
 前半は今年でデビュー10年を迎える尺八の藤原道三と三味線の上妻宏光をゲストに「音色のうま味~日本音楽の美学」と題して日本の伝統音楽の真髄をたっぷりと聴かせてくれた。まず藤原道三の「鶴の巣籠」、上妻宏光の「津軽よされ節」が演奏され、伝統音楽の良さを堪能させてくれた。続いて藤原道三作曲の「華」が演奏され、非凡な才能を見せ、さらに現代音楽との調和も図っているとして洋装で現れた上妻宏光がピアノ、パーカッション、ベースとコラボレーションして「スペイン」を、これも洋装の藤原道三が「リベルタンゴ」を演奏し、最後に今度は上妻宏光作曲の「華」を演奏した。古典楽器である尺八と三味線が現代音楽ともマッチすることをアピールしてくれた。
 後半は「出航!50周年 加山雄三」とお待ちかねの加山雄三の登場で、テレビで見る通りのさわやかな雰囲気で両手を掲げて会場の声援に応え、いきなりピアノの前に座り、弾き語りで「海、その愛」を熱唱した。生で見るのは初めてだが、格好いいとの印象とは違ってややはにかみ気味に佐渡裕とエールを交わし、応接セットに腰を落ち着けた。司会の2人が盛んに持ち上げるのに照れて、「持てませんよ」とか、「ファッションも自分で買ったことはないですよ」と遠慮勝ちに話し、控えめに応対しているのが意外だった。
 そこで、もう一人のゲストとして高校の後輩の千住明が登場し、高校時代に加山雄三を招き講演会を開き、圧倒され、ファンとなった経緯を話していくうちに打ち解けてきて、「旅人よ」を歌ったあと、話が作曲のことに及び、小さい時からピアノを習っていたこととか、高校時代から累計で508曲もの曲を作曲したことを打ち明け、即興でその腕前を披露した。父親の上原謙に12年かけて作曲し、プレゼントした曲まで演奏し、隠れた才能の一端を見せてくれた。
 もちろん、一流のピアニストに比べればあくまでも素人の芸であるかもしれないが、数々の曲を自分で作曲し、ヒット曲を出している背景にはこうした伏線があったのだ、とよく理解できた。父親が楽器を奏でていたこともあって、小さい時からクラシックのレコードをよく聴いていたことが今日の加山雄三をつくっていることがよくわかった。学生時代に音楽家の小島正雄に「音楽を職業とするな」と言われて「なずか」と尋ね、「「職業とすると愛情けがなくなるから」と言われ、好きな時に好きなように音楽と接するようにしていることも大きく預かっているようだ。350万枚売れたという「君といつまでも」はわずか1時間半で作曲した、というから才能もあったのだろう。
 こうした身近に思えるエピソードを聞いたあとに千住明が「加山さんの英語の歌は世界一だ」と持ち上げ、弾き語りでベートーヴェンの「悲愴」からの「ブレイブ・ニュー・ワールド」を披露し、最大のヒット曲「君といつまでも」を歌った。「君といつまでも」のせりふのところを即興で「会場のみなさんに捧げる」と歌い、万雷の拍手を浴びていた。いつもは薄っぺらな感じで聴いていたのが、いい歌だと思えてきて感動した。とても73歳とは思えない伸びのあり、声量も大きく見事な歌いっぷりで、いいな、と思わせた。鈍想愚感子はかねて男の歌手にはいい感じを持っていなかったが、やはり間近で見ると違うし、そこへ至る道を聞くとなるほどと思えてきて、すっかりファンになってしまった。以前は随分年上だと思っていたのが、お互い60を過ぎると年齢的にも近くなってきたような感じがするのか、同世代だと思えてくる。角がとれてきたせいもあって、正直やはりここまで道を極めていることは評価すべきだろう、とも思った。
 最後に最新作の「ハーモニー」を歌ってくれた。その前に佐渡裕が「ゲームにも熱心と聞いてますが……」と振ると、すかさずドライブゲームの名前が次から次へと飛び出して、これまた加山雄三の意外な一面を見せてくれるおまけまでついた。結局、この日は登場してから1時間10分もの独演ショーとなり、下手な歌謡ショーより実のある内容で、帰りの足取りも軽やかだった。
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