prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「映画 からかい上手の高木さん」

2024年06月08日 | 映画
原作でブランクになっている、中学時代の高木さんに西片がからかわれている情景と、高木さんと西片が成長して結婚して子供もいるまでに至る間を創作するという方法論で脚色している。

原作では西片がからかい返そうとしては失敗する繰り返しで時間は止まっているのだが、映画化では母校で体育教師をしている西片のもとに高木さんが教育実習で帰ってくる三週間に期間をほぼ限定して、その間のドラマを構築する意図をはっきり持って作っている。

登校拒否している男子生徒に高木さんがなぜ拒否しているのか訊くと、同級生の女の子にコクられたからという。
この男子は絵が得意なのだが、いつも風景だけ描いて人物は描かない(対照的にコクった女子は合唱を指揮している)。
この情景を切り取る映画そのもののカメラは、対照的に島の周囲の風景を人物にだけピントを合わせ背景はボカして撮っている。
ずっと後で西片と高木さんが教室の外のベランダでふたりきりになるカットでもバックはボカしてある。それが教室に入ると、ふたりを長まわし主体で追っうバックは距離が近いせいもあってばちっとピントが合い、ふっと息が抜けるように切り返しのアップがはさまる。
ダメ押し的に中学時代の西片と高木さんの姿をとらえた短いカットでは逆にバックにピントが合って人物はボカしている。
気持ちを伝えるというのは一種の暴力だと登校拒否男子は言うのだが、このあたりの感情の機微を曖昧なままでやり過ごすでなくはっきりさせ過ぎてぶち壊すでなく、曖昧さと明快さをグラデーションで同居させたのを画にしてみせた。