prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「告白 コンフェッション」

2024年06月09日 | 映画
生田斗真とダブル主演がヤン・イクチュンという韓国人なのは原作もそうなのだろうかと思って読んでみたら、ふたりの主人公は共に浅井と石倉という日本人だった。
セリフは両国語ちゃんぽんで、どちらかだけ喋っていてもどういうわけか通じているのだが、不思議と不自然ではない。現にそういうことあるしね。

日本と韓国の間にある大きな背景としてのわだかまりをモチーフにしているきのかとも思ったが、基本的には死んだひとりの女をはさんだふたりの男というぎりぎりまでコンパクトにしたドラマ。
その割に背景の雪山やセットの作り込みなど手抜かりがない。
上映時間が短いのがありがたい。





「映画 からかい上手の高木さん」

2024年06月08日 | 映画
原作でブランクになっている、中学時代の高木さんに西片がからかわれている情景と、高木さんと西片が成長して結婚して子供もいるまでに至る間を創作するという方法論で脚色している。

原作では西片がからかい返そうとしては失敗する繰り返しで時間は止まっているのだが、映画化では母校で体育教師をしている西片のもとに高木さんが教育実習で帰ってくる三週間に期間をほぼ限定して、その間のドラマを構築する意図をはっきり持って作っている。

登校拒否している男子生徒に高木さんがなぜ拒否しているのか訊くと、同級生の女の子にコクられたからという。
この男子は絵が得意なのだが、いつも風景だけ描いて人物は描かない(対照的にコクった女子は合唱を指揮している)。
この情景を切り取る映画そのもののカメラは、対照的に島の周囲の風景を人物にだけピントを合わせ背景はボカして撮っている。
ずっと後で西片と高木さんが教室の外のベランダでふたりきりになるカットでもバックはボカしてある。それが教室に入ると、ふたりを長まわし主体で追っうバックは距離が近いせいもあってばちっとピントが合い、ふっと息が抜けるように切り返しのアップがはさまる。
ダメ押し的に中学時代の西片と高木さんの姿をとらえた短いカットでは逆にバックにピントが合って人物はボカしている。
気持ちを伝えるというのは一種の暴力だと登校拒否男子は言うのだが、このあたりの感情の機微を曖昧なままでやり過ごすでなくはっきりさせ過ぎてぶち壊すでなく、曖昧さと明快さをグラデーションで同居させたのを画にしてみせた。





「ザ・ビートルズ Let It Be」

2024年06月07日 | 映画
ビートルズが屋上で演奏を始めると英国紳士然とした男がパイプをくわえたままハシゴを上がってくるのが可笑しい。

彼に限らず屋上でビートルズを囲んでいるのがかなり年配の人たちで、路上から見上げている通行人も若者という感じではない。あちらの人は歳食って見えるということもあるにせよ。
スタジオで小さな女の子が飛びはねてまわっているのがナチュラルで可愛い。

当時でいうとかなりハプニング的な要素を取り込んだ作りなのではなかったかな。初めから狙ってたようには見えない。

撮影にアンソニー・リッチモンドの名前が見える。ニコラス・ローグ監督とのコンビで有名な人。






「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章」

2024年06月06日 | 映画
作中、いかにも凡庸な日本国首相がテレビで今までさんざんウソをついていたけれど今回は本当のことを言うと宣言して実際に本当のことを言ったら、ディレイ処理で生放送より少し遅らせて放送していたのが明かされるというあたり、実際にやってんじゃないかなと思った。
ディレイ放送というのを最初に知ったのは北京五輪(夏の方ね)のテロ対策でテロがあっても五秒なら五秒遅らせればその間にカメラを他の現場に切り替えてゴマかせるという対策をうっていたという話から。

世界を結んで第九を合唱する時に音がズレないように少し遅らせる処理というのもあったなと後で思い当たった。

キャラクターが多いから全員に目を配ってバランスをとるのに腐心していると思しい。

空中に浮かんでいる謎の物体の素性がわかるにつれて話も風呂敷を広げるのから畳む方に方向を転換する。

潜水服みたいな格好をしている異星人が撃たれると青い血を振り撒く。刺激を抑えるためか?





「マッドマックス フュリオサ」

2024年06月05日 | 映画
あれ?と思ったのは、マックスみたいな恰好をしている人が出てきた時。フュリオサがマックスと出会うのはこの後の「怒りのデスロード」ではなかったっけと思い、そういえばマックスはフューリー・ロードの初めの方ではイモータン・ジョーのところで囚われの身になっていたから、ここで曖昧にいなくなるのと辻褄は合っているのだなとやっとわかった。みたいも何も、マックスその人だ。
こっちもいい加減鈍いが、役者がトム・ハーディでも、もちろんメル・ギブソンでもないから混乱したわ。
というか、フュリオサの前日譚という予備知識はあったけれど、マックスが出てくるとは実は思わなかった(これまたよく考えてみると、マックスが出てなかったらマッドマックスじゃないわ)。
Jacob TomuriがThe Dogman / Mad Maxという役名で出ている。
世界観がもろに地続きというのは、これまでのシリーズの作り方と違う。

