レバノンで拉致された外交官を救出する実話の内幕を描くわけだけれど、人名が仮名になっているのがラストで明かされるように、具体的な経緯はほぼ作っているのでしょうね。何しろどこの誰に接触してどう交渉したかは実際の当事者でも部分的にしか知らない性格のオペレーションであり、対外的にも身代金を払ったとは口が裂けても言えない建前なのだから。
孤立無援になった外交官ハ・ジョンウがバディを組むのがチョ・ジフンのタクシー運転手というのも先行したヒット作に倣ったのではないか。
ロケ効果が絶大で、場所が絶えず移動するスケール感やバディ同志のやりとりのユーモアのセンス、関係性がくるりくるりと変転する展開など、実際がどうだったのかわからないのを幸いに、はっきりエンタメに振り切っている。
全斗煥独裁下の話で同時に公開されている「ソウルの春」ともだぶり、外交部と安全保安部とでは大統領との距離で力関係が決まっているらしいことが示唆される。
外交官もタクシー運転手もアメリカ志向なのが興味深い。同じ外交官でもアメリカはじめG7はソウル大卒のエリート向け、その他はその他の地域向けと決まっているらしい。