チェ・ミンシク扮する税関の役人がつかまえた密輸犯に俺の親戚はおまえの上役だと言われるとすぐ大目に見てしまったり、ヤクザの仲間(ヤクザそのものではないが)に転向してから検事に会うのに十親等以上離れているのに図々しく押しかけて親戚面してまとわりついてしまうあたりの血縁がやたらものをいうあたり、韓国らしいなと思わせる。
映画に描かれる前提として政府が大々的に乗り出して不良狩りをするだけでなく、強制的に思想改造していたというのが怖い。ハ・ジョンウ扮するヤクザがその対象になっていたというあたり、デモのどさくさに紛れて暗殺が謀られるあたりも含めて、歴史的な(それもごく近い時代)広がりを持っている。このあたりに踏み込みがいかにも彼我の差がつくところ。
検事のやり口といい、ヤクザよりもっと悪い奴らが日本で言う政治的巨悪といったもったいぶった、悪く言えば腰が引けたイメージよりもっと具体的な名前と姿を持った人間の形として表されている。
トイレで小用を足している検事の肩をミンシクがなれなれしく揉もうとする(このあたりのいかにもジャマという感じがおかしい)と、検事が振り向いて金的をぽんと犬でも蹴るみたいに蹴るあたりの見下し感などひどいもの。
チェ・ミンシクは次にどんな映画でどんな芝居を見せてくれるか楽しみな役者の一人なのだけれど、次作の秀吉の朝鮮出兵を打ち破った水軍の将・李舜臣というのはどんなものだろう。反日的な内容にならないわけがないし、国民的英雄役というのはちょっと見当がつかない。
ここでは「オールド・ボーイ」「クライング・フィスト」あたりでボクサーとして絞りぬいた身体からは想像できないでぶでぶな身体に改造。大物と一緒だとなれなれしくして虎の威を借る狐そのまんまに威張りちらし、キレた相手にシメられると土下差して命乞いをするあたり、ちょっと「仁義なき戦い 代理戦争」の加藤武扮する打本親分あたりを思わせるほとんど笑ってしまう域に入っている。
(☆☆☆★★)