prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「クローサー」

2005年06月21日 | 映画
パトリック・マーバーの舞台劇を原作者自身が脚色。演出のマイク・ニコルズも、もともと舞台演出の経験が多い人。
だから、場面のつなぎ方が通常の映画とかなり違い、初めのうち飛躍の仕方が呑み込みにくく、台詞が猛烈に多いので、ちょっとうとうとした。
あと、舞台だと通して見せる一場を他の場とカットバックさせているようなつなぎ方が、あちこちにある。ただしそれとわかって見ると、演出に混乱はない。どころか、舞台映画双方を知った演出家でないとできない手際と思える。

エンドタイトルで名前のある役が四つだけ、この男二人女二人の、三人四人入り交じるのではなく、もっぱら一対一の息の長いやりとりで通している。
本当のことを言われると傷つき、嘘を言われると怒る、かといって何も話さずにいられない。
相手がライバルと寝たかどうかしつこく聞く一方で、寝る具体的な場はまったくなし。
純粋な対話がえんえんつ続く格好になる。

こういう男女の間でものすごくしつこく言葉で相手の意思を確かめようとする志向、スタミナというのは、あまり日本の風土には、少なくともドラマにはない世界と思える。あちらには、「バージニア・ウルフなんかこわくない」「ある結婚の風景」ほか、傑作がいくつもあるのだが。
(☆☆☆★★)



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