考えてみると、シリーズ第一作は当時のジャンル映画としてのポリスアクションにプラスアルファがあるという範囲の作りで、全面的に荒廃した世界観を構築するようになったのは二作目からだ。
世界観を作るというのも善し悪しで、シリーズの他のも見てないと通じないって面がどうしても出てくる。こっちみたいな面倒くさがりには必ずしもありがたくない。

クリス・ヘムズワースが情があるのかと思うと逆に非情に振り切る役。

画面がおそろしくクリアで、IMAXで見るとザラついた埃っぽさまでが解像度高く再現していた。

横長のサイズを活かしてぐぐっとアップに寄ったり引いたり、前後左右の方向を的確にカットを割って組み合わせる、というか振り付ける手際が明快で暴力描写とは裏腹にエレガントですらある。





「関心領域」

2024年06月04日 | 映画
いかになんでも見せなさすぎではないか。
ヘス一家が平和に暮らしている隣にアウシュビッツがあるという図すらほとんどわからなかった。
隠して音で暗示するにしても、ブレッソンくらいにはわかるようにできなかったか。
小さく見せて大きく暗示するのかと思っていたら、ラストシーン以外はそうはなっていないように思える。

どうも見方を間違えたかもしれない。まずヘス夫妻とその家族を見てから、その背後を感じるか読み取るかするのを、背後ばかりに神経がいって、その割に受け取れた分は少ない。
サンドラ・ヒューは「落下の解剖学」の主演なのだけれど、どうも影が薄い。





「海洋探検家クストーの遺産」

2024年06月03日 | 映画
クストーが当時二十代はじめのまったく無名の高等映画学院(IDHEC のちのLa Fémis )の学生ルイ・マルの協力を得て作った「沈黙の世界」でカンヌのパルムドールを獲得したのが1954年。

この時に乗ったカリプソ号がもともと機雷掃討艇(「ゴジラ-1.0」で神木隆之介たちがのってた、あれね)で、第二次大戦が終わって十年弱、おそらくお役御免で払い下げられたのだろう。

その後ともに名をなしたマルとクストーが対談する映像が出てくるが、マルはすでにクストーが映像作りに経験とセンスを見せていたと証言している。

晩年のクストーが海洋の汚染を身体でわかるようになり、心を痛め南極の開発をストップするよう働きかけ限定的ながら成果をあげた。

昔の「沈黙の世界」を見返して、サメを叩き殺している場面を自ら批判したりしている。




「ボブ・マーリー ONE LOVE」

2024年06月02日 | 映画
マーリーの仲間が映画「栄光への脱出(原題 exodus)」のサントラを買ってきて聞かせるエピソードがあるが、この映画の内容というのはイスラエル建国を寿ぐものなのだね。作り手たちもユダヤ人が主。
しかし現在のイスラエルがもともとこの地に住んでいたパレスチナ人たちを追い出すのみならず虐殺しているのを目の当たりにしている中、どうしてもアイロニカルに見えるのは否定できない。

なお、「栄光への脱出」はハリウッド・テンの一人として偽名で脚本を書かざるを得なかった時期のダルトン・トランボが、「スパルタカス」と共に実名を公表した映画でもある。

しかし分断した二大勢力を握手させるボブの実写がエンドタイトルの頭に来る意義は、実際に分断の極みみたいな世界に生きざるを得ない身としては、誰が善で誰が悪かと言う二分法が容易に逆転することがあるのを念頭に置けば腑に落ちる。

最初、予告編を見た時はドキュメンタリーかと思った。それくらいキングズリー・ベン=アディルは再現性が高いのを通り越してマーリーそのもの。年齢も現在37でマーリーが亡くなった36歳に偶然にせよ近い。
「あの夜、マイアミで」「バービー」といった出演作をたどると、意識においても近接しているのではないか。





2023年5月に読んだ本

2024年06月01日 | 
読んだ本の数:23
読んだページ数:6279
ナイス数:0

読了日:05月02日 著者:大和 和紀




読了日:05月02日 著者:大和 和紀




読了日:05月03日 著者:菊地 誠壱




読了日:05月03日 著者:ウディ・アレン




読了日:05月03日 著者:ちば てつや




読了日:05月04日 著者:新戸 雅章




読了日:05月04日 著者:山本 直樹




読了日:05月04日 著者:山本 直樹




読了日:05月10日 著者:中川 右介




読了日:05月10日 著者:岡野 八代




読了日:05月11日 著者:ブッツァーティ




読了日:05月14日 著者:中井 久夫




読了日:05月16日 著者:劉 慈欣






読了日:05月20日 著者:安部 公房




読了日:05月20日 著者:実相寺 昭雄




読了日:05月20日 著者:実相寺 昭雄




読了日:05月21日 著者:朝井 リョウ




読了日:05月22日 著者:荒木 飛呂彦,鬼窪 浩久




読了日:05月22日 著者:伊藤 理佐




読了日:05月24日 著者:諸橋 仁智



読了日:05月27日 著者:康 芳夫




読了日:05月31日 著者:水木 しげる